November,1998 (2)

今月の御題目

ボルドーの貴婦人、シャトー・マルゴー

Ch.Margaux
シャトー・マルゴー

マルゴー (CS75,M20,CF5)
('59 \180,000)

 アメリカの文豪、ヘミングウェーも愛したワイン。彼の孫娘の名前は”マルゴー”。一般的に女性的と言われ、「ボルドーの貴婦人」の名を欲しいままにしています。
 第1級の中でも、ラフィットに次ぎ2位に格付けされ、ブドウの栽培面積も、ラフィット100haに次いで、87haと2番目に広い。フランスでもいい女性は一歩さがって歩くのです?

「失楽園」の効果
 特に今年、話題にのぼったこのワイン。失楽園の「愛する人と最後に飲むワイン」として一躍有名になりました。
 テレビ・ドラマのヒロインを演じた川島なおみさんは、あっちこっちで「ワイン、ワイン」って言うし、ちょっと食傷気味になります。
 当然、映画や小説の中で、名脇役を務める小道具として、ワインは絶大な効果があるように思いますが、余りに露出してしまいました。
おかげで、一気にこのワインの価格が高騰したと感じるのは、私だけでしょうか。

女性の造るワイン

 まあ、話を本題に戻して。
 シャトー・マルゴーは、現在メンツェロープス家が所有し、コリンヌという女性の愛情を受け、造られています。
 マルゴーの歴史は、1855年の格付け以来、様々な所有者に転売され、1900年代中期に有力なネゴシアンのジネステ社の所有になりました。その後も1960年代後半には、ジネステ社が財政危機に陥りいいワインが造れない状態だったようです。
 そんな、失墜したシャトーを救ったのがメンツェロープス家(1977年に買収)。多大な投資を惜しまず、醸造コンサルタントの草分け、エミール・ペイノー氏を起用。厳しい品質管理のもと、ファーストにそぐわない物は、セカンド・ワイン(パヴィヨン・ルージュ・ド・シャトー・マルゴー)へという方法を徹底し、見事マルゴーを甦らせました。

 シャトー・マルゴーの他にも、
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド(マダム・ド・ランクザン)や、ルロワ(マダム・ラルー・ビーズ・ルロワ)など、女性が愛情を注ぐワインには、優しさや繊細さ、そして堅実な造りと言われます。

シャトー・マルゴー1959年

 1959年、今世紀後半の中で、61、70、82、89、90年などと並び、世紀のヴィンテージ。そんな年のシャトー・マルゴーは開ける前からハラハラ、ドキドキ。もし状態が悪かったら、もう立ち直れません。
 でも安心しました。ボルドーのトップクラスのワインは、やはり素晴らしい。約40年という歳月を経て、さらに円熟した高貴な女性を感じます。
 昭和34年、まだ定温コンテナも発達していない頃、そしてフランスの生産者達にとってヨーロッパが市場だった頃、「フィネス」という言葉がいかに大切だったかが理解できます。

 これ以上は未熟な私にはよく分かりません。だって、このワイン、今の相場で18万円。1杯が約2万円。あまりにいい女は、理解に苦しみます。


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class30 "The Wine"