種子島紀行

中村事務局長

 種子島は九州の南にある島であり、西方に位置する屋久島とセットで紹介される。歴史的にはかなり古いようだが、私たちの記憶では「鉄砲伝来」「甘藷の初栽培」として、小・中学校での学びで知ったように思う。西は東シナ海、東は太平洋に囲まれる離島であるところは屋久島と同じであるが、2000mに近い山容の屋久島は雄々しく、ゴツゴツとした男性的な趣があるが、種子島は最高峰が282mであり、どちらかといえばなだらかな女性的な趣を見せる。“ほぼ”という言葉を頭につければ南北に長く東西が短い細長い島、という表現が当てはまる。

 南種子町に茎永という地域がある。この地区では、いたるところで一見柔らかそうな崖を見ることが出来る。「茎永層群(Kukinaga group)」といい、種子島の非褶曲新第三紀海成層である。貝や魚の化石を含み海底で堆積していることから、(地球の年齢でいうところの)昔は種子島は海の底、したがって大陸に繋がっていた時代の証拠でもあろう。種子島ではこの他に「熊毛層群」・「上中層群」と呼ばれる堆積層があるが、共に海成層であることなどから、過去には大陸の外れで海底であったことが伺える。長〜い時を経て陸地となり、さらに浸食を受け、海水が流入して今の地形(離島)となったと。堆積層が侵食された結果、なだらかな地形となり女性的な柔らかさと優しさを醸し出しているのかも知れない。

 人口は、総数凡そ4万人とか。その数が全島に均等に居るのではなく特定の地域に集中しているから、島内を移動していても島民に出会うことが少なかった。島のほぼ北半分が西之表市、残りの北半分が中種子町、南半分が南種子町。ロケットの打ち上げの際は、全島民の1/8に当たる5千人位の関係者が集まり、島の重量が重くなるらしい。路上では犬も猫も珍しかったし、牛達もちょっとばかり生きていた。セミを入れれば人口が(セミは人口とは言いません)増えるのだろうが。西之表市から島間港まで、国道58号線がある。数字二桁の国道だから、そんなには新しくない。宇宙センターの誘致にかかる施設のように思えるが、ロケットは名古屋から搬送されるが人間は積んで来られなかったようだ。もっとも、ロケットも打ち上げられれば宇宙の藻屑だが。

 僅かしか接触できなかった島の人々。私たちが関わることのできた島の人々は皆優しかった。素朴で、純情であった(一部、飲みに出た人は別だよ!)。宿とかセンターとか、一応公共の施設の人々さえ親切で優しかった。彼らの生き方や考え方、人との関わりかたなど、学んで帰って来てくれたかしら?(睡眠不足で全〜部忘れたって言うのは誰?)。路傍の子どもたち、お年寄り。誰もがみんな親切だった(言葉がうまく伝わらなかったか、言葉が荒くて恐れたか?)。農作業の傍ら、木陰でのんびり休憩している風景、昔は私たちの地方にもあったよな〜あ。忘れ去ってしまったのか、無くしてしまったのか。忘れたのなら思い出せばいい、でも無くしたものは帰ってこない。パソコンの“削除”のように。

 過去には「養蚕」もあったという。だから不浄の女性は踊れない「蚕舞」という伝統文化があった。“(女性は生理があるから)不浄”の考え方は、遠い過去から現代まで、全国にあったようだ(もっとも、この考え方は日本に限らず世界的なものなのだが)。(そう言われれば“桑の木”が野生化していたなあ。)島内を走っていて感じたことなのだが、自家消費を除いて、栽培されている作物の種類は少なかった。早場米の稲。最近ブームの紫芋。お茶。それにさとうきび。さとうきびと紫芋の作付面積は広かった。この島のさとうきびは整然と植えられている。株が直立していた。行儀よく整列している子ども達のように。沖縄のさとうきび畑の様子とはまるで違う。随分前のことになるが、返還後の沖縄を訪れた時に島の人に聞いた話、「農林大臣さんが島に来られて視察なさった。車の窓から道沿いの景色を見られて『沖縄では何で草ばかり植えているのか、道路の辺は草を刈らないのか』と言われた。さとうきびを知らなんだらしい」と。沖縄のさとうきび畑は、さとうきびが気ままに伸びている。河川敷の葦やよしのように。見れば確かに伸び放題の雑草のような育ちをしている。そのことを思い出したら、種子島のさとうきびは行儀がよかった。

 海の青さと空の青さ。いずれも、そこに住んでいる人々の気性を表しているようだ。瀬戸内、汚れた海と浮かぶゴミ。霞んだ空に見えない星空。あ〜あ、まるで私たち。島の人間は真っ白な砂浜の黒い汚れが「貴重な鉄」であることに気づいた。そこから鉄作りを発明したようだ。その歴史があったからこそ、「種子島」が生まれた。軽くて切れ味の良い刃物が打たれた。自然は生きている。人間を抱えて生きている。人間が自然を生かしているのではないことを、ここ種子島で強く感じた。自然と共存できる人々の優しさが、厳しい自然だからこそ、自然が生かしてくれているのかも知れない。島人の心と自然が荒れないように・・・・・・、と思いつつ、老体に鞭打って頑張っているフェリーで島を後にした。

Rhyu