March,2000 (2)

ローヌ、ロワール、アルザス

Cote Rotie la Turque '92
Condrieu La Cote '96
Chateauneuf-du-Pape (Blanc) '95
Anjou Rouge Cuvee Martial '90
Anjou Village Rouge '96
Coteaux du Layon Rochefort "Les Rayelles" '91
Pouilly Fume Silex '95
Trimbach Cuvee Frederic Emile '85 '89
Tokay Pinot Gris Vieilles Vignes '97



France-Cotes du Rhone


Cote Rotie la Turque
コート・ロティ・ラ・トゥルク

コート・ロティ 赤 (シラー)
('92 \22,000位)

 コート・ロティの3つの素晴らしい単一畑「ラ・ムーリーヌ」「ラ・ランドンヌ」「ラ・トゥルク」。この畑からワインを造るのがギガル。
 創始者のエティエンヌ・ギガルがヴィダル・フルーリを離れ、自らのドメーヌを創設したのが1946年。わずか50年でその名を世界に轟かせることになったのは、これらのコート・ロティの存在なくしては語れないでしょう。
 「ラ・トゥルク」は3つの中では最も後からリリースされたもので、85年が初ヴィンテージ。粘土質の高いコート・ブリュンヌの1haの畑から、100%新樽、42ヶ月の長期熟成により生まれます。E.ギガルの名を決定的にしたワイン。
 鮮やかな赤紫にやや茶の入ったワインは熟成を示し、東洋風のスパイスとなめし皮のニュアンス。黒い果実は蜂蜜を思わせる甘さを持ち、微細でしなやかなタンニンのため、全体のバランスはまるで白ワインのエレガンス。落ち着くとこれぞシラーという表情を見せる。さすがのギガル。
(E.ギガル)


Condrieu La Cote
コンドリュー・ラ・コート
コンドリュー 白 (ヴィオニエ)
('96 \2,480 375ml)

 有機農法の有力な生産者イヴ・キュイユロン。特にコンドリューは高く評価され、場所はシャトー・グリエの南側に6haを所有。特筆すべきことは、ここでは遅摘貴腐のコンドリューを造っている事。歴史的に見れば本来、コンドリューは甘い貴腐や遅摘のワインだったらしく、このイヴ・キュイユロンが復活させてから、現地では追随する生産者が増えたということ。他にもサン・ジョセフの赤白、コート・ロティにも1.5haの畑を所有しています。
 このラ・コートはイヴ・キュイユロンのスタンダードなコンドリュー。柑橘系の香り、レモングラスやほのかな蜂蜜の甘さを持つワイン。ボリューム感はほどほどながら、余韻に複雑な薬草系の苦味。甘口のキュヴェ、エゲ(Ayguets)が飲める日が楽しみです。
(ドメーヌ・イヴ・キュイユロン : Yves Cuilleron)


Chateauneuf-du-Pape (Blanc)
シャトーヌフ・デュ・パプ (ブラン)
シャトーヌフ・デュ・パプ 白 (グルナッシュ・ブラン他)
('95 \5,500)

 ローヌ南部で最も有名なシャトーヌフ・デュ・パプ。ところで、このワイン、白ワインです。シャトーヌフ・デュ・パプには、白もあるんです。ただ生産量は、少ないので店頭ではあまり見かけないですね。
 照りのある黄金色をしたワインは、レッグも強く、白い花や薬草、アプリコットの香り。穏やかな酸味と高めのアルコールのため、酒質としてしっかり感じます。豊かな果実味、この地方ならではの味わい、個人的に好きなんです。
 (アグリル:クロ・デユ・パプ)



France-Val de Loire


Anjou Rouge Cuvee Martial
アンジュー・ルージュ・キュヴェ・マーシャル
アンジュ 赤 (カベルネ・ソーヴィニヨン、ガメイ)
('90 \5,000位?)

 アンジュ、その名を聞くと「ああ、ロゼの産地ね」なんて思う方が多いかもしれません。その観念を覆す一本。このワインは尊敬する新井順子さんのセレクションから。
 ロワール地方のアンジェから南に5km、車で20分程走ったところにあるThouarceという素朴な田舎町にドメーヌ・ド・ラ・サンソニエールはあります。日本ではあまり知られておりませんが、ニコラ・ジョリー氏とこのマーク・アンジェリー氏はいつも比較される2大醸造家です。以前は科学者であったマーク・アンジェリー氏は、1994年から100%バイオダイナミックを採用。600Lの大きな木桶で天然酵母での自然アルコール発酵、後はその葡萄のコンディションによって樽で熟成していくだけと、非常にシンプル。大切なのは葡萄を育てる事で、彼いわく、ガメイは本来非常に複雑になる可能性を秘めた品種だそうです。
 これは驚異のワインです。アンジュの赤なんですが、これをブラインドで飲んで、ガメイと言い当てる人がいるでしょうか?色の濃さもさることながら、ブドウの持つパワーと90年というヴィンテージにしてその若々しさ。丸一日経った時点においても、スミレの花、プルーン、スパイス、ポートにも似た甘さを漂わせ、そこはかとなく湧き上がる果実感に驚きます。
 実はこのワイン、現在ではアソートメントとしてセット販売しかされていませんが、もし見ることがあれば、是非試してみて下さい。マーク・アンジェリー氏が造るワイン、絶対に注目です!
(ドメーヌ・ド・ラ・サンソニエール : Domaine de la Sansonniere)


Anjou Village Rouge
アンジュー・ヴィラージュ・ルージュ
アンジュ 赤 (カベルネ・フラン51%、カベルネ・ソーヴィニヨン49%)
('96 \2,100)

 もう一本、アンジュの赤の紹介。こちらも新井順子さんのセレクションから。アンジェの町から南東に約5km離れたロワール河左岸に位置する、Juigne-sur-Loireという小さな町にあるドメーヌ・ド・モンジレ。1933年に創業、全畑の面積は38haと比較的規模の大きなドメーヌで、白・ロゼ・赤・甘口白と生産しています。
 こちらもコクのあるアンジュ。冷涼な気候であるはずのこの地方で、まったりとした果実感と規律ある酸味によるバランスのとれたワイン。アンジュの見方も変わると思います。
(ドメーヌ・デ・モンジレ : Domaine de Montgilet)


Coteaux du Layon Rochefort "Les Rayelles"
コトー・デュ・レイヨン・ロシュフォー ”レ・レイルス”
コトー・デュ・レイヨン 白 (シュナン・ブラン)
('91 \3,200位)

 ロワールのアンジュ・ソーミュール地区の甘口ワインの産地として知られるコトー・デュ・レイヨン。シャトー・ピエール・ビースは、この地区では著名な醸造元で、オーナーのパパン氏は、自分の畑の土壌を研究し、完璧に知り尽くしている栽培家そして醸造家。補糖は一切行わず、酵母も自然酵母のみを使用しているという事。
 香草の華やかな香りと蜂蜜のふくよかな甘さが口の中に広がる様は、この地区の醍醐味。コスト・パフォーマンスも良く、食事の後に一杯、デザートと共に頂きたいワインです。
(シャトー・ピエール・ビース : Ch. Pierre Bise)


Pouilly Fume Silex
プイイ・フュメ・シレックス

プイイ・フュメ 白 (ソーヴィニヨン・ブラン)
('95 \7,200)

「プイイのやんちゃ坊主」というあだ名を持つディディエ・ダギュノー。ブルゴーニュで修行を積んだという彼は、ボルドー大学のドゥニ・デュブルニュー教授と共同でスキンコンタクトや培養酵母の実験しているということ。1993年より、バイオダイナミックスを採用。それぞれ畑の土壌の成分がワインの名前に付けられ、「シャイユー:珪土」「シレックス:火打石」としています。
 第一アロマで感じる不思議な香り?これはやはり火打石?「シャイユー」と同じくリンゴ酸や甘いフルーツ香もあるのですが、こちらの方がミネラルのためか、すべてに控えめながら複雑な印象。中心部に甘い蜜のようなものさえ感じる。この地域としては、やはり特異なワイン?でも本当に美味しい。
(ドメーヌ・ディディエ・ダギュノー)



France-Alsace


Trimbach Cuvee Frederic Emile
トリンバック・キュヴェ・フレデリック・エミル

アルザス 白 (リースリング) 
('85 \10,000位)('89 \5,200位 375ml)

 トリンバック社は、1626年創業、オー・ラン県のリボヴィルという村に本拠を置く歴史のある醸造所。14haの自社畑を持ち、他に優良な栽培家からブドウを買い付けています。このフレデリック・エミルは、19世紀末のトリンバック家当主の名を冠した畑から厳選して造られる逸品。ゴールドのエチケットが風格を醸し出しています。
 リースリングも魅力のある品種だという事が認識出来ます。優雅な香りはこの品種独特の石油香を保ち、白い花とやや柑橘の風味。無駄な贅肉を落とした均整のとれたボディに熟成によリ丸みを帯びた酸が調和し、エレガンスを感じさせてくれます。アルザスにも偉大なキュヴェがまだまだありそうです。 
(トリンバック)


Tokay Pinot Gris Vieilles Vignes
トカイ・ピノ・グリ・ヴィエーユ・ヴィーニュ

アルザス 白 (ピノ・グリ) 
('97 \3,900)

 たいへん濃厚なスタイルのアルザスを生み出すドメーヌ。フランスで初めてマスター・オブ・ワインを取得したオリヴィエ・フンブレヒトが、父レオナールと共に采配をふるうワインは、アルザスでも別格扱い。はやくから土壌の質に着眼していたドメーヌで、60年代より優れた土質の畑を購入し、現在の名声を不動のものとしています。同社が最も得意とするのが、このトカイで、年々植付けを増やし、現在は全面積の約4割。このヴィエーユ・ヴィーニュは、樹齢40年を超える古木のブドウから仕込まれるワインです。
 まずその甘さを伴う、まろやかで豊かなどこかスパイスを感じる香り。黄金色に輝くワインは、幾重にも重なる密度の濃さを感じさせます。このワインには「秀でた酒質」という言葉が似合うかもしれません。

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