「明るく、親切に」を理念として地域精神科医療を提供して参ります

府中市立湯が丘病院

コラム  不安と神経症性障害

神経性障害は不安を要因とする精神疾患

 

 インターネットなどのIT革命によって、さまざま情報が簡単に手にはいるようになり、社会生活は一見便利になったように見えます。しかし、あふれる情報の洪水の中で、情報に振り回され、不安をかき立てられる人たちが増えているのも事実です。

 不安はこれから起こることに対して、心の準備をするために必要なことですが、不安が高いままだと身体的あるいは精神的な症状を呈するようになります。このような不安を要因とする精神疾患が「神経症性障害」で、うつ病と同様に発症率の高い疾患です。

 神経症性障害の中で、比較的若い女性に多い「パニック障害」について理解していただくために架空の患者さんに登場していただき、具体的な症状と治療の経過をたどっていきたいと思います。

 

<症例>

 

 二十三歳の独身女性、母との二人暮らしである。大学を卒業後、地元の会社へ事務職として就職した。無我夢中で仕事を覚え、失敗しないように気を使いながら何とか仕事を続けていた。

 入社半年ぐらいから時々、目まいや吐き気を感じるようになった。その後、動悸(どうき)を感じるようになったが、仕事が忙しいため放置していた。

 ある日、仕事から帰ってしばらくすると動悸が激しくなり、呼吸も荒くなって、死ぬのではないかという不安が襲ってきた。母が救急車を呼び、総合病院へ救急受診をし、心電図などの検査をしたが異常はなかった。その後も救急受診が続いたため、総合病院の内科医から紹介されて精神科を受診した。

 突然激しい不安に襲われ、動悸が激しくなったり、息が苦しくなったりする発作を「パニック発作」といい、このような発作が続く病気であること、心臓の病気でないことなどを説明した。薬を使って不安をコントロールすることにより発作は軽減するので通院治療を勧めた。

 薬物療法により一か月後には発作の回数が減り、発作は起こっても薬を飲むことで、救急受診はする必要がなくなった。その後は診察時に仕事上の不安や問題を話し、対応の仕方を相談することにより薬の量も少なくなっていった。六か月後には発作は起こらなくなり、不安時に抗不安薬を服薬するだけで不安のコントロルが可能になり薬の継続的な服用も必要なくなった

 しかし、薬をやめてしまうのは不安があると話し、現在も通院を継続している。

 

気がついたら早めにご相談を

 

 パニック障害は、単に気のせいで起こるのではなく、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れて起こると考えられています。しかし、適切な治療を行えば、治る病気でもあります。

 現代は物があふれ、情報があふれ、幸福・健康・愛情を求めるあまり、自分で自分の不安をかき立ててしまっているところがあります。

 もし、この病気に気付いたら、早めに精神科医に相談してください。精神科医は外科医のように手術で治すことはできませんし、内科医のように豊富な薬物知識で治療することもできません。しかし、患者さんの傍らで、患者さんをじっと見守る安心できる存在にはなると思います。

 患者さん自身が自分の生き方、考え方のゆがみに気付き、本来の自分に戻っていく様子を見ていると、人間が持っている素晴らしい力に驚かされます。