July 2000

今月の御題目

カナダのワイン


 今回は最近徐々に注目を集めはじめているカナダワインのご紹介。日本においてはまだまだワインショップ等でも見かけることは少ないのですが、アイスワインを筆頭にその品質の向上が評価され、人気が高まっているようです。


カナダワインの概要

 カナダのワイン造りは1860年頃からはじまっていますが、以前はヴィティス・ラブルスカ種を中心とした地元消費用のワインが主流を占めていました。近年、世界的な新しい流れに乗り、近代醸造技術を駆使し、ヴィティス・ヴィニフェラ種による高い品質のワインを生み出すようになりました。
 現在、オンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州、ノヴァ・スコシア州、ケベック州でワインは生産されていますが、主な産地はオンタリオ州ブリティッシュ・コロンビア州

 カナダでは1988年に原産地統制名称法に相当する品質協定であるVQA(Vintners Quality Alliance)制度が導入され、現在オンタリオ州で3ヶ所、ブリティッシュ・コロンビア州で4ヵ所の特定栽培地域(DVA、Designated Viticultural Areas)が指定されています。

オンタリオ州
 北緯41〜43度、栽培面積は5800haを有し、主に五大湖周辺の産地にて国全体の85%を生産しています。赤ワインが6割、白が4割。
 栽培地域表示を許される産地は
・ナイアガラ・ペニンシュラ (Niagara Peninsula)
・レイク・エリー・ノースショア (Lake Erie North Shore)
・ピーリー・アイランド (Pelee Island)

 この中でもナイアガラ・ペニンシュラには、オンタリオ州の畑の97%があり、オンタリオ湖からの風が背後のナイアガラ山塊に当たり、独自のブドウ栽培地域を確立しています。リースリングやヴィダル種(ユニ・ブランとセイベルの交配品種)によるドイツスタイルのアイスワインも生産しています。

ブリティッシュ・コロンビア州

 北緯49〜50度、カナダ西部に位置し、太平洋岸から150km入った内陸のオカナガン・ヴァレーは、この州の95%を生産しています。畑面積は1200ha。
 南北に細長く急峻な両岸に囲まれたオカナガン湖は、昼夜の温度差が大きく、穏かな秋の気候も手伝って、ブドウ栽培に適しているようです。
 栽培地域表示を許される産地は
・オカナガン・ヴァレー (Okanagan Valley)
・シミルカミーン・ヴァレー (Similkameen Valley)
・フレーザー・ヴァレー (Fraser Valley)
・バンクーバー・アイランド (Vancouver Island)

(写真はオカナガン湖を臨むセント・ヒューバータスの畑)


St.Hubertus Estate Winery

 ブリティッシュ・コロンビア州、ケロウナ市南部のミッション地区。緩やかな丘陵地帯に広がるこのワイナリーは、スイスからのワイン技術移民であるジェバート・ファミリーによって経営されています。オーナーのジェバート兄弟(兄のアンディと弟のレオ)は、スイス人特有の職人気質で、頑固なまでの徹底した品質管理によってワインを作り上げています。

 以下紹介するワインは、「OAK BAY」と記載されているものは、オーク樽で熟成させたもの。「St. Hubertus」のラベルのものは、オークを使用していません。一見すると、全く違うワイナリーのようですが、基本的にはおなじセント・ヒューバータス社のものです。ワイナリーの葡萄園が、2つに分けられていて、片方が「OAK BAY」用のワイナリーになっていて、もう片方が「St. Hubertus」用のワイナリーになっています。

以下、今回ティスティング出来た、オカナガン・ヴァレーのセント・ヒューバータス社のワインレポートです。


Canada カナダ
British Columbia
 ブリティッシュ・コロンビア州

St.Hubertus Vintner's Reserve

St. Hubertus Chasselas Vintner's Reserve
セント・ヒューバータス・シャスラ・ヴィントナーズ・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 白 (シャスラ85.2%、リースリング14.8%)
('97 \2,300)
 シャスラはスイス(ファンダンと呼ばれる)で多く栽培され、またフランスではアルザスやロワール、そしてドイツにも見られる白ワイン用の品種。
 意外にも濃さのある黄色のワインは、熟したリンゴのアロマ、柔らかな口当たり。味わいはまろやかで、余韻の酸味が綺麗なワイン。特徴的な香りと味わい。

St. Hubertus Gamay Noir Vintner's Reserve
セント・ヒューバータス・ガメイ・ノワール・ヴィントナーズ・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 赤 (ガメイ・ノアール86%、ピノ・ムニエ8%、フォッシュ6%)
('98 \2,000)
 ガメイを使ったこのワインは、1999年4月全カナダ・ワイン競技大会オンタリオ州大会にて銀メダル受賞。1999年5月にはアメリカ・ノースウエストワインサミット銀メダル受賞しています。
 明るいルビー色のワインはクールでストレートな果実を感じます。冷涼な地域らしくミネラリーで、スパイシーな風味とブドウの皮からくる渋みが余韻へ続く姿はドイツの赤ワインを連想させます。

St. Hubertus Northern Summer Vintner's Reserve
セント・ヒューバータス・ノーザン・サマー・ヴィントナーズ・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 赤 (ピノ・ノワール75%、ガメイ・ノアール20%、フォッシュ5%)
('97 \2,000)
 ピノ・ノワールが主体のブレンド。全体的にライトで、酸味もキッチリとしたワインは、カナダワインの体験入門に。食事中だけでなく色んなシチュエーションで飲める赤だと思います。


OAK BAY Grand Reserve


OAK BAY Chardonnay / Pinot Blanc Grand Reserve
オーク・ベイ・シャルドネ / ピノ・ブラン・グランド・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 白 (シャルドネ50%、ピノ・ブラン50%)
('98 \2,300)
 今回、最もおすすめしたいのがこの白ワイン。シャルドネ50%、ピノ・ブラン50%をブレンドしたワインは、1999年7月アメリカ・インディアナ州ワインコンクール銀メダル受賞。1999年カナダ・オカナガン国際ワインコンテスト銀メダルを受賞しています。
 レモン、ライム、白桃のアロマ、バニラやシャルドネの特徴ともいえる菩提樹の香り。ふくよかなボディを輪郭のある酸が整え、余韻も長く、バランスがいいワインなんです。ラベルを見ると、やはりアルコール度数も13%としっかりあります。
 ブルゴーニュ地方の品種もしっかりカナダで育つ事を証明するワイン。ジャイエ・ジルのオート・コート・ド・ボーヌ辺りにも通じるものがあると思いました。


OAK BAY Marechal Foch Grand Reserve
オーク・ベイ・マーシャル・フォッシュ・グランド・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 赤 (マーシャル・フォッシュ100%)
('98 \2,300)
 赤の一番人気だったのが、このワイン。マーシャル・フォッシュというブドウ品種は聞きなれないですし、私自身も初めての体験。第一次世界大戦のフランスの有名な将軍の名に因んで付けられた名前で、カナダやニューヨーク州では今でも広く栽培されている早熟型の品種のようです。
 深みのあるガーネット色、バター、ミルキーな樽香はアメリカンオークの要素が十分に溶け込んでいます。早熟を感じる濃さと甘さのあるワインは、程よい酸味とタンニンも柔らかで、美味しい。これはいいですね。

OAK BAY Gamay Noir Grand Reserve
オーク・ベイ・ガメイ・ノワール・グランド・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 赤 (ガメイ・ノアール95%、マーシャル・フォッシュ5%)
('97 \2,500)
 これも1999年4月オールカナダ・ワインコンクール銅メダル受賞というワイン。10日間の発酵の後、フレンチオークで10ヶ月の熟成をさせています。
 これは97年ということ、そして比較的長めの樽熟からか、すでにエッジにレンガを帯びたルビー色。木苺の香り、果実の甘さとほんのりと熟成香も。心地よいタンニンとすっきりとしたフィニッシュ。今飲んで美味しいワインです。

OAK BAY Pinot Meunier Grand Reserve
オーク・ベイ・ピノ・ムニエ・グランド・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 赤 (ピノ・ムニエ)
('98 \2,500)
 珍しいピノ・ムニエ単一品種。ピノ・ムニエというのは、シャンパーニュ地方で有名な品種(シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ)。ピノ・ムニエだけで造られたワインも初体験。フレンチオーク樽で11ヶ月熟成。1999年カナダ・オカナガンバレー秋のワインフェスティバル国際審議会銅メダルを受賞。
 明るいルビー色ながら複雑で十分な香り。赤い果実にスパイス、土っぽさ。口の中で甘さがふくらみ、余韻にはしっかりとしたタンニン。肉料理に合いそうですし、もう少し熟成させてみると面白いと思います。


Late Harvest & Ice Wine


St. Hubertus Summer Symphony Vintner's Reserve
セント・ヒューバータス・サマー・シンフォニー・ヴィントナーズ・リザーヴ
オカナガン・ヴァレー 白 (リースリング71%、ピノ・ブラン29%)
('98 \4,500 375ml)

 アイスワインの前段階で作られるデザートワイン。ブドウ畑が最初に凍りついた12月初旬に収穫されたレイト・ハーベスト・リースリングを71%、ピノブランを29%ブレンド。1998年産は3300本が作られました。1999年アメリカ・ノースウエスト・ワインサミットで銅メダル受賞。
 透明に近いクリアーな色のワインは、繊細で上品なフルーツの甘さ。綺麗なミネラル、甘さと酸味の両立した一本で、多くの方から好まれそうです。


St. Hubertus Ice Wine Pinot Blanc
セント・ヒューバータス・アイス・ワイン・ピノ・ブラン
オカナガン・ヴァレー 白 (ピノ・ブラン100%)
('98 \8,000 200ml)

 ピノ・ブラン100%の本格派アイスワイン。1998年12月19日収穫のピノ・ブランから4920本のアイスワンが造られました。1998年アメリカ・ノースウエスト・ワインサミットで金メダル受賞。
 さすがの濃縮感、ハチミツ、アプリコット、マーマレードの香り、完熟した梨の風味。ボリュームある味わいは、アイスワインならではの甘さ。甘系の好きな方は是非。ボトルも洒落ています。


カナダ=アイスワイン??

 アイスワインとは、収穫の時期を意図的に遅らせて、木にブドウがついた状態で凍らせ、水分が凍ったまま、果汁を搾ったもの。濃厚なブドウジュースがとれ、とても糖度の高い甘口ワインが出来ます。このワインも天候に左右されますし、厳寒の地での収穫は、大変な苦労を伴うワイン。収穫は翌年にも及ぶことがあると言います。ドイツのアイスヴァインが有名ですが、カナダ、そしてアメリカやオーストリアなどでも造られています。(写真はアイス・ワインとなる凍ったブドウ)

 今回数種のカナダワインを飲んでみて、そのアイスワインの品質の高さは素晴らしいと思いますし、この国においての特産といえる物であることは間違いなさそうです。
 またカナダの赤や白ワインを飲めたのも面白い体験でした。「ピノ・ムニエ」なんていう品種はなかなかそれ一種で造られることはありませんし(ピノ・ムニエは早熟型なので、冷涼な地域に向いている)、「マーシャル・フォッシュ」という品種は期待以上の美味しいワインでした。また「シャルドネ / ピノ・ブラン」というブルゴーニュ系の国際品種にも十分な可能性があると思います。とにもかくにも、美味しいカナダワイン。今後、じっくりと見守っていきたいと思います。

今回のレポートに関して、多大なご協力を頂いた「わいん@カナダ」の滝沢様に感謝いたします。ホームページでは、アイスワインの収穫風景他、カナダワインについて楽しいレポートが掲載されています。


わいん@カナダ

今月のお題目 目次
今月のお題目 前回 今月のお題目 次回


class30 "The Wine"