豊松閑話(その1)

分団専務理事(事務局長)

 豊松という土地にログハウスを建て初めてどれだけの時間が経過しただろうか。「10年一昔」と言うから、一昔以上前、未だ県教委に籍があった頃訪れていた豊松とは、地勢的に変わっている。役場前の道路は片側一車線の素晴らしい道となり、明るくなっていた。村の中心部には「豊松プラザ」なる施設と商店が軒を同じくしていたが、旧来の商店街(?)はその繁りを失っているように感じた。小学校の近隣には特別養護老人ホームなる施設ができてはいたが、小学校も中学校も子どもの数は減ってきている。国の指導で広域合併し「神石高原町」と行政呼称は変わったが、過疎化に歯止めをかけるのは難しかろう。そんな地域である豊松の野呂川地区に、「NPO法人日本宇宙少年団備後ローズスター分団」の研修施設としてのログハウスの建築を始めた。床面積が7m×6m位の規模のハウスであるが、分団リーダーという素人集団の作業である。加えて土日の休業日大工、なかなか進まない。作業は頭で考えるほど、単純でも簡単でもなかった。一日の作業工程は考えて始めるが、段取りをつけるのに時間がかかる。ログハウスという物はもともとアバウトな作りの物であるが、始めると「アバウト」という訳にもいかず、なけなしの知識を駆使しての作業、時間ばかりが経過する。それでも日ごろデスクワークが殆どで、肉体労働なんて関係なかったリーダー達。作業の進度はさておいて、働く事の楽しさと物作りの妙味にはまっているのが実態である。作業途中の休憩時間や昼食時間も、休むのがもったいなくてそこそこに切り上げ作業にかかっている。自然の恵みも豊かで、随分と味わわせてもらった。春先の“柿の葉の新芽”を摘んで、手間隙かけて作った“新茶”は美味しく頂いた。孟宗竹や真竹の筍も昼食時や家庭で味わった。最高に美味しかったのは“桑の実”。豊松の住人は“くわいちご”と呼んでいた。“どどめ”とも言う。昔の子ども達は、口の中を真紫にしながら、おやつ代わりに食べたものである。現代の子どもはどうであろうか。4月の活動で、山菜の天ぷらやおひたしを「美味しい」と言って食べた分団員達。来春が楽しみである。「美味い!」と言って食べてくれることだろう。敷地内にある桑の木は古木であった。たわわに熟れている桑の実は、周囲の木と比べても非常に大きい実であった。濃い紫色に完熟した実は糖度が高く、美味しかった。生食もさることながら、ジャムは殊のほか美味だった。作られた方は、「夜中2時3時までかかった」と言われたが、労に報いる美味しさだった。野の花に囲まれ、自然を味わいながらの建築作業が続いている。

 今は外部はほぼ完成し、内装と水周りにかかっている。柿やきんもくせいの木立に囲まれたログハウスは趣がある。レンガ色の屋根も美しい。建て始めた頃が懐かしく思い出される。訳のわからぬままに、指示されるとおりにログ材を担ぎ上げ、かけやで打ち込み組んで行った。初めは面白かったが、疲労と高さで段々苦痛になっていったあの時。でも、組み上がったときの達成感。創作の醍醐味を肌で感じたひと時であった。勾配45度の屋根は足場を組むのも一苦労だった。屋根材の合板を打ち付けるのが薄暮を過ぎ、釘打ち機で打った釘から火花も出た。今は日の入りも遅くなり、かなり遅い時間まで作業が出来るが、5月初旬は日暮れも早かった。それでも「塵も積もれば山となる」の諺通り、土日の大工をコツコツと重ねてきた結果が出ている。おおかた3ヶ月になろうとしているが、間違いなく建物は出来上がってきた。先は読めてきたが、8月中に「落成式」が迎えられるだろうか。十分な予算計画がないままに取り掛かった研修施設(ログハウス)建築計画、これからは費用の捻出が一仕事となる。幸いにして非営利活動法人(NPO)の認証が下りたが、篤志家が現れるだろうか。期待するところである。

 リーダーはズブの素人集団。それぞれが自分に出来る持ち場をこなしてきた。「縁の下の力持ち」というが、見えないところで頑張る姿が大切なのである。私たちリーダーは、この経験を十二分に分団活動にフィードバックしたいものである。また、陰に陽に惜しみない協力をしてくださった方々にも感謝しなければならない。物心両面で多大な協力をしてくださった方々がお出でになるから、今の状況まで漕ぎ着けられたのであることを忘れてはならない。まだしばらくは休日大工が続く。しかし、完成の暁には喜々とした分団員・保護者・リーダー、あるいは建築に係わってくださった多くの方々の顔が見られることであろう。

 釘を打つはずが手を打ったしまったリーダー。疲れのために思わず手が滑り、指を詰めたリーダー。安全ベルトは着けていたが、足場で滑りヒヤッした思い。僅かの違いで大事故にならなかったあの日。思えば多くの“ヒヤリ”があった。今日までは無事だった。今後も気を引き締めて、事故無く安全に完成へ向けて頑張っていこう。あと少し、もう一月位かも知れないから。