January,1999 (2)

今月の御題目

カレラ ジェンセン、セレック、ミルズ、リード

JENSEN
SELLECK
MILLS
REED
 今月の御題目12月でも紹介した、カレラ。カリフォルニアでブルゴーニュ・スタイルのワイン(ピノ・ノワール、シャルドネ)を造る、最も注目される造り手です。
 今回は、カレラのピノ・ノワール、シングル・ヴィンヤード(単一畑)4本を一気にテイスティング。なかなか手に入らないワインです。
 「リード」だけが94年、あとの3本が95年です。すべて水平テイスティングという訳にはいきませんでしたが、とても面白い会となりました。ちなみに、「ジェンセン」「セレック」が8400円、「ミルズ」「リード」が8000円。

カリフォルニア・ワインのテロワール




 テロワール:畑のぶどうが育つ自然環境要因の総称。
 よく、フランスのブルゴーニュ地方で使われる言葉です。

 ぶどうは、その土地の個性を最も反映させる作物という事を言われます。テロワールという言葉は、とても、あいまいですが、その土地の条件を言い表すのには、便利な言葉です。
 上の中央の地図は、マウント・ハーランにある、カレラの畑。(ジェンセン、セレック、ミルズ、リード、そしてシャルドネ、ヴィオニエには、すべてこの裏ラベルが付いています。)ちょっと見にくいと思いますので、簡単にまとめると、


ジェンセン  一番右側にある最も広い14エーカーの畑。初ヴィンテージは75年。オーナーのジョシュ・ジェンセンが亡き父に捧げたとされるワイン。
セレック  インディアン・クリークの北側に位置する5エーカーの畑。初ヴィンテージ75年。人気は、ジェンセンに次いで二番目とか。
ミルズ  地図中央の二番目に広い12エーカーの畑。初ヴィンテージ84年。赤の中では、ここだけ後から作られたようです。
リード  インディアン・クリークをはさんで、セレックの南側、5エーカーの畑。初ヴィンテージ75年。
 「セレック」「ミルズ」「リード」は、1974年マウント・ハーランにワイナリーを興した時の協力者の名前だそうです。そういう人達の名前を付けるあたりが、ジョシュ・ジェンセンという人物の人柄を窺わせます。

シャルドネ  ミルズの南側、6エーカーの畑。初ヴィンテージ84年。
ヴィオニエ  シャルドネの東、5エーカーの畑。初ヴィンテージ83年。89年に栽培面積を増やしたようです。

 赤ワインの4本はすべてピノ・ノワール。ロマネ・コンティの畑から持ち込まれたと言われるクローンを接ぎ木なしで栽培しています。やはり、この4本を飲んで面白かったことは、ちゃんと「カリフォルニア・ワインにもテロワールがある」という事。以下、それぞれの印象を飲んだ順番にレポートします。

(それぞれのワインの最後に、堀賢一氏の「ワインの自由」に掲載されているコメントを書かせて頂きました。)




カレラ・リード
 この中で、唯一94年だったのが、リード。ヴィンテージが違うので、一番最初に飲んでみました。
 開けた瞬間から、濃密な香り、カリフォルニアらしい(?)甘いバニラ香を感じました。チェリーやいちごのような香り、味わいもしっかり旨味があります。
 この4本の中で、個人的には分かりやすくて好みのワイン。最初から最後まで元気なヴォリュームのあるワインでした。
 この1本だけ、他のものとイメージが違っていたので、「95年より94年の方が、ぶどうの出来自体がよかったのかなあ。だから樽などのニュアンスをわざと強めに付けているのかな。」と勝手に推測。
 堀氏によると、「濃密で、果実味が凝縮」という事。やっぱり、これがこのワインの個性なのでしょうか。

カレラ・ミルズ
 この中で、一番おとなしい印象だったのがミルズ。最初は香りが出てきませんでした。ただ、おとなしかっただけに、きれいなミネラル分を感じ、繊細なワイン。「おしとやかな女性」というイメージ。ここだけ樹齢が若いからでしょうか。
 中には、「このワインのように上品な味が好きだ」という人も。
 堀氏によれば、「色調が薄めでエレガントなスタイル」。今回、暗めのショット・バーで飲んだので、色調の違いはあまり分かりませんでした。

カレラ・セレック
 このセレックは気難しい。ある人は「頑固じじい」と言ってました(ちょっと表現が悪い)。自分流に言うと「洗練された芯のしっかりした女性」です。
 抜栓後、薄く感じた香りも徐々に変わってきます。ただ、あくまでヴォリュームのあるというものではなく、「漂わせる」といった感じ。香りはミルズに近いようにも思ったのですが、味わいは、細やかなタンニンが主張し、飲み手が試されているよう。
 堀氏によると、「ミネラル分が多く、複雑」という事。んー、複雑です。

カレラ・ジェンセン
 何故、このジェンセンが人気があるか、飲んでみて、よく分かりました。やはりブルゴーニュっぽい深い香りが印象的です。「いいぶどうなんだろうな」という事を痛感させられます。
 ぶどう自体の味が、このワインに表現され、酸味と渋味のバランスが絶妙です。私の思ういいワインは、しっかりしながら、全体がまとまっているので、必ずどこかに「優しさ」を感じさせるようなワイン。このジェンセン、そんなワインです。
 堀氏のコメント、「常に色が濃く、タニックでいちごのような香り」。納得です。


カレラ・スペシャル・ブレンド
 ついでに、ここだけのスペシャル・ワイン。この4本をすべて混ぜたワインを作ってみました。
 美味しい、美味しい。すべてを飲んだ後に作ったので、それぞれの要素が感じられ、非常に濃厚で、甘味、酸味、渋味が三位一体となったワイン。リードの元気の良さ、ミルズの繊細さ、セレックの深さ、ジェンセンの豊かさ。本当に美味しい。
 オ・ボン・クリマは、4つの単一畑のいいところを集めたという「イザベル」をリリースしています。カレラも出したら絶対いいワインになるような気がします。ジョシュ・ジェンセンさん、是非出して下さい。

カリフォルニアのワイン
 今回、面白かったのは、やはりテロワールというものを実感できた事。なかなかこれだけのワインは揃いませんし、もしフランスのブルゴーニュのワインで、畑ごとの違いをという事になれば、もっと高価で入手が大変になるでしょう。
 それと、やっぱりカリフォルニアのワインは全体的に果実味がしっかりしているので、常に美味しく感じられる事。これだけ若いのに、バランスがいいんです。ブルゴーニュだったら、酸味が強かったり、中にはすごく良くて、中には崩れてる状態の物もあるのでは?すっかりカリフォルニア好きになってしまいました。皆さんも是非カリフォルニア飲んでみて下さい。

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