April,1999

今月の御題目

class 30 お気に入りの造り手
ロベール・ジャイエ・ジル

 ブルゴーニュ・ワイン。ピノ・ノワールというブドウ品種からなる、その優美なワインは、いつの時代でも世界のワイン愛好家のお気に入り。
 しかしながら、その造り手の多さに選ぶ側にとっては、厄介なワインでもあります。
 前回のブルゴーニュ特集に続き、今回はブルゴーニュで最もお気に入りの造り手、ロベール・ジャイエ・ジルのワインを紹介します。

ロベール・ジャイエ・ジル
 以前より、お薦めしているロベール・ジャイエ・ジル。マニイ・レ・ヴィリエ村に本拠を構えるドメーヌです。ブルゴーニュの神様とまで言われるアンリ・ジャイエの従兄弟にあたるロベール・ジャイエは、1948年、ロマネ・コンティの元醸造長だった故アンドレ・ノブレの弟子としてワイン造りを始めました。
 妻のジル家が代々育ててきたオート・コートのブドウ畑と、ジャイエ家のエシェゾー(特級)とニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ダモード(1級)を合わせて、合計11haの畑を所有しています。
 彼が造るほどんどのワインには、アリエ産の新樽が用いられるという贅沢さ。多くの評論家、愛好家からも絶大な支持を受けています。

以下、ジャイエ・ジルの造るワインの銘柄です。

エシェゾー -特級-
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ダモード -1級-
ニュイ・サン・ジョルジュ・オー・ポワレ -1級-
コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ
オート・コート・ド・ニュイ
オート・コート・ド・ニュイ(ブラン)
オート・コート・ド・ボーヌ
オート・コート・ド・ボーヌ(ブラン)
ブルゴーニュ・アリゴテ
ブルゴーニュ・パス・トゥ・グラン

エシェゾー
 最近、ある酒屋さんの情報によると、あのロバート・パーカー氏が、ジャイエ・ジルの89年エシェゾーに100点を付けたようです。


Echezeaux
エシェゾー

ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)
('89 \22,000)

 ジャイエ・ジルは、ヴォーヌ・ロマネのエシェゾーに0.5haの畑を所有しています。その畑は、グラン・エシェゾーのすぐ斜面の上、「Echezeaux du Dessus」という最上の区画。

 まず抜栓後、ボトルの口から香りを嗅いでみると。。。これだけで凄い。芳醇で豊かな果実味がすでに感じられます。その後、30分後に、グラスへ。

 ジャイエ・ジルのワインに共通する事を、R.パーカー氏の言葉を借りると、
赤は、どれも瞠目するほどプラムやイチゴの香りがし、オークの新樽のいぶしたようなトースト香、ヴァニラ香も強い

 そうなんです、やはり素晴らしいと思うのは、その「甘美な香り」。イチゴのような「果実」が連想されます。これはエシェゾーでなくても、コート・ド・ニュイ・ヴィラージュオート・コート・ド・ニュイでさえそう思うのです。価格は他のドメーヌのワインより高価で、5000円から7000円位しますが、品質はプルミエ・クリュにも匹敵するワインだと思います。

 このエシェゾーも、やはり熟したイチゴ、チェリーやプラムといった感じで、華やかな中にも旨味を感じさせます。やや乾いたタンニンと酸味が調和を保ち、最初から最後までその色気を感じさせてくれました。

またまた、ヴォーヌ・ロマネ・マップ。
ジャイエ・ジルが持つ、「Echezeaux du Dessus」という区画は、「Echezeaux」という文字の「Ech]の辺りです。


ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ダモード

Nuits-St-Georges Les Damodes
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ダモード

ニュイ・サン・ジョルジュ 赤 (PN,Pb,PL)
('95 \15,000)

 先日、幸運な事に初めてこのワインを見つける事が出来ました。ニュイ・サン・ジョルジュ村のプルミエ・クリュ、レ・ダモード。この畑は、ニュイ・サン・ジョルジュでも、最もヴォーヌ・ロマネに近い場所。上記の地図で言えば、「ラ・ターシュ」の南側の点線(村の境界線)の左の場所。

 このワインについては、まだ飲んだ事がないので、R.パーカー氏のコメントを今一度、お借りします。

 比較的オフ・ヴィンテージと言われる1987年の出来について。
「この年のジャイエの傑作のひとつは、無類のニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ダモード。あいにく2樽(つまり50ケース)しかつくられず、その多くはジャイエの熱烈な愛好者、パリの名レストラン・タイユヴァンの所有者、ジャン・クロード・ヴリナに割り当てられた。レ・ダモードは、はじけんばかりに芳醇で、深遠かつ濃密にして幅広の味わいを持ち、黒系の果実、花、異国風のスパイスのアロマを放つ。今飲んでもおかしくないが、10年は楽に保つだろう。その舌触りと特質は、ジャイエ一族中の別系でヴォーヌ・ロマネの名匠、アンリ・ジャイエ作になるいくつかのワインを思い起こさせる。」

(以上、参考文献 R.パーカー 「ブルゴーニュ」)


造り手の手のひら

 あるワイン会で、主宰者の方よりいい話を聞きました。

インポーター(輸入業者)が、その造り手と会って、どこに注意するか。それは、手のひらだそうです。手のひらが紫色に染まってる。すごく無骨で言えばきたない。そんな人は、得てして昼間に電話をしてもつかまらない。どうしてかって?畑に出てるから。夕方になったら、ようやく連絡がとれる。畑やブドウを愛してる証拠です。

ロベール・ジャイエ曰く、「今まで一度もバカンスをとった事がない」。多分、彼もそんな人なのでしょう。

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