June,1999

今月の御題目

カリフォルニアワイン
 今月は、人気のカリフォルニアワインの特集。アメリカで造られるワインの90%はカリフォルニアで生産されています。何故、カリフォルニアで出来るワインは元気で美味しいのか?ちょっとまとめてみます。

カリフォルニアの気候
 ワインの味は、その気候にとても左右される事はご承知のとおり。その中でも降水量は、その出来不出来に大いに作用します。
 カリフォルニア、ナパの年間平均降水量は、約60mm。フランスのボルドーが約450mmということですから、いかに少ないかが分かります。とくに収穫期の降雨はその品質に影響を与えますが、秋に雨の少ないカリフォルニアでは、ブドウが十分に熟してから収穫出来るため、完熟したブドウからワインが造られる訳です。

ラベルの表示

 アメリカのワインは、次の3つのスタイルに分ける事が出来ます。

Generic Wine ジェネリック・ワイン
ヨーロッパの有名ワイン産地の名前がついた、日常テーブルワイン。(バーガンディー、シャブリ等)
Varietal Wine ヴァラエタル・ワイン
ラベルにブドウ品種名がついたヨーロッパ系の高級ワイン。(カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ等)
Proprietary Wine プロプライアタリー・ワイン
ワイナリーが独自に生み出した商標のワイン。(オーパス・ワン、ドミナス、ルビコン等)

 この中でも、ブドウ品種名のついたヴァラエタル・ワインは、そのワインそのもののタイプをラベルから知ることが出来ます。これは消費者にとって、大変大切な事で、その分かりやすい表示がアメリカのワインの人気を高めた要因の一つでしょう。現在、アメリカ産ヴァラエタル・ワインは、全体の75%以上をラベルに表示されている品種を使うことが義務づけられています(75パーセントルール、オレゴンなど特定の州ではもっと高い最低パーセントを定めている所もあります)。
 写真はカリフォルニアの中でも歴史の古いワイナリー、リッジ社のモンテ・ベッロ。リッジ社のラベルは、とてもシンプルで分かりやすいもの。下方にはその年のブレンド比率まで、ちゃんと記されています。

 また、プロプライアタリー・ワインの中でも、高級ブレンド・ワイン・タイプは、メリタージュ(Merit:利点とVintage:収穫年を合わせた造語)とも呼ばれます。主に生産量が少なく、希少性の高いワインは、人気の的。いわゆる「カリフォルニア・スーパー・プレミアム・ワイン」ですね。



左から、ハーラン、マヤ、アラーホ、グレース・ファミリー。これらはカベルネ・ブレンド。そしてブルゴーニュ・スタイルで有名な、ウィリアム・セリエム、ロキオリ、キスラー。究極のスーパー・プレミアム達。

ロバート・モンダヴィ・ワイナリー

 1966年、ナパ・ヴァレーに設立されたカリフォルニアのリーダー的な存在が、ロバート・モンダヴィ。”ワイン造りは科学であると同時に芸術である”がロバート・モンダヴィの信念。このワイナリーは、常に革新的。カリフォルニアワインにおける数々の斬新な提案をし、それが定着しました。

フュメ・ブラン
カリフォルニアでよく見られるフュメ・ブランというブドウ品種。これ、もともと1970年代にロバート・モンダヴィが売り出したワインの商品名。フュメ・ブランというのは、ソーヴィニヨン・ブランのこと。「フュメ」はフランス、ロワールの有名な白ワイン「プイィ・フュメ」からとったもので、このモンダヴィが発売したワインが大人気となり、フュメ・ブランという名前が定着したということです。

フランジ・ボトル
カリフォルニアのワインで、キャップシールのないワインを多く見かけるようになりました。従来のキャップシールには鉛が使われていました。鉛は人体に有害で自然界では生分解されないという理由から、アメリカでは反対意見が多かった。その結果生まれたのがフランジ・ボトル。キャップシールの替わりに帯状のシールを使い、瓶からすけてコルクの模様が見えます。
このフランジ・ボトルをいち早く採用したのも、モバート・モンダヴィ。普通はこういった伝統を覆す挑戦は、最も廉価なシリーズから採用するのが常套手段でしょうが、ここは最上級のリザーブにも使用。この地方の先駆者であるモンダヴィがこうした方法をとった事によって「フランジ・ボトル=安価なワイン」というイメージが払拭されたようです。



左よりロバート・モンダヴィ・カベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブ。そして中がワイナリー入口。ラベルにはこの風景が描写されています。右は畑を望むテラス。こんな素晴らしい所で、ワインの試飲が出来るそうです。

American Viticultural Areas in California

 アメリカには原産地統制呼称のような規定はありませんが、政府公認ぶどう栽培区画(AVA : American Viticultural Areas)という区画を定めています。カリフォルニアには58の郡があり、大きく次の5つの地域に分けられています。

ノース・コースト(North Coast)AVA大産地
セントラル・コースト(Central Coast)AVA大産地
セントラル・ヴァレー(Central Valley)AVA大産地
サウス・コースト(South Coast)AVA大産地
シエラ・ネヴァダ山麓(Sierra Foothills)AVA大産地

 5つの地域の中に郡(County)があり、その郡の中にもAVAが存在します。(AVAのない郡もあります)

カリフォルニアのAVAの一覧は、こちらへ

 5つの地域の中で重要なのがノース・コーストセントラル・コーストです。
 ノース・コーストで有名なのが、お馴染みのナパソノマ。この地区では、温暖な気候を生かした素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨン、またナパのカーネロスは、ピノ・ノワールの産地としても知られています。
 セントラル・コーストでは、11〜16の沿岸部の地区が重要で、海流のため冷涼な気象条件の下、ピノ・ノワールやシャルドネが栽培され、人気のワインが多く存在します。

1976年米仏テイスティング対決
 カリフォルニアワインの実力を世界に轟かせることとなったのが、1976年にパリで行われた米仏テイスティング対決。ボルドーやブルゴーニュの有名銘柄、そうシャトー・ムートンやモンラッシェを相手に見事第1位となった赤ワインが、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ・カベルネ・ソーヴィニヨン、白ワインがシャトー・モンテリーナ・シャルドネだったようです。
 当時、安ワインという認識しかされていなかったカリフォルニア。審査員は名の知れたワイン関係者(AOC委員会委員長、ワイナリー経営者、3ツ星レストランオーナー等々)。当然フランスの圧勝と思われていた。しかしながら、結果は。。。以後、数々のリターン・マッチ(?)が行われ、数々の議論を呼びました。
 カリフォルニアが手本とし目標としたフランスワイン。今では美味しいという評判も定着しましたが、多くの造り手が研究をし努力をしてきた結果なのでしょう。そしてフランスという偉大なる指標、そしてライバルがいたことは、その品質向上に一役かっていることは間違いないようです。
(写真上はスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ、下は1800年代にフランスから石を運んで造られたシャトー・モンテリーナ。)

消費者にとってやさしいカリフォルニア
 カリフォルニアのワインは、果実味たっぷりで、香りの豊かなワインが多いように思います。フランスに比べると、当たり外れも少なく、味わいもはっきりしているので、ワインをこれから飲む方にとっても最適な地域だと言えるでしょう。
 これは、伝統を踏襲したワイン造りを行うフランスに対して、消費者の嗜好を重んじ、新しい醸造技術(カリフォルニア大学デービス校は有名)を積極的に取り入れた成果なのでしょう。とにもかくに美味しいカリフォルニアです。

このページの写真は「ワイン・セラー・勝田」さんのご協力により掲載させて頂きました。ご厚意感謝致します。


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