前編は「良い葡萄の条件」などについてレポートしました。今回はヴィンテージ・チャート、そして天候、気象条件に恵まれなかったオフ・ヴィンテージについて考えたいと思います。 |
そのヴィンテージ・チャート、消費者にとっては、その年のワインの「目安」としてとても重宝するもの。ワイン産地の天候や出来上がったワインの評価を含めた包括的なチャート、そしてR.パーカー氏やS.タンザー氏らの各ワイナリー、各銘柄ごとのヴィンテージ評価は、ボトルの中に封じ込められたワインの品質をある程度、把握できるものです。当然購入の際には参照する価値があるでしょう。 ・ヴィンテージを気にすべきワインであるかどうか? チャートはあくまで一つの指標。そのワインの本質を伝えるものではないと思います。良いヴィンテージのワインのはずなのに期待にそわなかった、オフ・ヴィンテージなのに素晴らしい味わいだった、という事は頻繁に起こります。そんなところがワインの魅力でもあるわけですが。 |
前編で記したように、様々な気象要因そして災害等がその年のワインの品質に影響しますが、収穫されたブドウをベストのワインに仕立てるのが醸造家の役目。9月の「お題目」で紹介した厳しい選抜による「セカンド・ワイン」の存在も秀逸なワインを目指す生産者の意気込みでしょう。 各作柄に対する醸造家を考えて見ると、素晴らしいブドウが収穫された年以上に、不作年の方がその役割は大きいように思います。これは人の経験値、そしてばらつきのあるブドウに施す醸造技術にも関わるからです。 ■補糖、補酸■
しかしながら、堀賢一氏は「ワインの自由」にて、1995年や1996年の良作年にもこういった技術を用い、人為的にブドウ果汁を濃縮したシャトーも現われたことに関し、こう述べられています。 また、ヒュー・ジョンソン氏は、あるコラムでボルドーのヴィンテージについて、こう書かれていました。 30年以上前の1956、1963、1965、1968のような悲惨なヴィンテージは、醸造技術の進化により、もうこれからは有り得ないというお話も聞いた事がありますが、それは喜ばしいことである反面、なんだか空しい気がします。すべてのヴィンテージが1961年(注3)だったら良いと思いますか? (注1 : イタリア、カリフォルニア、オーストラリアなどの十分な糖度が得られる国々では、補糖は禁止されています。またボルドーやブルゴーニュでは、補糖と補酸の同時併用は禁止。) |
ただ、当のワインを生産している人々はどう考えているのでしょう?彼等の気持ちが伝わる文章があるので紹介します。 「良いヴィンテージの場合は、我々はブドウがワインになりたい方向にただ手をさしのべて手助けをするだけでよい。悪いヴィンテージの場合には、最高の技術と愛情でブドウが本来望んでいる方向へワインを導く必要がある。だから良い造り手、そうでない造り手の違いは、不作の年にこそ現われるのだ。」 「オフ・ヴィンテージ」の年にも、生産者は一生懸命ワインを造っています。天候や気象条件に恵まれなかった年こそ、数々の問題に直面し、ワインに愛情を注ぎ、例年以上の努力によりワインを造りあげるのでしょう。そんなワイン生産者の想いには、ただ頭が下がると共に「オフ・ヴィンテージ」もワインの歴史の一部であるという事を痛感させられます。 |
あなたの生まれ年は何年ですか?「バースディ・ヴィンテージ」そうワインの良いところは、ご自身が生まれた年のワインを味わえるという楽しみがあります。上記のように言いながらも、いつも気になるヴィンテージ・チャート。ご自分の生まれ年をチャートで見ても、見当たらない。そんな悲しい想いをした事はありませんか? 「バッド・ヴィンテージ」は自分の生まれ年を慈しむ言葉。そういったワインを中心に、メンバー同士、楽しく友情を深められ、新しい出会いがあればよいなと思います。皆様の入会をお待ちしています。 (BVCは、ワインを愛し「バッド・ヴィンテージ」と評されるヴィンテージにお生まれの方は、どなたでもご参加頂けます。「当たり年」「偉大な年」にお生まれの方は、「正会員」とはなれませんが、バッドなヴィンテージのワインを愛でる優しい気持ちをお持ちの方は「準会員」として参加出来ます。) |
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