ワインというお酒は多くの場合、使用されたぶどうが収穫された年:ヴィンテージがラベルに記載してあります。その年々の天候などによる葡萄の出来具合によって、同じ銘柄のワインであっても、毎年その個性が微妙に異なってきます。 良いブドウが出来た年を「ヴィンテージ・イヤー」とか「グレート・ヴィンテージ」と呼び、それに対してあまり出来の良くない年を「オフ・ヴィンテージ」と言います。前編では、良いブドウが出来る条件などについて。 |
ワインに、生産された年号が表記される理由として、お酒の中でも最も純粋な農作物に近いという点が挙げられると思います。ワインを作り上げるブドウ(セパージュ)、そしてブドウを育む畑(テロワール)が持つ特性が十分に発揮できるかどうか?その年の作柄に影響を与えるのは、自然環境です。そのヴィンテージの個性には次の3つの要因が大きく関わっています。 ■気温■ この気温条件に関して学術的に整理、ワイン産地の気候区分を示したのが、カリフォルニア大学のアメリン&ウィンクラー教授。ブドウ生育期間中(4月から10月)の有効積算温度(10℃を越す温度を足し合わせる)にて世界のワイン産地を5区域に分類し、気候分類表をまとめ、ワイン産地の研究上、大きな役割を果たしています。 |
区分 | 有効積算温度 | 該当地域 |
T | 2500以下 (1389以下) |
ドイツ(ライン、モーゼル) フランス(シャンパーニュ、ブルゴーニュ北部) |
U | 2501〜3000 (1390〜1667) |
フランス(ボルドー) イタリア(ピエモンテ北部、アルト・アディジェ) アメリカ(ナパ、ソノマ、サンタ・バーバラ) |
V | 3001〜3500 (1668〜1944) |
フランス(コート・デュ・ローヌ北部) イタリア(ロンバルディア、ヴェネト) アメリカ(サン・ベニート) |
W | 3501〜4000 (1945〜2222) |
イタリア(南部) スペイン(中部) アルゼンチン(メンドーサ) |
X | 4001以上 (2223以上) |
イタリア(シチーリア) 南アフリカ |
■降水量■ ■日照量■ 気温、降水量、日照量はそれぞれ関連しているわけですが、特に萌芽期、開花期、そして成熟期、収穫期の気象条件はそのヴィンテージに大きく影響を与えます。 |
ブドウは繊細な果物で、健康な果実を得るまでに、生産者は多くの困難を乗り越えなければなりません。 ■病害■ ■フィロキセラ■ ■遅霜、花ぶるい、雹■ (注1 : 「灰色カビ病」の原因であるボトリティス・シネレア:Botrytis Cinerea
は、完熟したブドウについた場合、貴腐となります。詳しくはこちらで。) |
上記のように、その年のワインの品質は気象条件よって左右されます。ワインとなりうる数多くのブドウ品種は、それぞれの品種特性に適合する地域に植えられていますが、同じ地域に異なった品種が栽培されている場合、その品種ごとのヴィンテージ差が生じる事があります。 この顕著な例がフランスのボルドー地方です。この地方では、カベルネ・ソーヴィニオン、メルロー、カベルネ・フランが多く栽培され、これらの品種をブレンドすることにより、ワインに複雑みを持たせています。左岸のメドック地区ではカベルネ・ソーヴィニオンを主体としたワインが生産され、右岸のポムロール地区、サンテミリオン地区はメルロー、カベルネ・フランが主体となります。 メルローとカベルネ・フランは、萌芽、開花、そして成熟もカベルネ・ソーヴィニオンに比べ、約一週間早い品種です。これがヴィンテージの作柄に影響したのが下記の例です。
■1964年■ ボルドーでは、ブドウ品種を単独で使わず、数品種をブレンドします。これは各シャトーが最良の割合を持っており、補助品種は主要品種の特性を補完し、独自の味わいを産むものですが、このように天候は品種ごとにまで影響を与えるため、補助品種はある意味「保険」のような存在でもあるようです。生育期の天候を栽培者はいつも気にかけていることがよく理解できます。 |
(写真は2000年9月21日、収穫日のラ・ターシュのブドウ。今年のDRCの中では、ラ・ターシュの収穫が一番遅かった。はちきれんばかりの実り。) |
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