May,2000

フォーティファイド・ワイン etc.

Taylor's 20 Years Old Port
Graham Vintage Porto '60
Fonceca Vintage Porto '85
Calem Vintage Porto '82 '86
Quinta de Baldias Vintage Porto '85 '87
W.J. Heart Vintage Porto '81
Dao Quinta dos Carvalhais Touriga Nacional '95
Madeira Terrantez Old Reserve
La Sacristia Pedro Ximenez
Marc du Chateau de Pommard
Muscat de Rivesaltes
Grappa di Sassicaia

今回は、アペリティフとディジェスティフ、食前や食後に最適なフォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン:ポートやシェリー)等の特集です。なおフォーティファイドという言葉は、発酵途中や発酵後にアルコール度数の高いリキュールを添加し、発酵を止めること。また、マールやグラッパは、ワイン醸造の際のブドウの搾り残しの部分を再発酵させ蒸留したものです。
ポートワインに関する製法、歴史、タイプ他は「今月のお題目」にて詳説しておりますので、そちらを参考にして下さい。


Portugal-Port


Taylor's 20 Years Old Port
テイラー・20イヤーズ・オールド・ポート

ドウロ川流域 ポート (トーリガ・ナシオナール他)
(\6,800)

 1692年創業、3世紀に渡る歴史あるシッパー。家族経営を続けるイギリス資本のポート会社のひとつ。高名なワインの専門家、マイケル・ブロードベント氏の弁。「私の中でテイラーは至高の位置を占めている。私はしばしばテイラーをポートワインのラトゥールになぞらえてきた。その力強い個性、たくましさ、長い歳月を生き抜いていく素質と可能性。そして、そのワインの気質にあたかもラトゥールを思わせるような力強さを与えているのが、他の追随を許さないテイラーの個性である。」
 テイラーの20年物トゥニーは、ポートの良さを気づかせてくれたワイン。アルコールのボリュームや甘さもバランスがとれ、このタイプは濾過されているので、扱いも難しくありません。食後に、夜更けのバーで、また就寝前の読書と共に。オールマイティーなポートです。
(テイラー・フラッドゲート&イートマン社)


Graham Vintage Porto
グラハム・ヴィンテージ・ポート

ドウロ川流域 ポート (トーリガ・ナシオナール他)
('60 \?)

 スコットランドの貿易商、ジョン・グラハムが1820年に創立。多くは自社畑キンタ・ドス・マルヴェドスのブドウを使用。
 この1960のポート、あるバーにて飲んだもの。その抜栓時はよく分かりませんが、それでも十分にこのオールド・ヴィンテージを楽しめました。ふくよかな果実、コーヒーを噛み締めた風味は、すべてに丸みを帯び心地よい甘さ。ここまで熟成させれば、ようやくポートの魅力が出るという事を認識させられる一本。ポートのパワーってすごいですね。
(グラハム社)

Fonceca Vintage Porto
フォンセカ・ヴィンテージ・ポート

ドウロ川流域 ポート (トーリガ・ナシオナール他)
('85 \14,800)

1822年創立、ポルトガルの中でも一、二を争う評価の高いポート・メーカー、フォンセカは、テイラーと同じ系列。ここのヴィンテージは一度味わいたかった逸品。
 グラスに注いだ瞬間から、その若々しい鮮やかな赤紫色に当惑?15年でもまったく時間が足りない事を告げているよう。現時点では、ブドウの甘さもフレッシュで、全体的にあっさりと感じます。やはりこれは熟成途中、いけない時に開けてしまったのでしょう。
(フォンセカ・ギマラエンス社)


Calem Vintage Porto
カレム・ヴィンテージ・ポート

ドウロ川流域 ポート (トーリガ・ナシオナール他)
('82,'86 \5,000)

 カレム社がオポルトに設立されたのは1859年。現在も創設者の子孫たちがポートワインの醸造を受け継いでいます。ドウロ川の中流に南、南東向きの理想的なぶどう園を数多く保有し、ヴィンテージ・ポートにはキンタ・ダ・フォスの最高品質のぶどうのみを使用しています。
 美味しいポートです。特徴的なすみれの香りや、スパイシーな風味があり、心地よい甘さはなおかつ重くない。86年はやや若さも感じますので、現時点でおすすめは82年でしょうか。
(カレム社)


Quinta de Baldias Vintage Porto
キンタ・ド・バルディアス・ヴィンテージ・ポート

ドウロ川流域 ポート (トーリガ・ナシオナール他)
('85,'87 \5,000)

 地元の酒屋さんの扱うキンタ・ド・バルディアスは、このヴィンテージにして約5000円という価格もいいのですが、美味しいポートなんです。アルコールも和らぎ、果実のコクを残したバランスのとれたワインは今が飲み頃。これからヴィンテージ・ポートをという方にも、おすすめできると思います。
(キンタ・ド・バルディアス)


W.J. Heart Vintage Porto
W.J. ハート・ヴィンテージ・ポート

ドウロ川流域 ポート (トーリガ・ナシオナール他)
('81 \? 1500ml)

 初めて見たポートのマグナムボトル。ハートというシッパーは初耳なのですが、このワイン、ヴィンテージ・ポートであれば本来、澱を引いていないはずなのに、濾過して瓶詰してあるんですね。
 このヴィンテージのポートとしては樽での熟成が長いと思われるレンガを帯びたやや明るめのルビー色。愛らしい赤いベリーのアロマと揮発香。タンニンもスムースでミディアム・スイートなポートはとても美味しい。
 推測ですが、ラベルに「PORTO 1981 MATURED IN WOOD AND BOTTLED IN 1994」と記されていたので、厳密には「コルヘイタ
」(単年度のブドウから造る本格的なトゥニー。7年以上の樽熟成後に瓶詰め。収穫年を表示し、瓶詰め年も記載されます。)かもしれません。
(W.J ハート)

Portugal-Dao


Dao Quinta dos Carvalhais Touriga Nacional
ダン・キンタ・ドス・カルヴァリャイス・トーリガ・ナシオナール

ダン 赤 (トーリガ・ナシオナール100%)
('95 \3,000位 海外にて)

 はじめに:これはポートではありません。普通の赤ワインです。
 98年夏、北欧ヘルシンキの酒屋にて。「おすすめがありますか?」という問いに店員が自信満々でだしてきたのがこのワイン。「何!ポルトガル?」
 帰って調べてみると、あのマテウス・ロゼでも有名なソグラペ社がダン地域のワイナリー兼ブドウ園、キンタ・ドス・カルヴァリャイスにおいて、長年の計画に基づき、ポートそしてテーブルワインの品種としても最高級とされるトーリガ・ナシオナール100%で造ったもの。リリース後間もなく、1999年 Wine & Spirits において「ベスト・ワイン・オブ・ザ・イヤー」に入っていました。アルコール度数12.7%、オークの小樽で12ヶ月熟成。
 あー、沢山買っておけばよかったと思わすワイン。鮮やかなルビー色のワインは、スミレの香り、熟したプラム、タンニンもしっかりとしながら非常に細やかな舌触り、ボリュームある果実はやはりポートに繋がる甘さも持っています。あと5年位置いた後に飲んでみたいワインです。
(ソグラペ社)

Portugal-Madeira


Madeira Terrantez Old Reserve
マディラ・テランテス・オールド・リザーブ

マディラ (テランテス種)
(\5,800)

 マディラ・ワイン。ポルトガルの首都リスボンから南西に約1000km、大西洋上に浮かぶ火山性の島、マディラ島の酒精強化ワイン。ポートと同じくブランデーを添加するのですが、その前に約50℃の乾燥炉(エストファ)に3〜6ヶ月入れるのが特徴的。
 なんでもマディラワイン・インスティテュートが高貴品種として認めるブドウがテランテス種。このワインは、生産年を特定する事は出来ないながら19世紀後半のものらしく、樽に入った状態でジャスティーノ社の倉庫で発見され「Old Reserve」規格として瓶詰、輸出されたといういわく付き。
 それはともかく好みなんです。その香りはブルゴーニュの古酒にも通じる酸化熟成の香り、繊細な酸味があり、ブドウの甘さを残した味わいは、なんだか飲めてしまう不思議な感じ。
 ただ一つ疑問は、このワインを昨年の後半に何本か開けてみても、同じく美味しいワインだったのですが、先日頂いたこのワインは、さらに色も薄く、酸が立っていたようで、違った印象を受けました。これは樽のロットの違いかもしれません。
(ジャスティーノ社 : JUSTINO)


Spain-Jerez/Xeres/Sherry

La Sacristia Pedro Ximenez
ラ・サクリスティア・ペドロ・ヒメネス

ヘレス シェリー (ペドロ・ヒメネス)
(\4,000位 500ml)

 シェリー。スペインの南部アンダルシア地方の酒精強化ワインは、ソレラ・システムという手法を用い、ワインの表面に出来るフロール(白い膜)により独特の風味をもたらします。主にパロミノという品種によるシェリーは辛口のものがお馴染みだと思います。
 このワインは、ペドロ・ヒメネスという品種の甘口シェリー。黒に近いガーネット色のワインは、エッジに茶が入り、古いワインという事を物語っています。まろやかなコクとナッツやプルーンの風味。一言でいえば「プリンにかけるシロップ」のような甘さ。これはかなり甘い。この地方のものとしては、ボトルデザインもかっこいい。
 当然デザートとともに。アーモンドを使った焼き菓子や、アイスクリームにも。でもやっぱりプリンかな?(笑)
(Sanchez Romate Hnos)


France-Bourgogne


Marc du Chateau de Pommard
マール・デュ・シャトー・ド・ポマール

ブルゴーニュ マール (ピノ・ノワール)
(\8,000位)

 マールとは「圧搾した後のブドウの実の皮」。正式にはオー・ド・ヴィー・ド・マールといい、ワインの醸造の際に生じた搾り残しの部分を再発酵させ、蒸留したもの。フランスでは、シャンパーニュ、アルザス、ブルゴーニュの物が有名で、三大マールと称されます。いわゆる「滓(かす)とりブランデー」。
 これはclass30お気に入りのブルゴーニュ、シャトー・ド・ポマールが造るマール。アルコール度数は44度と高めですが、中心部にほのかなブドウの甘さとスパイシーな風味があります。黒地に金のエチケットが素敵です。
(シャトー・ド・ポマール)

France-Languedoc Roussillon

Muscat de Rivesaltes
ミュスカ・ド・リヴザルト

ルーション VDN (ミュスカ)
(\1,980 500ml)

 南仏ルーションのVDN(Vins Doux Naturels : ヴァン・ドゥー・ナチュレル)。VDNとは、ブドウの発酵中にアルコールを添加し、発酵をストップさせます。そうすると天然の糖分がワインの中に残り、甘口のワインが出来上がります。
 この地区で様々なワインを産出し話題になっている、ジャック・リブレール氏のロスピタレ。VDNにも挑戦しています。マスカットの甘い香り、当然の如くワインも濃密な甘さ。余韻にリキュールの強さが少し残ります。アルコール度数15度。
(シャトー・ロスピタレ : Ch. L'Hospitalet)


Italy-Toscana


Grappa di Sassicaia
グラッパ・ディ・サッシカイア

ボルゲーリ地区 グラッパ(カベルネ他)
(\9,000位 500ml)

 イタリアの食後酒として人気があるのがグラッパ。製造方法は上記のマールと同じ、イタリア版「滓とりブランデー」。マールに比べて、グラッパの方がその個性が色々で、多様性があるようにも思うのですが、多くはかなり強烈な辛口。
 これは、あのスーパー・タスカン、サッシカイアのグラッパ。以前は有色のドイツ風の瓶に入っていたようですが、新しく細い円柱形に。ロースト香や、余韻にほんおりと甘味を帯びるこのグラッパは、さすがサッシカイア。その名前と共に、イタリア好きが集まる会の最後には喜ばれるワインでしょう。写真のような豪華な円筒に入ってるのもいいですね。
(テヌータ・サン・グイード)

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