「ハレ」のワイン、シャンパーニュ。前編では、その製法や産地の説明をしてみました。今回は他の地方とはちょっと違うシャンパンの種類や重要なヴィンテージについて。 Let's try Champagne !! |
シャンパンは他の地方と違い、メーカー(製造業者)の名前が大きく書いてありますよね。また、収穫年も表記されていない事が多い。これは、異なる畑、異なる年のぶどうをブレンドしてつくるためなのです。一般的にはそういった「ノン・ヴィンテージ」(年号のないもの、以下NV)が各メーカーの主力商品となっていて、この地方の生産量の約8割をしめています。 またこういったNVの他、様々なタイプが生産されています。シャンパーニュに関する用語を説明しておきます。 |
・プレスティージュ (Prestige) 各社を代表する高級品。豪華なビンに詰められ、高価なもの。通常ヴィンテージが付く。詳細は後述。 |
・ヴィンテージ (Vintage) 作柄が特に良かった年の原酒だけでつくったもの。ラベルにヴィンテージが表記される。法定の最低熟成期間は3年。(NVは15ヶ月) |
・ロゼ (Rose) シャンパーニュのロゼは他の地方と違い、白ワインと赤ワインをブレンドする事が許されている。大体が高価なもの。前編で詳しく説明しています。 |
・ブラン・ド・ブラン (Blanc de Blancs) 白ブドウのシャルドネ種だけでつくられたもの。 |
・ブラン・ド・ノワール (Blanc de Noir) 黒ブドウ(ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ)だけでつくられたもの。 |
またこの地方における発泡性ワインの誕生は17世紀末であり、それ以前は赤ワインの産地としてブルゴーニュ地方と争ったらしい。その名残か、今でも非発泡のスティルワインも生産されており、これを「Coteaux
Champenois : コトー・シャンプノワ」と言います。赤、白、ロゼの生産が認められ、ブジー村やアイ村の赤ワインが有名です。 そしてピノ・ノワール100%で造られるロゼのスティルワイン「Rose des Riceys : ロゼ・デ・リセー」もAOCとして認められています。 |
これは、ルイ・ロデレール社のプレスティージュ「クリスタル」のエチケット。通常のワインと同じように、生産者、容量、アルコール度数等が記されているのが分かります。 |
NM : Negociant-Manipulant ネゴシアン・マニピュラン シャンパーニュを製造する会社(又は個人)で必要とするブドウの一部または全部を他から購入する。大手のハウスやネゴシアン。ほとんどがこれに属します。 |
RM : Recoltant-Manipulant レコルタン・マニピュラン グローワー(ブドウ栽培農家)で、かつ自力でワインを造るもの。 |
CM : Cooperative de Manipulation コーペラティヴ・ド・マニピュラシオン 協同組合名で生産販売するもの。 |
MA : Marque d'Acheteur マルク・ダシュトゥール BOB(バイヤーズ・オウン・ブランド)。プライヴェート・ブランドのことで、ふつう専用のラベルを用いる。 |
RC : Recoltant Cooperateur レコルタン・コーペラトゥール 協同組合製のワインを売るグローワー。 |
SR : Societe de Recoltant ソシェテ・ド・レコルタン 同族のグローワーによって構成される会社の製造したもの。 |
しかしながら、栽培農家の中にも自力でシャンパンを造るものもいて、これが上記の「RM : レコルタン・マニピュラン」にあたります。ブルゴーニュのドメーヌのような存在であるこれらの生産者は、大手のメーカー製に比べると、年ごとのバラツキは大きいとも言えますが「ポール・バラ」(写真右上)や「アラン・ロベール」等のように卓越した手腕により高い評価を受けている生産者もいます。 |
シャンパーニュ地方には「グランド・マルク・ド・ヴァン・ド・シャンパーニュ」という名門の団体があります。200社以上の数あるメーカーの中でも、有力な20数社だけが加盟しており、これら各社は「プレスティージュ」高級なシャンパーニュを生産してきました。主に来賓用に生産され、数も少なかったことから市場にも出てこなかったものですが、近年の極上シャンパンへの需要から、各メーカーが力を入れ生産量も増えたため、日本にも多数の銘柄が輸入されるようになりました。 その先駆けとも言えるのが、ご存知「ドン・ペリニョン」(通称ドンペリ)。「泡を瓶に閉じ込めた大恩人」(注1)の名をつけたこのプレスティージュは、1937年に発売され大成功をおさめ、高級シャンパンの代名詞にもなっています(注2)。 |
(ドン・ペリニョン:モエ・エ・シャンドン社) La Grande Dame : Veuve Clicquot Ponsardin (ラ・グランダム:ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン社) Crystal : Louis Roederer (クリスタル:ルイ・ロデレール社) Comtes de Champagne : Taittinger (コント・ド・シャンパーニュ:テタンジェ社) Louise : Pommery (ルイーズ:ポメリー社) Belle Epoque : Perrier-Jouet (ベル・エポック:ペリエ・ジュエ社) 等 |
Clos du Mesnil : Krug (クロ・デュ・メニル:クリュッグ社) Clos des Goisses : Philipponnat (クロ・デ・ゴワセ:フィリッポナ社) フィロキセラ以前からのブドウ古樹、ピノ・ノワール100%で造る Vieilles Vignes Francaises : Bollinger (ヴィエーユ・ヴィーニュ・フランセーズ:ボランジェ社) 等があります。 そして、小規模生産者ながらグラン・マルクに加盟を認められている「サロン」についてはこちらをご覧下さい。 |
(注1)ドン・ぺリニョン師がシャンパーニュを発泡性にしたというのは、一般的には間違いとされています。(モエ・エ・シャンドン社が当初、広告でそう謳ったためにこうした誤解が生まれたのですが、同社は現在ではこの件に関してノー・コメント) (注2)1937年にキュヴェ・ドン・ぺリニョンを発売したのはモエ・エ・シャンドン社ではなく、メルシエ社で、この会社を1970年に買収したのがモエ・エ・シャンドン社でした。同社はメルシエ買収後「ドン・ペリニヨン」のみを同社ブランドに移行させたのち、メルシエをスーパーマーケット用の安ブランドにしてしまいます。 |
少しワインにうるさくなってくると、ヴィンテージ・シャンパーニュやプレスティージュが気になってきます。当然、長期熟成されたヴィンテージ・シャンパーニュは素晴らしく魅力的です。年に数度、お祝いの席には用意したいものですね。 ただここにヴィンテージ・シャンパーニュについての興味深い法律があります。 この法律、意外にも重要な意味が含まれているように思います。どうしてシャンパンを他の地方のごとく、すべて年号付きにしてはいけないのでしょう? ジャンシス・ロビンソン女史も著書の中でこう触れられています。
「ハレ」のワイン、シャンパーニュ。やはり「高級」なイメージが求められる席で用意される事が多いワイン。消費者需要に合わせた生産者の商品構成は当然でもあり、高級なプレスティージュも素晴らしい品質だと思います。ただ、ワイン好きなら、ノン・ヴィンテージにもう少し目を向けてもいいのでは。出荷量の最も多いNVは各「ハウスの顔」。そこにはシャンパーニュの歴史と伝統が詰まっているように思います。 |
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