October,2000 (2)

ボルドー
オフ・ヴィンテージ特集

Ch. Latour '65
Ch. Latour '72
Ch. Lafite-Roothschild '74
Ch. Mouton Rothschild '57
Ch. Mouton Rothschild '67
Ch. Mouton Rothschild '91
Ch. Pichon Longueville Comtesse de Lalande '65
Ch. Pichon Longueville Comtesse de Lalande '79
Ch. Leoville Las Cases '74
Ch.Ducru-Beaucaillou '57
Ch.Ducru-Beaucaillou '75
Ch. Talbot '65
Ch. Margaux '69
Ch. Margaux '74
Ch. Palmer '67
Ch. Palmer '74
Ch. Palmer '88
Ch.Brane-Cantenac '73
Ch. Haut-Brion '67
Ch. La Mission Haut Brion '72
Ch. l'Eglise-Clinet '93

(特にお気に入りのワインには マークを付けています)


Bordeaux-Medoc

Pauillac


Ch. Latour
シャトー・ラトゥール

ポイヤック (CS80,M15,CF4,PV1)
('65 \?)('72 \?)

 言わずとしれた、メドックの第1級シャトー。女性的なラフィット、マルゴーに対し、男性的と形容されるワイン。60年代、70年代の最悪とも噂されるほどのオフ・ヴィンテージが65年と72年。ラトゥールを語る時に「不作の年でも安定した品質を保つ」という話をよく耳にしますが。。。
 65年:生まれ年のラトゥール。確かに素晴らしいワインです。65年という年のワインでも、ラトゥールの名声の前では全く意味がないようです。抜栓後30分での瓶口からの甘い香り。官能的な揮発香がグラスを満たし、自分と同じ生を受けたワインに感動。素晴らしい体験でした。
 72年:1972も1965に本当に似ています。これがシャトーの歴史なのでしょうか。ふっとグラスの底から沸きあがるプラムの甘さは古酒の魅力。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】
(メドック格付け第1級)


Ch. Lafite-Roothschild
シャトー・ラフィット・ロートシルト
ポイヤック (CS70,M15,CF13,PV2)
('74 \20,000位)

 メドック格付け第1級の中でも筆頭の位置を務める銘酒中の銘酒。コンティ王子とのロマネ・コンティの畑の取り合いをしたことでも知られるマダム・ポンパドールが晩餐の席で欠かさなかったと言われるのが、このラフィット。1974年は、ボルドーにおいてもオフとされるヴィンテージ。
 このラフィット、今流行りの点数評価をするとどうなのでしょう?80点それとも90点?こんなワインを目の前にして、点数で評価することの空しさを覚えるワイン。憂いを含む優しい熟成香は、飲み頃を過ぎた感は否めません。ただそのワイン全体が持つ酒質はいままで頂いたラフィットのイメージに極似しているのです。生まれた年に恵まれなかったワインが時間と共に線の細さを感じさせながらも、決して自己の個性は崩さない。繊細さ、優雅さ、メドック格付け筆頭たる所以。
(メドック格付け第1級)

Ch. Mouton Rothschild
シャトー・ムートン・ロートシルト

ポイヤック (CS80,CF10,M8)
写真上より('57 \50,000位) ('67 \30,000位) ('91 \20,000位)

 ご存知、メドック格付け第1級ワイン。1855年の格付けでは第2級でしたが、1973年、例外的に第1級へ昇格。毎年、著名画家によりラベルが描かれる事でも有名。57年、67年は生まれ年の方とご一緒させて頂きました。やはりバースディ・ヴィンテージのムートンは飲んでみたいものですね。
 57年:画家はアンドレ・マッソン。ボルドーの57年は、評価の低い年のようですが、さすがのムートン、依然とその力を保っています。ピーター・ツーストラップ氏の経由、ノン・リコルクでも状態のよさが伺えました。カシスやコーヒーのアロマとエキゾチックでスパイシーなブーケは、飲む人を魅了します。ワインを構成する酸味、そして緻密なタンニンは、グラン・ヴァンの風格。
 67年:ここの年の画家はセザール・バルダチーニ。全体的にややフラットですが、ムートンの個性でしょうか、ボディは未だ逞しく、シャンピニオンのブーケ、強さのあるベリーが長熟を物語るワイン。
 91年:1991年は日本人画家、クロソフスキー・ド・ローラ・セツコ(出田節子、ご主人は93年のラベルを描いたバルテュス)の作品。カシスやロースト香のアロマ、アタックで感じるタンニンの後は少し小じんまりとしていますが、心地よい飲み口のワイン。
 その味わい自体は、秀逸なムートンとは言えない3本かもしれませんが、やはりこうやってラベルを見ているだけで、嬉しいワインですね。
(メドック格付け第1級)




Ch. Pichon Longueville Comtesse de Lalande
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド
ポイヤック 赤 (CS45,M35,CF12,PV8)
('65 \15,000位)('79 \15,000位)

 第1級同等の評価を受ける第2級の最高峰。50%の新樽で20ヶ月の熟成を行う。オーナーのド・ランクザン夫人が、78年より後を継ぎ現在の評価を作り上げたと言われます。
 65年:生まれ年のラランドは、気品ある素晴らしい味わい。リキュールのようなボディにカシスとミネラル感が生き抜いています。生まれ年のワインには、いつもただ感動するばかりです。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】
 79年:このヴィンテージの最高傑作と呼ばれるワイン。確かにそのスパイシーな香りはエレガントで、ポイヤックの中でも南端、サンジュリアンとの境に位置する畑から生まれるワインは果実の優しさと確固たる芯を感じます。時間と共に、バターやミルクの印象を増し、まろやかさを感じる好みの古酒。
 (メドック格付け第2級)

Saint-Julien


Ch. Leoville Las Cases
シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ

サン・ジュリアン 赤 (CS65,M18,CF14,PV3) 
('74 \10,000位)

 レオヴィル御三家(レオヴィル・ラス・カーズ、レオヴィル・バルトン、レオヴィル・ポワフェレ)の中でも特に評価の高いスーパーセカンド。サン・ジュリアンの中でも北部に位置し、畑はシャトー・ラトゥールの南続き。サン・ジュリアン村の筆頭格です。
 上記のラフィットと一緒に頂いた同じ74年のラス・カーズ。意外にもカシスの風味、厚みを残した果実は、熟成の頂点ながら凛とした姿を保っています。古酒の醍醐味、揮発香を漂わせながらワインの旨みと微細なタンニンを残すワインは、さすがのスーパーセカンド。
(メドック格付け第2級)


Ch.Ducru-Beaucaillou
シャトー・デュクリュ・ボーカイユ
サン・ジュリアン 赤 (CS65,M25,CF5,PV5)
('57 \35,000位)('75 \?)

 サン・ジュリアンのベイシュヴィル村にある50haのシャトー。シャトー名は「美しい小石の畑」。その名の通り、小石混じりの土壌からオーナーである著名なボリー氏のもとで上品なワインを生み出します。
 57年:57年という古酒。それは決して驚愕するものでもなければ、深みのあるワインでもないでしょう。ただ、メドックならではの土の香りとヨード香、バニラがあり、甘味のある果実はビロードのように滑らか。酸味によるフィニッシュはエレガントで、古酒ならではのバランス感を持つ様に心奪われた一本でした。
 75年:75年というヴィンテージの個性を感じるデュクリュ・ボーカイユ。75年は良いと言われながらもバランス的には難しいのかもしれませんが、このシャトーのイメージ通りのエレガントさ。土や杉のブーケ、やや多目のタンニンを持つワインは25年経っても強さと優雅さを兼ね合わせていました。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】
(メドック格付け第2級)


Ch. Talbot
シャトー・タルボ
サンジュリアン 赤 (CS66,M26,PV5,CF3)
('65 \?)

 手堅く高品質なワインを生み出すことで知られるコーディア社所有の格付けシャトー。同じコーディア社所有のグリュオ・ラローズに隣接し、102haという広大な単一畑からワインが造られます。
 こちらも恵まれたことに生まれ年のワイン。65年という最悪とも言われるワインですが、なんのなんの、シャンピニオン、ミルキーな熟成香。滑らかなアタック、柔肌の果実はふくよかささえありました。こんなバースディ・ヴィンテージが飲めた事に感謝です。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】
(メドック格付け第4級)

Margaux

Ch.Margaux
シャトー・マルゴー
マルゴー 赤 (CS75,M20,PV&CF5)
('69 \37,000位)('74 \?)

 詳しい説明はいらないほどのシャトー・マルゴー。ボルドーで最も名のしれた87haの畑。マルゴーの歴史は、1855年の格付け以来、様々な所有者に転売され、1900年代中期に有力なネゴシアンのジネステ社の所有になりました。その後1960年代後半には、ジネステ社が財政危機に陥りいいワインが造れない状態だったようです。
 そんな失墜したシャトーを救ったのがメンツェロープス家(1977年に買収)。多大な投資を惜しまず、醸造コンサルタントの草分け、エミール・ペイノー氏を起用。見事マルゴーを甦らせました。そういった意味でもマルゴーの不調期、そしてボルドーではオフとされる1969と1974ヴィンテージ。
 69年:確かに明るいレンガに茶が入る色。香りは揮発香の中にもバニラやバターの溶け込んだ優しいブーケ。ただ、飲むと厚みはなく悲しいヴィンテージの味がしました。
 74年:74年もやや果実感が弱く感じるのは仕方ないとしても、バランス良く優しくまとまったワイン。でもそれはそれでワインの伝統。私には美味しいと言える2本のマルゴーは、グラン・ヴァンとしてのバランスを十分に保っていると思います。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】
(メドック格付け第1級)


Ch.Palmer
シャトー・パルメ
マルゴー(カントナック村) 赤 (CS55,M45)
('67 \?)('74 \?)('88 \?)

 1855年に行われたボルドーの格付けでは、第3級。しかし長年にわたり、安定した品質のワインを造り続け、その人気・実力共に第1級のシャトー同等に評価されています。いわゆる「スーパー・セカンド」と評された第1号。バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて、60年代から80年代のパルメを頂くことが出来ました。
 67年 : 67パルメの評判は以前からよく耳にしていました。ブラックベリー、ややスモーキーなブーケに旨味のある果実の素晴らしいバランス。1967はやっぱりバッドなヴィンテージではないですね。
 74年 : ブラインドで出てきた74年と88年。明るい色調のルビー色。ただ色だけ見ると、そんなに古いワインのように思えない。プラム、ハーブのブーケと木樽、酸の多いアタックにやや弱く感じる果実と細やかなタンニンの余韻。焼けた石のニュアンスを感じる繊細なワイン。
 88年 : 88年はボルドーでは良い年。さすがに若々しい深みのある暗いルビー色。これはボルドーブレンドと分かるカシスやプラムのアロマ。凝縮感がありながら、現時点では樽のロースト香が強く感じる辺りは、マルゴーのアペラシオン、そしてメルローを多く含む、このシャトーの豊かでふくよかな果実の特徴なのでしょう。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】
(メドック格付け第2級)

Ch. Brane-Cantenac
シャトー・ブラーヌ・カントナック

マルゴー 赤 (CS70,CF15,M13,PV2)
('73 \3,570)

 マルゴーACで、その名の通り、カントナック村にあるメドック格付け第2級。カントナック村のいいワインは、他に「シャトー・カントナック・ブラウン」や「シャトー・ディッサン」など、金色のラベルが洒落てますね。
 73年という古酒。あるワインショップが上記の価格で売り出していたので、試してみました。確かにピークは過ぎてますが、そこまで悪い状態ではなかったように思います。ただ、酸化熟成したワインは余韻までシェリー様。古酒を飲みなれない方が飲むと「ただの酸っぱいワイン」?
(メドック格付け第2級)


Bordeaux-Grave


Ch.Haut-Brion
シャトー・オー・ブリオン
グラーブ(ペサック) 赤 (CS45,M37,CF18)
('67 \?)

 1855年メドック地区の格付けの際、あまりにも当時から定評があったため、グラーブ地区ながら例外的に第1級に格付けされたオー・ブリオン。英国で最初に有名になり、初めて単独シャトー名を名乗ったのも、このワイン。ステンレスの発酵タンクも早い時期から導入し、現在も意欲的なワイン造りをしています。
 この67年も美味しい。30年以上のワインと思えないほど未だバタリーで、コクのある果実が十分残っていました。包み込むような優しさにハーブの清涼感が交わる素晴らしい古酒です。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】


Ch. La Mission Haut Brion
シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン
グラーブ(ペサック) 赤 (CS50,M40,CF10)
('72 \?)

 シャトー・オー・ブリオンの向かいに位置するシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン。1919年にウォルトナー家がこのシャトーを取得し、その名声をオー・ブリオンに匹敵するまでに高めました。1983年、オー・ブリオンがここを購入(ウォルトナー家はその後ナパ・ヴァレーに渡り、秀逸なシャルドネを生産している)。毎年新樽を100%使用し、24ケ月熟成させ、非常に高い評価のワインを産出する。
 ウォルトナー家時代のラ・ミッション。パーカー氏も天候に恵まれなかった72年ヴィンテージとしては大変誉めているワイン。いやはや、これも想像以上、しなやかで甘さのある果実はオフとは思えない凝縮度と滑らかさ。オフの年に丁寧に造られたことが感じられる素晴らしいワインですね。
 【バッド・ヴィンテージ・クラブ第一回総会にて】


Bordeaux-Pomerol


Ch. l'Eglise-Clinet
シャトー・レグリーズ・クリネ
ポムロール 赤 (M70〜80,CF20〜30)
('93 \12,000位)

 19世紀末にクロ・レグリーズの息子がクリネの娘と結婚したことによって生まれたレグリーズ・クリネ。ポムロールでも知名度の低かったこのシャトーは、1983年からオーナーのドゥニ・デュランドー氏の努力により、近年爆発的な人気を誇る。6haの畑には1956年の冷害にも耐えた古樹(平均樹齢40〜45年)が植わり、収穫の1/4をセカンドにまわす。新樽は40〜70%。
 手放しで嬉しいポムロール!深みのある赤紫色、スパイシーですでに熟成を感じる香り。赤みのある甘い果実は、スルリと舌の上に滑り込み、口中でビターチョコがとろけるよう。リキュールのようなみずみずしさがあり、アルコールと酸、控えめなタンニンが余韻を優雅に締めくくるワイン。完全につぼにはまった一本。 

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