ワイン会。沢山の人が集まって、ワインを飲む。これほど楽しいものは、ありません。今回はそんな素敵なワイン会についてのお話。 |
今ではホテルや酒屋さんが主催されたり、個人での集まり、いろんなワイン会が企画されています。そんなワイン会の良いところは、まず「いろんなワインが飲める」ということでしょう。多種多用の色んな個性を持ったワインだからこそ、こういった会が催される一番の理由なのでしょう。 そしてやはり、「高級ワイン」が飲めるということもありますね。会費にもよるのでしょうが、1本1万円以上する高級ワインが、何本も出てくるワイン会もあります。めったに飲めない高級ワイン、ワイン会ならではの、素晴らしいところ。飲み損しないように、最後のグラスまで、余裕を残しておきましょう(笑)。 |
ワインの持つ素晴らしい要素に、「人との出会い」をつなげてくれるという事があるように思います。class30自身、このHPを通して、多くの方と親しくさせていただくようになりましたし、当然、ワイン会でも沢山の友人が出来ました。 class30が思うワイン会、やはり人とのつながり、当然「ワインがメイン」、しかし「人がメイン」でもあって欲しいのです。 そんな事を思っているうちに、素敵なワイン会へ参加させていただくことができました。少し紹介します。 |
高橋時丸さん、1992年日本最優秀ソムリエとしてパリ国際ソムリエコンクール日本代表。名実ともに田崎信也さんと並ぶ、日本ソムリエ界の重鎮。 8月の末、東京は全日空ホテル37階「アストラル」で開かれたワイン会。毎月1回、高橋時丸ソムリエが親しい方々と開かれているそうで、昨年、HPでも紹介した「マダム・ルロワの愛からワイン」を書かれた、星谷とよみさんにお誘い頂き、ご一緒できたのです。 |
行く前より、「高橋ソムリエのワイン会」ということで、どんなワインが出るのか思い描いておりました。このもらったリストを最初に見た時の感想を正直に言うと「平凡すぎる」。この感想が、そのワイン会の中で、時を経るうちに変ってきたのです。 |
この日のサブテーマは「夏の日のワイン」。このラインナップ、何故平凡だと思ったのでしょうか。 いわゆる最近のワイン会でよくある、メインらしき赤がそこまで高価ではない「サンセール」の赤だということ。そしてすべてのワインの価格が平均していることでしょう。 ただ、飲み終えて気がついた事は、ワイン自体の味わいのバランスが大事なように、そのすべての流れにもバランスがとれているのです。 結局のところ、恥ずかしながらclass30自体、最近の会に慣れてしまい、1本何万円のワインがメインで出て、珍しいレアなワインが揃えられている状況に慣れてしまっていたのでしょう。 |
さすがに高橋ソムリエ、想像以上に偉大な方でした。お話を聞くうちに、予算内でのリストの組み方、バリエーションの付け方、ご本人の人柄でしょうか、さりげないようで、綿密な思考が感じられました。 |
1. Henkell Trocken ドイツで造られるスパークリング・ワイン。タンク内二次発酵(シャンパーニュのシャルマー方式)で造られたゼクトで、小売価格は約2000円。 何度か飲んだことのあったこのワインは廉価なスパークリングと思われがちな「タンク内二次発酵」について、高橋ソムリエは「余計な味のしない」と表現されていたことにビックリ。確かにそうです。ブドウのストレートな風味が伝わってきます。「瓶内二次発酵」至上主義ではあまりに情けないと思った一瞬。 |
2. Scharzhofberger Kabinett '96 夏の日、まだ暑さが残る日のスタートにふさわしいワイン達。 |
3. Cotes de Provence Blanc de Cote '94 ドメーヌ・オットは、プロヴァンスで最も有名なメーカーの一つ。胴のふくらんだ洒落た形のロゼワイン(バンドール)は、お馴染みだと思います。オットによる、この地方では珍しいセミヨン(ボルドーの白にブレンドされる)、ユニ・ブラン(コニャックやアルマニャックの原料として有名)といった品種を使い低温発酵により造られる白ワイン。 有名だからこそ、出てきてビックリしたこのワイン。何故にドイツの後に、このワインなのか。「こうやって比べると、酸の違いがよく分かるでしょ」という高橋ソムリエ。なるほど、そうなのか。 私自身、南仏のワインとしては、酸もキチッと感じたのですが、ドイツのものとはやはり違います。セミヨンからくるオリーブ油を思わせるオイリーな味わいと共に興味深いワインとなりました。 |
4. Lalande de Pomerol '96 5. Fetzer Barrel Select Merlot '94 何故、この2本のチョイスなのか?飲んでみてすぐに分かりました。典型的なボルドーとカリフォルニアのメルロー。ここまで、その個性の違いがはっきりと感じられるワインを選ばれるとは。 ジャン・ピエール・ムエックス。今やペトリュスをも所有するドルドーニュ河右岸で最も影響力を持つネゴシアンのラランド・ド・ポムロール。ジェネリック・ワインにして、黒果実の風味は、鉄分や燻煙のニュアンスを含み、複雑性に富んだ印象。 かたや、カリフォルニアはノースコースト地域メンドシーノ地区に位置するフェッツァー社。有機栽培ブドウで評判のワイナリー。フレンチオークとアメリカンオークを使い分ける、バレル・セレクト・シリーズから。カリフォルニアらしい熟したブドウ。甘い香りとまろやかな味わいをその名の通り樽の風味が包みこんで、とても親しみやすいワイン。 こんなワインを比較して飲んだら、フランス、カリフォルニアの良さがとても分かりやすい。さすがのチョイスです。 |
6. Sancerre Comte Lafond Grand Cuvee '96 夏の日のワインを締めくくる、爽やかな赤でした。 |
ワイン好きが増えるにつれて、その会の内容も、どんどん素晴らしいワインが出されるようになっているように感じます。とても良いことですよね。 ただ、最近思うこと、「ちょっと過熱しすぎ?」。ワイン会を主催する方の意向も様々だと思いますが、「高価なワイン」「レアなワイン」の会が多くなっているような気がします。 「ある人が持ってきたワイン」について、ああだこうだ、「メインの高価なワイン」について、ああのこうの。まるで、ワインの話しかしてはいけないような雰囲気を持った会も少なくないようです。確かにワイン好きが集まって、ワインの話で盛り上がるのが、ワイン会かもしれませんが、もっと自由に会話を楽しんだ方がいいような気がする時もあります。 そんな時に、初めて参加された方、これからワインを飲もうとしているような人が、会話について行けず、寂しそうな表情を見ると、なんだかこちらも悲しくなってしまいます。 |
今回、参加させていただいた高橋時丸ソムリエの「ワインを楽しむ会」。ある意味感銘を受けました。 まず、ご紹介したように、高橋ソムリエの選択されたワインの素晴らしさ。その流れ全体がバリエーションに富み、とてもスマートだという点です。さらに、高橋ソムリエのお人柄。当然のことながら、「このワイン、いいでしょー」なんていう、おしつけがましいところが全くありません。雑誌等で拝見していると「恐い人かなあ」なんて思っていたのですが(ごめんなさい)、本当にきさくで、優しいく、魅力的なお人柄。「こんな方が主催される会は、楽しくなるはずだ」と思いました。 そして何より感じたのは、集まっていらっしゃる方々の素晴らしいこと。皆さん、月に1回、お話を楽しみに来られているみたい。そして当然ワインを楽しんでらっしゃる。 その方が「今までいろんな会へ行ったけど、この会はいいよー」なんておっしゃっていたことが、とても印象的。その会は、ワインではなく、完全に「人」が主役であったような気がいたします。 本当に良い会に参加できて光栄でした。これから、class30としても会を開く時には、「人」が主役の会を開こうと感じた今回でした。 |
![]() |
||
今月のお題目 目次 | ||
今月のお題目 前回 | 今月のお題目 次回 |