September,1999 (2)

今月の御題目

メゾン・ド・オドゥール
 今や星の数ほどありそうなワインバーやワインレストラン。首都圏や京阪神にお住まいの皆さんは、沢山の行き付けのお店をお持ちのことでしょう。私自身はあまり知らないのですが、先日素晴らしいワインレストランへ伺うことが出来ました。
 東京の自由が丘にある「メゾン・ド・オドゥール:Maison d'Odeur」。新井順子さんという素敵な女性が、この春オープンされたレストランです。

新井順子さん
 ワインアドバイザー及びワインプランナー
ビールメーカーのサッポロのワインコーディネータとして、酒販店やNHK講座などで、活躍されていた新井さんは、渋谷区神山町にて小人数制のワイン教室を行い、ボルドー留学までの約6年間で約400人の生徒に教え、自分のより深いワインの勉強及び精進のため、平成8年9月に渡仏されました。
 平成8年より1年間、ボルドー大学にてワイン醸造学を勉強、主にワイン鑑定法、ワイン醸造時における酵母菌の影響力等研究されたということ。ボルドー大学講座終了後、平成9年11月よりボルドーを発ち、南仏アクサン・プロヴァンスへ。
 現在は、まだ日本に紹介されていない、素晴らしいドメーヌ探しに専念。今月の2月に帰国。自由が丘に5月10日にワインレストラン「メゾン・ド・オドゥール:Maison d'Odeur」をオープンされ、ワイン教室も再開されています。

メゾン・ド・オドゥール
 当然のことながら、素晴らしいワインに、素晴らしいお料理。今回はランチタイムだったのですが、牛の脳味噌を使ったお料理やメインには鶉のお肉も。フランスで修行されたという荻野シェフの、形にとらわれない感性に溢れたデッシュが味わえます。当然、ワインだけにかたよらない、新井さんの主旨が伺えるお料理。肩に力の入らないリラックスした空間がとても好印象です。
 ランチは1500円と2800円。予約で3500円、4500円のお料理がいただけるようです。当然、デイナーもどうぞ。

当日のワイン


Gosset Excellence Brut
ゴッセ・エクセレンス・ブリュット
Meursault Perrieres '92
ムルソー・ペリエール(アルベール・グリヴォー)
Stags' Leap Napa Valley Petit Syrah '87
スタッグス・リープ・ナパ・ヴァレー・プティ・シラー
Coteaux du Layon Saint-Lambert '97
コトー・デュ・レイヨン・サン・ランベール(ジョー・ピトン)

Gosset Excellence Brut
 まずは「グラスでシャンパン」をということで出して頂いたのが、なんとゴッセ。このシャンパン、とっても評判がいい。噂にたがわず、ノン・ヴィンテージのシャンパンとしては、ボディ自体がとてもまろやかで好きなタイプ。すでに抜栓されていたので、「ほんとにこれをグラスで出してるんだ」なんて思った次第。夏の日のランチに最適。あとの食事がワクワクするスタート。

Meursault Perrieres '92
 「赤を1本頂きたいので、その前にグラスで白を1杯」と言うと、「そうですね」と言われながら新井さんが出して来られたのが、このムルソー・ペリエール92。「丁度飲み頃になってると思うので」というお言葉なのですが、「そんないいワイン、グラスにしちゃ悪いよ」なんてこっちが思っている間に新しいボトルを抜栓。
 「この辺りが、新井さんのかっこよさなんだよね。」「あれが今日のここのグラスワイン」という同席下さった戸谷さんのお言葉。確かにかっこいい。さすがにグリヴォーのムルソー、素晴らしい。本当に飲み頃。

Stags' Leap Napa Valley Petit Syrah '87
 このカリフォルニア・ワイン、87年のプティ・シラー、それも私はテッキリ「スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ」のものだと思ってたら、なんと隣にある「スタッグス・リープ・ワイナリー」のもの。こんなの見たことない。
 それもそれはず、日本未輸入だそう。新井さん自ら頼んで分けてもらったという事。これぞ感激の赤ワイン。プティ・シラー、決して「小さなシラー」ではありません。

Coteaux du Layon Saint-Lambert '97
 最後にブラインドで出してくださったデザートワイン。「何か分かりました?」という新井さんの問いに、間違えたらぱずかしいので、「分からないですよ」と言ったのですが。
 実のところ、新井さんがロワールに行かれてるのは知っていたし、「ボンヌゾーやカール・ド・ショームの貴腐ワインかな」とは思ったのですが、甘味がさらっと上品、綺麗すぎる。今まで飲んだのって、もっと舌の上に甘さが残る感じがしたのですが。
 まさにコトー・デュ・レイヨン。これぞ、新井さんがロワールで直接買い付けてこられるワインでした。このジョー・ピトンという素晴らしい造り手、またこんなワインを見つけてこられる新井さんの選択眼(選択舌?)に正直、感服いたしました。


この4本についての詳細はこちらへ

サロン・ド・オドゥール
 ワインレストラン、メゾン・ド・オドゥールでは、月に一回、テーマを決めたワイン会を開かれているそうです。今後の予定を聞いてきましたので掲載しておきます。

9月26日(日):メドック格付け5大シャトー
10月24日(日):ローヌの王様、ギガルのコート・ロティ
11月21日(日):ロマネ・コンティ 1969年
12月19日(日):今世紀最高の年、1961年の比較試飲

と、なんとまあワクワクするワイン・サロン。興味のある方はメゾン・ド・オドゥール(03-3724-3631)まで。

戸谷昌弘さん
 新井順子さんのレストランで食事するにあたり、ご一緒していただいたのが、リカーショップ「藤小西」戸谷昌弘さん。今年の1月、ブルータスのワイン特集に掲載されていたので、ご存知の方も多いかもしれません。夏に中野坂上にあるショップにお伺いし、熱意あるお話を沢山聞かせていただきました。
 今回、「新井さんのレストランへ行こうと思うのですがご紹介いだだけませんか?」というお願いをしたところ、快く予約していただき、同席までしてくださいました。
 実は、藤小西さんでは、新井さんが直接買い付けてこられたワインを「新井順子セレクション」として販売されています。この度頂いたコトー・デュ・レイヨンなども、当然扱ってらっしゃいます。

これからのワインショップ、レストラン

 この度、改めて戸谷さんにお会いし、新井さんとも、数々のお話を聞かせて頂いて感じたことは、本当にお二人ともワインに真剣に真面目に取り組んでいらっしゃるという事。それは多分、自分自身のため、いやそれ以上にお客様のためという感覚が伝わってきました。
 新井さんは当然、現地へ足を運び、良質のワインを探して来られる。無名のワインを売りこむことが、銘柄重視の日本において、どれだけ難しいことか十分ご存知の上だと思います。しかしながら、未だ日本に紹介されていない美味しいワインは沢山あるはず。中間マージンを削除し、コスト・パフォーマンスの高いワインを日本に届けようとする姿勢が、ワインリストからも伺えます。
 戸谷さんは当然有り余る経験から十分感じとっておられ、新井さんのワインも扱い、また他のワインにおいても、その品質、ポテンシャル、適正価格を熟知されて、お客様に提供されているように思います。

 今の日本経済同様、ワイン・バブルが弾け、これから戦国時代になるであろうこの業界で、やはり感性溢れる方々は、すでにその方向性を見極めていらっしゃる。いや、それ以前に「」の問題なのでしょうか。
 「藤小西」さんの信条は「誠実と感謝」。戸谷さんに初めて会った時、その言葉が頭に浮かびました。ワインとお客様に対する戸谷さんの「誠実と感謝」がいつも伝わってきます。そんなワイン屋さん、そしてレストランです。
魅力的なお店には魅力的な人がいる」そんなことを感じた今回でした。大変勉強になりました。大切な時間をお付き合い頂き、本当にありがとうございました。

メゾン・ド・オドゥール
東京都目黒区自由が丘2-8-21
03-3724-3631
11:30〜14:30 18:00〜23:00
水曜定休日

リカーショップ「藤小西」
東京都中野区中央2-2-9
03-3365-2244
10:00〜20:00
木曜定休日

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