October,2000

ボルドー
グッド・ヴィンテージ特集

Ch. Cos d'Estournel '96
Ch. Les Ormes de Pez '86
Ch. d'Armailhac '89
Ch. Leoville Poyferre '83
Ch. Lagrange '89
Ch. Lagrange '94
Ch. Beychevelle '82
Ch. Marquis de Terme '78
Ch. La Lagune '75
Ch. Cantemerle '85
Ch. Liversan '61
Ch. Tour du Haut-Moulin '88
Ch. Tour du Haut-Moulin '95
Ch. Maucaillou '90
Ch. Canon '83
Ch. L'Arrosee '95
Ch. l'Evangile '89
Ch. La Cabanne '94

(特にお気に入りのワインには マークを付けています)


Bordeaux-Medoc

Saint-Estephe


Ch. Cos d'Estournel
シャトー・コス・デストュルネル

サンテステフ 赤 (CS65,M35)
('96 \12,000位)

 畑はラフィットを見下ろす丘に位置し第2級の中では最高の評価。”エストュルネル家の玉石の丘”という意味のこのシャトーは、東洋のパゴタ(神殿)をイメージしています。サンテステフでは、モンローズと並び、最も評価の高いシャトー。1996年は、過去最高値をつけ、特にメドックのカベルネ・ソーヴィニオンは素晴らしい品質とされるヴィンテージ。
 これだけ若いグラン・ヴァンを飲むのは少しもったいないのでしょうが、意外にも美味しく飲める1本。輝きのある深いガーネット色、黒から赤い果実を思わせるアロマは高めのアルコール香と共に動物的なニュアンス。丁子などの東洋風のスパイスが印象的。完熟を思わす甘味、今飲んでも硬いという感はなく、バランス感あふれる密度のあるフルボディ。出来れば10年後にもう一度出合いたい、買っておいて損はないと思います。
(メドック格付け第2級)


Ch. Les Ormes de Pez
シャトー・レ・ゾルム・ドゥ・ペズ

サンテステフ 赤 (CS70,M20,CF10)
('86 \6,500)

 このシャトーは、ポイヤックの名シャトー、ランシュ・バージュのジャン・ミッシェル・カーズが所有、管理し、その評価もブルジョワ級の中でもとくに高いサンテステフ村のワイン。1986年のボルドーは1996年と類似した年であり、力強く長熟なヴィンテージ。
 86年のレ・ゾルム・ドゥ・ペズ。コルクにキラキラ光る酒石がついてました。さすがに15年近く前のワイン、果実は柔らかさを帯び、「森の中」といった表現がぴったりの清涼感、朝露を含んだ杉の香り、「鉛筆の芯」というニュアンスがよく分かるメドックらしいもの。納得の一本でした。
(ブルジョワ級)

Pauillac

Ch. d'Armailhac
シャトー・ダルマイヤック

ポイヤック 赤 (CS50,M32,CF18)
('89 \8,500位)
 シャトー・ムートンの兄弟シャトー。故バロン・フィリップ男爵がこの畑を入手したのが1933年で、当時はムートン・ダルマイヤックと呼ばれていました。そして1956年にムートン・バロン・フィリップと改名、1975年にムートン・バロンヌ・フィリップ、1989年からダルマイヤックと改称されています。1989年は多大な収穫量だったにも関わらず、素晴らしい品質とされる年。
 89年のダルマイヤック。ペッパーやハーブを含む複雑な香りはメドック格付けシャトーならでは。果実味に比べやや酸が勝ってきているミディアム・ボディのワインは、今飲んであげてよかったのかな?
(メドック格付け第5級)

Saint-Julien


Ch. Leoville Poyferre
シャトー・レオヴィル・ポワフェレ
サン・ジュリアン 赤 (CS52,M28,CF12,PV8)
('83 \11,000)

 レオヴィル御三家(レオヴィル・ラス・カーズ、レオヴィル・バルトン、レオヴィル・ポワフェレ)。もともと他のレオヴィルと同じ所有者だったのが、分割されて現在の形に。近年は、あのミッシェル・ロランによる助言も受け、着実にメドックのトップ級へ。1982年には及ばないものの、良質で豊作だった1983年。今、飲み頃のワインも多いヴィンテージ。
 83年のポワフィレ。まさにこのメドック地区の良さを持つ流麗なワイン。東洋風のスパイスにカシスやプラムを思わす香り、樽の要素が溶け込み、やや乾いたタンニンが個性を与えます。しなやかなで、きめの細かなワインは心地よく、余韻に果実の甘味を感じられます。まだまだ成長を感じさせるワイン。
(メドック格付け第2級)


Ch. Lagrange
シャトー・ラグランジュ
サン・ジュリアン 赤 (CS66,M27,PV7)
( '89 \9,000)('94 \5,800位)

 1983年、サントリーがオーナーとなり、ボルドーの格付けシャトーの中で日本企業が初めて購入した例となったラグランジュ。もともとグリュオー・ラローズに隣接する畑は良い条件を持っていたと言われますが、経営陣の努力により、近年の評価はメキメキ上がっています。
 89年:10年以上も前のワインにして、エッジにも退色は見られず、輝きのあるルビー色のワインは、整った酸がこのワインを支えているようです。優しい土や杉のブーケ、タンニンも角がとれ、温和な果実味と調和するバランスの良いボルドー。今から本当に飲みごろだと思う美味しいワインです。
 94年:このシャトーの中でも珍しいくらい内向的な年(1994年は全体的にそういう傾向)らしく、実際その味わいは、ベリー系の風味にスパイスが混じるメドックらしい香りなのですが、収斂味がありタンニンの量が多め。これからどうまとまるか、興味のあるワイン、今は少し置いたほうが良さそうです。
(メドック格付け第3級)


Ch. Beychevelle
シャトー・ベイシュヴェル
サン・ジュリアン 赤 (CS60,M28,CF8,PV4)
('82 \12,000)

 ラベルに描かれた「帆を下げた帆船」。海軍提督でもあった公爵家がこのシャトーを所有していた時代、前を流れるジロンド河を行く帆船が、公爵に敬意を表して帆を下げたという逸話があるようです。当然シャトーはジロンド河に近く、サン・ジュリアン村の南端に位置します。1982年は誰もが認める世紀のヴィンテージ。
 まだ、若さをも感じさせる輝きのあるルビー色。ハーブや杉の香り、赤い果実は未だに精緻なタンニンと厚みを保っています。ようやく飲み頃を思わせるワインは、柔和なのに規律がある。ただただ美味しいワイン。
(メドック格付け第4級)

Margaux

Ch. Marquis de Terme
シャトー・マルキ・ド・テルム

マルゴー 赤 (CS55,M35,PV7,CF3)
('78 \5,270)

 メドック格付けであり、80年代以降の評価は持ち直しつつありながら、未だ知名度の低いワインの一つ。実はこの78年、あのR.パーカー氏の評価では「50点」なんと最低点。どんな味わいなのか興味が湧きます。1978年は天候に恵まれなかったにも関わらず、初秋の好天に救われた「奇跡の年」。
 パーカー氏のコメントを引用すると「これは印象の薄いワインだ。汚れたような、カビ臭い、濁ったアロマから判断すると、手入れの悪いセラーなのだろう。口に含むと薄い味がしてカビ臭く、魅力もなにも無い。欠陥品だ。」 手厳しい評価ですね(笑)。確かにそういった感もあるのですが・・・
 色自体は全く問題なく見える綺麗なガーネット。まず感じるのは土。夕立のあとのホコリ。草の香り(やはりこれが不潔なイメージを含む)。確かに余韻の短さや、果実は平坦さには、いいイメージはありませんが、ワイン全体のまとまり、メドックを感じられるブーケに「50点」はちょっと可愛そう。
(メドック格付け第4級)

Haut-Medoc


Ch. La Lagune
シャトー・ラ・ラギューヌ

オー・メドック(リュドン) 赤 (CS50,M20,CF20,PV10) 
('75 \?)

 メドック格付けシャトーは、オー・メドック(オー:高いの意味)と呼ばれる、メドック地区南部のやや高くなった所で造られます。オー・メドック内の6つの村名ワイン(サンテステフ、ポイヤック、サンジュリアン、マルゴー、ムーリス、リストラック)以外は、「オー・メドック」という地区名ワインとなります。
 ラ・ラギューヌは、この地区名ワインの中では、格付け最高位。格付けシャトーの中でも最も南に位置し、その土質はグラーヴのものに似ていて、軽く砂礫に近い砂地という事。そのため酒質も優雅なグラーヴのようだとも言われます。
 1975年は素晴らしいヴィンテージと言われながらも、未だ個性を表さないワインもある「貯蔵向き」の年。一方では「理解しづらい」とも言われます。
 ブラインドで飲んだこのワイン。土やレッド・カラント、そして柔らかな熟成香には、やや乳酸を感じるエレガントな個性。状態は良好、還元的で、若々しく感じる。余韻にしっかりとしたタンニン。素晴らしいボルドーのグラン・ヴァン古酒でした。
(メドック格付け第3級)


Ch. Cantemerle
シャトー・カントメルル

オー・メドック(マコー) 赤 (M40,CS40,CF10,PV10) 
('85 \8,000位)

 オー・メドック南部、マコー村の森の中にある、メドック格付け第5級。67haの畑から年間約4万ケースのワインを産出します。1980年にコーディア社を中心とするグループが買収し、ステンレスタンクの設置、醸造所、貯蔵庫を刷新したりと、その精力的な質の向上に対する努力の結果、現在では第5級という格付け以上に評判のよいシャトーです。1985年は理想的な収穫期となり、ふくよかでバランスの良い年とされる秀逸なヴィンテージ。
 85年は、グラスに注がれた瞬間からやや茶色が入り、熟成されていることが伺えます。その熟成香、丁子や唐辛子の東洋のスパイスを含みます。口当たりは優しく、まさにビロードのよう。柔らかな果実は口に含んでも余計な刺激を与えず、余韻に角のとれたタンニンが広がる、優雅なワイン。熟成された優しいワインを好む方には是非、おすすめです。今が飲みごろ、うまい。
(メドック格付け第5級)


Ch. Liversan
シャトー・リヴェルサン

オー・メドック 赤 (CS49,M38,CF10,PV3) 
('61 \29,000位)

 全く気にとめていなかったこのリヴェルサン。ポイヤックの町と小さなサン・ソヴェールという村の間に位置するシャトー。1961年は今世紀の中でも金字塔的なヴィンテージ。今ではあまりに高価。果たしてこのブルジョワ級、その味わいは保たれているのか?興味津々でした。
 いやびっくりするメドックの古酒、そしてポイヤックに近いニュアンスを十分表していました。未だ健全なルビー色をしたワインは、プラムやジャム、奈良漬やアミノ酸といった旨味のあるブーケが漂います。甘味を含む果実は力を残し、収まりのよいフィニッシュ。強さのあるヴィンテージは、ブルジョワ級のシャトーにも40年近くも熟成する力を与えることが理解できました。
 ちなみにこのワインは近年のヴィンテージでしたら2000円〜3000円で買えます。昔のエチケットはシャトーが描かれていましたが、今は少し違う様子。1990辺りが飲んでみたいなあ。
(ブルジョワ級)


Ch. Tour du Haut-Moulin
シャトー・トゥール・デュ・オー・ムーラン

オー・メドック 赤 (CS50,M45,PV5) 
('88 \5,400 1500ml)('95 \3,500)

 このシャトーは、class30好みのシャトー・ラマルクの北側に位置し、パーカー氏も秀逸と評するブルジョワ級。1988年、1995年ともに疑いなく素晴らしいヴィンテージ。
 88年:88年のマグナムは、このワインの飲み頃でしょうか。柔和になった果実と渋みを残す余韻が美味しい。
 95年:確かにカシスやオークの風味を持つ凝縮されたワイン。ブルジョワ級にも格付けに匹敵するワインが存在するということを証明するシャトーですね。このコスト・パフォーマンスは素晴らしいと思います。
(ブルジョワ級)

Moulis


Ch. Maucaillou
シャトー・モーカイユー

ムーリス 赤 (CS56,M35,PV7,CF2) 
('90 \2,980 375ml)

 オー・メドック内でAOC表示できる6つの村のうち、ムーリスとリストラックは格付けシャトーがないため、あまり知られていませんが、優良なブルジョワ級の宝庫。ボルドーでも有名なドゥルト家の情熱が注がれるこのモーカイユはブルジョワ級でも傑出したシャトーの一つ。あの1982年をも超えると噂される偉大な1990年ヴィンテージ。
 ハーフボトルながらその期待を裏切ることなく、カシスの風味に、熟成によるミルク、白いキノコ、スパイスの風味が交じり合い、肉付きの良いなめらかなワイン。まさにお買い得の一本かもしれません。
(ブルジョワ級)


Bordeaux - St-Emilion


Ch. Canon
シャトー・カノン
サンテミリオン 赤 (CS,M,CF)
('83 \6,800)

 町の南西に位置するこのシャトーは、1919年以来、フルニエ一族が所有してきましたが、1990年代半ば、シャネル社が買収。伝統的な醸造法を踏襲し、65%以上の新樽、18ヶ月樽熟されます。
 鮮やかで透明感のあるルビーにほんおりとオレンジがかかる色調のワインは、湿った土やブラックペッパーの香りが熟成された古酒の良さを感じさせます。アタックから余韻にかけての比較的高めの酸が、清々しい印象を与え、甘い黒果実の風味。やや中間の味わいにかけるものの、食事と共に楽しめるワインです。
(サンテミリオン地区第一特別級B)


Ch. L'Arrosee
シャトー・ラロゼ
サンテミリオン 赤 (M50,CS30,CF20)
('95 \7,000位)

 ロダン一族が1911年に購入し、1960年代半ばより元詰めを開始。コート地域の南側斜面、10haの畑から産み出されるワインは、あまり目立たない存在ながら、パーカー氏も「第一特別級に格上げされるべき」と誉めそやす、知る人ぞ知るシャトー。1995年は、ボルドー全域で成功した年。その中でもメルローは素晴らしいとされています。
 深みのあるガーネットのワインは、熟成によるアミノ酸の醤油風味や、ゆでたキャベツの個性的な香り。酸味中心のアタックからこなれたタンニンを含む、中庸な受け入れやすいミッド・パレット。カシスを煮詰めたソースにも似た甘く旨味のある味わい。面白いワインですし、この地区の典型とは言えないかもしれませんが、捨てがたい何かがあります。ロワールのカベルネ・フランに近い印象でした。
(サンテミリオン地区特別級)


Bordeaux-Pomerol


Ch. l'Evangile
シャトー・レヴァンジル
ポムロール 赤 (M75,CF25)
('89 \18,000位)

 ポムロール地区の東端、サンテミリオンとの境界線に位置する14haの畑。周りをペトリュス、コンセイヤント、そしてシュバル・ブランに囲まれるという立地。当然のことながら、常にポムロールで注目されるシャトーの一つ。オーナーのルイ・デュカスが他界した後、ラフィット・ロートシルトのドメーヌ・デ・バロン・ロートシルトが経営を引き継いでいます。
 キノコや土の熟成感ある香りは魅力的で、ローストされた風味、メルローとしては押しのある果実が印象的。全ての要素は上品なのですが、全体的に厳しい感じはまだまだ置いておくと良くなると思いました。いづれにしても偉大なレヴァンジルでしょう。

Ch. La Cabanne
シャトー・ラ・カバンヌ
ポムロール 赤 (M94,CF6)
('94 \4,000位)

 ポムロールにてエスタジェ家が経営するこのシャトーは、樹齢約30年、10haの畑から年間6万本を産出。新樽を60%使用し、14〜18ヶ月の熟成が施されます。
 抜栓後、やや高めに感じた酸が落ち着くと、ややミンティーな香り、ポムロールの良さ感じます。黒果実系のワインは、しっかりした味わいは持っていますが、やや粗さがあるかな? この前に飲んだワインが素晴らしすぎて、可愛そうだったかも?

今月のワイン 目次
今月のワイン 前回 今月のワイン 次回





class30 "The Wine"