イタリアは生産量で、フランスと毎年世界第一位、二位を争うワイン大国。約80%は、国内で消費されるにもかかわらず、輸出量でも一位、輸出先は80ヶ国にもなります。近年では、インターナショナルな市場も狙った高品質なワインも次々と登場し、市場を賑わしています。 イタリアワインに接しながらclass30が感じていた事があります。それは、ワインから感じるイメージが、フランスに喩えれば「トスカーナ州はボルドー」「ピエモンテ州はブルゴーニュ」に似ているな、ということ。 前編はイタリア中央部トスカーナ州。トスカーナと言えば、真っ先に思いつくのがキャンティ。世界中の人々に愛飲されてきたキャンティを中心に、そして話題の「スーパー・タスカン」の誕生についてレポートします。 |
ここで最も有名なワインといえばキャンティ。その生産量は約10万キロリットルと、イタリア全土のDOCG、DOCワインの中でも最大の生産量を誇り、ボルドーワインと同様、その安定した供給量により、古くから世界中にも輸出されています。日本においても、最も名の通ったイタリアワインでしょう。 生産量が多い事からも分かるようにキャンティの生産地域は、かなり広範で、それが上記の地図です。フィレンツェの郊外からトスカーナ州内の5県にまたがり、栽培地域は7つに分かれています。ブドウの85%以上がその地域内で収穫され、醸造がその地域あるいは指定された隣接地域で行われた場合、下記の7つの地理的表示をラベルに加える事ができます。 |
モンタルバーノ | Montalbano |
ルフィーナ | Ruffina |
コッリ・フィオレンティーニ | Colli Fiorentini |
コッリ・セネージ | Colli Senesi |
コッリ・アレティーニ | Colli Aretini |
コッリーネ・ピサーネ | Colline Pisane |
モンテスペルトーリ | Montespertoli |
![]() (左は、キャンティ・クラシコの生産者が作っている協会のマーク。ボトルネックに添付されています。) |
キャンティの歴史は古く700年代まで遡ることができると言われます。16世紀には多くの醸造家がいたと言いますが、今日の名声を決定づけたのが、後世イタリア首相となるベッティーノ・リカソリ男爵(1809〜1880)。19世紀半ば、男爵はキャンティ造りにおけるブドウ品種の配合を定め、古代ローマ以来の醸造法にならうゴヴェルノ法にて、さわやかで口当たりのよいキャンティを生み出しました。この時に定められたサンジョヴェーゼ種を主体とし、白ブドウであるトレッビアーノ種、マルヴァジア種も少量ブレンドする白黒ブドウ混醸という品種構成が、約1世紀を経て1967年のキャンティDOC規定(注1)の誕生に際して法規定に組み込まれ、今日までこの地域に波紋をよんでいます。 (注1:サンジョヴェーゼ75〜90%、カナイオーロ5〜10%、トレッビアーノ、マルヴァジア2〜5%) |
キャンティと言えばサンジョヴェーゼ種。しかし近年まではサンジョヴェーゼ単一品種での醸造は許されなかったため、サンジョヴェーゼ100%で造るVdTが出現。さらに多品種とのブレンドという意味において、凡庸な品種とのブレンドよりもカベルネ・ソーヴィニオン他、高級な外来品種とのブレンドが行われるようになりました。これは早くからキャンティを海外に輸出しており、品質を重んじるマーケットの意味を知っていたこの地区の生産者としては当たり前だったのかもしれません。
こうした国際市場を意識するモダンなワイン造りに対応し、キャンティに関する法律も改正され、今日ではサンジョヴェーゼが75〜100%、またカベルネ・ソーヴィニオンやメルローといった外来品種も10%まで加えられることが許されています。 (上ラベルはサンジョヴェーゼ100%で造られるスーパーVdTの先駆け、レ・ペルゴル・トルテ。下ラベルは"サンマルコ"や"ヴィーニャ・ダルチェオ"というスーパー・タスカンで人気の高いカステッロ・ディ・ランポーラのキアンティ・クラッシコ。このキャンティもサンジョヴェーゼ95%、カベルネ・ソーヴィニオン5%という品種構成。2本の詳細はこちらへ) |
このレポートを書いている間にタイミングよく発刊されたのが「ワイナート」誌。毎号先端のワイン情報とお洒落な写真やレイアウトは、多くのワインファンを惹きつけていると思います。この「特集モダン・バローロ」と銘打たれたの最新号にも、今、気になるバローロの生産者情報が詰め込まれています。 「バローロ・ボーイズ」とは、マルク・デ・グラツィアという貿易商の手掛けるバローロ生産者の俗称で、彼は素晴らしい畑を持つ小規模生産者のワインを海外に紹介するだけでなく、コンサルタント的な役割も果たし、バローロを改革してきたと言います。ピエモンテにおいての変革が伝えられる一冊です。読んでみて下さい。 |
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