戒 名 の こ と


  「戒名」というと、お葬式の時につけてもらう
 死者の名前、というイメージが一般的なようですが、
 はたしてそうなのでしょうか?

 本当は、戒名、という呼び方があらわしているように、
 仏戒、すなわち、仏教を信じるものとして守らなくては
 ならない戒法をうけ、仏教徒となったあかしの名前が
 戒名なのです。
  戒についての詳しい説明は、またの機会にゆずり
 ますが、不殺生(ふせっしょう)、不偸盗(ふちゅうとう)、
 不邪淫(ふじゃいん)、等、お耳にされたことがあると
 思います。

  宗派により違いはありますが、戒名の終わりに、
 信士・信女などがついています。
  信士とは、在家の仏教徒である男性をいい、信女とは
 おなじく、女性をさします。
  また、居士とは、昔インドにおいては、官位はもたないが
 富裕な男性をさして、居士といいました。
 大姉は、居士号の女性版ですが、やはり一定の
 社会的評価をうける女性を、大姉と称していたようです。
  戒名の上の方に、○○院、とある、いわゆる院号は、
 昔、天皇が譲位の後、住まわれた建物を「院」と呼び、
 またお寺に隠棲された上皇を○○院と称せられたゆえん
 から、戒名にもつかわれるようになりました。
  ちなみに、院殿号とは、武士の世になり、天皇家と
 同等では申し訳ないからと、殿の字をつけ加えたのが、
 院殿号のはじまりとされています。
 現在では、院殿号は、一般的に院号の上位とされて
 いますから、おもしろいものです。

  以上が、戒名のおおざっぱな意味あいですが、
 このような戒名の意義をふまえ、亡くなったあとで
 さぁ戒名をどうしよう、と考えるのではなく、生きている
 うちから戒名にふさわしい生き方を考え、実践してゆく
 ことが、大切なことです。

  また、戒名というものは、戒法を授けてもらって、
 いただくものですから、あくまでも、戒名を授ける
 資格のあるものは、菩提寺の住職、ということに
 なります。いいかえれば、そのお寺の住職に戒名を
 さずけてもらう、ということは、その住職を仏法の
 師として帰依する、という意味になります。
 したがって、たとえば、故郷から遠方に出られた方が
 亡くなられたとした場合、あわてて近くのお寺にたのんで
 戒名をつけてもらい、お葬式をすませたとします。
 そのあとで、故郷のお寺に、納骨やあとの法要を
 頼まれた時に、もし、故郷のお寺さんが
 「そんな筋違いのはなしはない」と断られても致し方の
 ないこととなります。
 故郷のお寺からみた場合、そのお宅は、戒名をつけて
 もらったお寺を師匠寺として帰依した、つまり、先方の
 お寺の檀家になったと解釈をせざるを得なくなりますし、
 先方のお寺でも、そのように受け取られているでしょう。
 そのため、結果として、二つのお寺に二股の檀家、という
 ことになりますから、故郷のお寺さんが、こちらでお世話させて
 いただくのなら、先方のお寺との関係をきちんと清算してから
 でないと、ということになるのです。

 実際のはなし、まったく宗派の違う戒名をつけて
 こられる場合もありますが、あとあと、問題の
 おきないよう、何かあったときだけお寺に行くのではなく、
 普段から、菩提寺との意志の疎通はたやさないよう、
 お勧めします。