進水式寸描

中村事務局長

 シャンパンのビンが割れ、くす玉が開く。伝書鳩が飛び出し、紙テープがまるで花の雄蕊のように広がり風に靡きながら、大きな鉄の構造物が動き始めた。大きな軋み音はあるが滑らかに、滑り行く。形ばかりで繋がっていたロープを、斧で切ることにより始まる進水式。でも・・・・・・あの割れたシャンパンのビンのかけらは・・・・・・、船台上に飛び散ったが誰か怪我をしないのか・・・、と変に気になった。

 8時に始まった進水式。それまでは製造番号で呼ばれていた鉄の巨大な構造物に、初めて名前が付けられた。もっとも、船体にはすでに船名は刻み込まれていたが、人の目には触れないように大きな幕で隠されていた。進水式は、実は船の命名式であり船台を滑り下りるのはその後なのである。

 遠い記憶を辿ると、確かに私が小学校の高学年の頃、当時の呉造船所(かつて戦艦大和を建造した造船所)で船台を滑り下りる進水式を見た記憶がフィードバックしてきた。あの頃は、船首に繋がれた細いロープ一本で船は繋がれており、ロープを切ることで船は動き始めると信じていた、・・・・・・そんな記憶が。

 常石造船所の方の説明によると、今回の進水式の船の概要は次の通り。

船種 撒積貨物船
船籍 パナマ
船名 MULBERRY WILTON
船体 全長×船幅×高さ  217.00m × 32.36m × 19.30m
主機 N.A.NB&W  7s50MC-C
航海速力 約14.5ノット
馬力 9350Kw
総トン数 40100MT
特徴 1.常石造船所開発のTESSシリーズ船。
2.5つの船倉を持ち、各船倉には油圧式フォールでリング型ハッチカバーを装備。
3.パナマ運河が通過できる最大級の船。

とのことであった。 式そのものは実に単調。定められた流れがあるようだ。国歌を流し国旗の掲揚。日本国とフランス国。ああ、船主はフランス人なのか・・・、と。で、船籍はパナマ、よくあることらしい。式で船台を滑り下りる船体は、未だ海上に浮かぶ函物状態とか。甲板上の船橋や内部のエンジン類はこれから海上で組み立てられる。船台を効率的に使うための方法とのことだった。そういえば隣の建物では次の船のブロックが作られつつあった。船首の部分が地上に置かれていたが、より大きく見えた。船って本当に大きな物だ。こんな鉄の固りが・・・海に浮かぶ。理論上は分かるが、実際はやはり・・・・・・不思議。私たちの周りには“不思議”がいっぱいある。そのいっぱいある“不思議”を一つずつ紐解いていく活動も・・・、また宇宙少年団なのだろう。そう感じた進水式のひとコマであった。

Rhyu