特徴ある民芸箪笥の旧産地




仙台箪笥の特徴は、大きくて豪華な錠前金具にあり、鳳凰、唐獅子、飛龍、菊唐草などの文様を線彫りあるいは打出しにして装飾してある。箪笥の素材はケヤキや栗を用い、木地呂塗りに仕上げたものが多く、総じて泥臭く野暮なところが民芸的な魅力になっている。第一次大戦後、捕虜として仙台に収容されていたドイツ兵が帰国の土産に仙台箪笥を持ち帰ったことから、ヨーロッパでもアンティーク家具として人気が高い。




庄内箪笥 (山形県酒田市及び鶴岡市)

庄内地方では酒田と鶴岡で優れた箪笥が作られていた。
北前船の寄港地、酒田は船箪笥の三大産地の一つとして有名で、その他にもケヤキを用いて拭き漆を塗った帳場箪笥や衣裳箪笥に立派なものがある。
引手は角手で、錠前などの金具は、分厚い鉄板に抽象的な図柄を平打ちしたのが特徴。
一方、鶴岡地区では衣裳箪笥が多く作られ、主に桐や杉を用いて黒塗りに仕上げ(桐の素木のものもある)、松竹梅や鶴亀などを浮き出させた金具を沢山付けて飾ったものが特徴。金具は、漆にベンガラを混ぜて焼き付けてあるので赤みを帯びる。




米沢箪笥 (山形県米沢市)

丸くて大きな錠前金具が米沢箪笥の特徴で、直径は引出しの三分の二以上を占める大型なもの。その図柄には、揚羽蝶や桜、家紋などがあしらわれている。
こうした衣裳箪笥のほかにも、側を框組にし、下部に大きな車輪を取り付けた重厚な車箪笥や車長持に特筆すべきものがある。




二本松箪笥 (福島県二本松市)

二つ重ねの衣裳箪笥(重ね箪笥)が有名。
引手は大ぶりで大きな当り鋲が引手の上下に付いたものが多い。錠前には、鍵穴を隠すために金又は銀色の打出の小槌や亀などの金具をワンポイントに付けたものや、錠を上げ下ろしするための手掛けが二つ付いたものが多く、簡単に鍵が開けられないよう工夫を凝らしているところに特色がある。




佐渡箪笥 (新潟県佐渡郡)

佐渡島には、小木と八幡の二つに箪笥の産地があり、北前船の寄港地として知られる小木は、船箪笥の三大産地として古くから栄え、その中でも木工と金工の優れた技術は秀でていた。こうした高度な船箪笥の技術を受けて、明治から大正時代にかけて職人の技を競うように豪華な衣裳箪笥が作られた。その特徴は、前板にケヤキの最高の玉杢を使い、杢目が美しく引き立つよう拭き漆を塗って磨き上げ、大きな雲形模様の錠前金具が付いている。
一方、八幡地区の衣裳箪笥は、小木のものに比べ焦げ茶色に濃く塗られ、目出度い図柄を彫り抜いた直線的な金具が箪笥前面を覆い尽くさんばかり取り付けられているのが特徴。




三国箪笥 (福井県坂井郡三国町)

越前三国(みくに)は、古くから北前船の寄港地として栄え、酒田、小木とともに船箪笥の三大産地の一つに数えられる。船箪笥の他にも、衣裳箪笥の下部に車を取り付け、赤みの強い木地呂塗りに仕上げた車箪笥などに個性的なものがある。
三国製の金具は、開き戸に取付けてある蝶番が他産地のものに比べ細長く、その先端は雲形に加飾されていて、蝶番の数も多く付いているのが特徴と言える。







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