今、各方面で取り沙汰されている環境問題。21世紀を目の前にし、この地球の自然を大切にしようとする意識が強まってきました。 1990年代に入り、ワインの世界もこの問題に取り組む生産者が増えています。今回は、そんな造り手達について、紹介します。 |
ブドウの樹にとって、生命を支える根。自然というのは面白いもので、ブドウの樹は、ミネラルや養分を求め地中奥深く根を伸ばすそうです。しかしながら、化学肥料を散布することにより、土の表面から浅い部分にしか根が伸びなくなる。化学肥料のみに頼るようになった樹から生まれるワインは、その土地の個性を表しにくくなるようです。 左の写真は、カリフォルニアで徹底した有機栽培を実践するフロッグス・リープ。自然の生態系を大切にする彼の畑では、フィロキセラ・タイプBに免疫のないAXR#1という台木を使用しているにもかかわらず、新種のフィロキセラの影響を受けていないということです。 |
ワイン関連の本を読んでいると、「ビオディナミ」という言葉が目につくようになりました。「はて?ビオディナミとは。」 有機栽培と違うのは、有機肥料を与え土地を肥やすよりも、土そのものの活力を最大限に発揮させる事に重点が置かれていること。そのために天体が地球の自然環境に与える影響を重視し、月の満ち欠けや星座、天体の動きに合わせてブドウの植樹や剪定、収穫時期の決定をするということです。 この農法を1980年に実践し、今では指導者的存在となっているのが、ロワールのニコラ・ジョリー氏。彼はブドウ栽培だけにとどまらず、醸造においてもあくまで可能な限り人の手を加えない人物。数々のコラムを読んでも、現代的なテクノロジーの排除、アペラシオンの個性の追求という意味において、その理論には頭が下がる思い。しかしながら、あまりに非科学的、そして中世の黒魔術的という批判もあるようです。 (ニコラ・ジョリー氏の来日時のレポートが、日本ソムリエ協会のホームページに掲載されています。参照して下さい。) |
France-Val de Loire |
![]() ![]() Savennieres Roche aux Moines Clos de la Bergerie サヴニエール・ロッシュ・オー・モワンヌ・クロ・ドゥ・ラ・ベルジュリー サヴニエール 白 (シュナン・ブラン) ('93 \4,500) ![]() ![]() Savennieres Clos de la Coulee de Serrant サヴニエール・クロ・ドゥ・ラ・クーレ・ドゥ・セラン サヴニエール 白 (シュナン・ブラン) ('94 \6,800) |
アンジュ市の南西、ロワール河の右岸に位置するサヴニエール。ニコラ・ジョリーは、この地に本拠を構え、数々の銘醸ワインを生み出しています。 ロッシュ・オー・モワンヌ’93:粘板岩に覆われた丘の急斜面に位置するロッシュ・オー・モワンヌ(30ha)は、クーレ・ドゥ・セランと並ぶこの地区の名畑で、この2つは独自のAOCとして認められています。 クーレ・ドゥ・セラン’94:サヴニエールにある、たった5haの名畑「クーレ・ド・セラン」。その歴史は12世紀にシトー派修道士がブドウ栽培を行ったことに遡ります。ニコラ・ジョリーは、その畑を単独所有。 |
ワイン評論家のタンザーが激賞し、瞬く間に世界中のワイン愛好家の注目の的となったニュージーランドのワイン。それがプロヴィダンス。ある人はこのワインをニュージーランドの「ル・パン」だと言い、カベルネ・フラン・ベースのプライヴェート・リザーブを「シャトー・シュヴァル・ブラン」に喩えたとか。いずれにせよ、今南半球で最も騒がれているワインかもしれません。
このドメーヌのオーナーにして醸造家であるジェイムズ・ヴルティッチ氏の本業は弁護士。畑仕事に関しては同好の士4人があくまでホビーとして手伝ってくれるといいます。ニュージーランドの北島、オークランドの北60キロのマタカナに1990年6月に2haの土地を購入。そこから生まれるワインは年間たったの800ケース。そして、やはり注目すべきはヴルティッチ氏の「このワインはブドウ以外の何物も使っていない。もちろん無水亜硫酸(酸化防止剤)も」という言葉。わずかに樹齢3年から4年、さらに亜硫酸無添加で、本当に素晴らしいワインが出来るのだろうか、という疑問が世界中のワイン愛好家に興味を持たせる一因だったようです。 |
New Zealand-Matakana |
このワインを頂く前に、飲んだ方の印象を聞くと、「熟女の雰囲気を持った少女」という答え。実際、98年5月、99年8月の「ヴィノテーク」誌のレポートを見ても、最も古いヴィンテージである93年が肥えた感じ、色が濃いなどの「若返り」とも言える現象が記されてあったり、このヴィンテージにして、すでに滑らかな味わいになっている点など、現代の醸造技術を超えた神秘性について触れられています。 プロヴィダンス、確かに「気持ち悪い」ワインでした。94年というヴィンテージ、フレンチオーク100%ということになのに、見事に果実と繊細なタンニンの溶け合っている様に驚きます。その柔らかな飲み口、優しいタンニンと、とても「赤い」感じのする果実味がやさしく広がって行く様は、まるでブルゴーニュの雰囲気。一緒に飲んだ女性の意見は「アルコールじゃないよと言われて飲んだら、だまされたという感じ」という意見も。ビンに少し残ったワインを帰ってから飲んでみると、果実の甘さが沸き出て、上質のブランデーのように変化していました。 |
ヴルティッチ氏ご本人の談によると、「私はアンチ亜硫酸の宣教師になるつもりはないので」ということ。「商業ベースの大規模なワイナリーであれば、亜硫酸は不可欠」とまで断言されています。 そんな醸造技術云々よりも栽培の重要性、特に「ブドウの収穫時期」について力説されていたことが印象的。「ブドウが熟してきて、そろそろ収穫となるころ、一日に2回畑の中を歩きまわって味見をし、前回味見をしたときと風味が変わったと思ったとき、それが収穫を決める時期なんです。」 まさに「良きブドウが良きワインを造る」ということを最重要視されているのではないでしょうか。 |
Germany-Mosel Saar Ruwer |
Maringer Sonnenuhr Riesling Kabinett Trocken ワインのみならず、すべての環境問題において最も敏感な国はやはりドイツかもしれません。ドイツはワイン生産の分野においても、自然に即した方法を目指す人々が増えているようです。 |
有機栽培やバイオダイナミクスといったワイン達。はたしてそれらのワインは美味しいのか?その特徴について「果実がフレッシュ」とか「天然酵母の香りがする」とか言われることもあります。また、昨今の「健康ブーム」も手伝って、「体に良い」なんてイメージが確立されたのも事実かもしれません。 88年からバイオダイナミクスを実践するドメーヌ・ルロワの当主、マダム・ルロワはこう言っています。 大地を大切するビオディナミ・ヴィニロンたち。その想いを知れば、おのずと惹かれてしまいます。 |
シャトー・ベレール、シャトー・ファルファ、ドメーヌ・ド・オー・ブルガ France-Bourgogne ドメーヌ・ルロワ、アンリ・フレデリック・ロック、コント・ラフォン France-Cotes du Rhone シャトー・ド・ボーカステル France-Val de Loire ドメーヌ・ユエ France-Savoie プリューレ・サン・クリストフ America-California フェッツァー、シェーファー |
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