著者:青木冨美子 講談社発行 1600円 ソムリエ協会の理事も務められる青木冨美子さんによる「映画とワイン」の楽しいお話が詰まった一冊。 |
いつの時代にも人々に愉しみを与えてくれる「映画」の世界。その物語の中で、必ずといって出てくるのが「お酒」であり、ジャンルを問わず、名脇役としてしての演出効果、そして中にはストーリーを左右するほどのキーポイントとなっている映画も数多くあります。 「タイタニック」や「プリティー・ウーマン」に登場したシャンパンって何でしょう? この「おいしい映画でワイン・レッスン」は、映画に登場するワインを中心に紹介され、ワインの世界をもっと身近に感じさせてくれる本。この中から、class30もお気に入りの映画とワインを少し紹介します。 |
ディスクロージャー : DISCLOSURE(1994年 米) |
テクノ・スリラーの父といわれるM・クライトンの原作。企業内の熾烈なパワーゲームを描いたもので、ディスクロージャー(情報開示)の言葉も、この作品から一般に浸透した作品。
何故にこのワインが公判において重要な鍵となるのか?それは、生産量の非常に少ないブティック・ワイナリーのもの。「美味しい映画でワインレッスン」の中でも1996の生産量はたったの400ケース足らずということ。そのワインを、メレディスは秘書に探させ、トムとの一夜のために用意していた ..... 思い出のワインを。 このパルメイヤーのシャルドネ、映画の一シーンの中にも登場するその黄金色に輝くワインは、メレディスのグラマラスなボディを彷彿とさせます。カリフォルニアのブティック・ワイナリーを登場させることに巧みな演出を感じさせる映画。本を読んで見るか、見てから読むか。いづれにしても、ワイン好きにはたまらない一本。 |
カサブランカ : CASABLANCA(1942年 米) |
とにもかくにもワインと映画、この関係で真っ先に思い出すのがこの名画。ニヒルでクールなハンフリー・ボガートが見事なまでの「男のやせ我慢」を演じる。お互いの素性を知らないまま恋に落ちるパリでの日々。ドイツ軍によってパリが侵攻される日、リックがささやく言葉が「君の瞳に乾杯! Here's looking at you, kid.」これぞ名文句!
そして、この映画を気に入っている理由。リックが経営しているバーでピアノを弾く黒人ピアニスト、サム。彼の存在がすごくいい。久しぶりの再会に、思い出の曲「As Time Goes By」をリクエストするイルザ。歌うのを禁じられていながら、弾いてしまうサム。そこに登場するリック。なにもかもがドラマチック、素敵な映画です。 |
フレンチ・キス : French Kiss(1995年 米) CIC ビクター・ビデオ |
キュートで元気いっぱいなメグ・ライアンの魅力溢れるこの映画。ケイト(メグ・ライアン)はフランスへ旅行した婚約者から、「電撃的な恋をした」という理由だけで婚約破棄を申し込まれる。彼を会うためにフランスへ渡る飛行機(彼女は過度の飛行機恐怖症)で出逢った怪しげなフランス男性のリュック(ケビン・クライン)との愛を描いたラブ・コメディー。
リュックが若い頃に作った「香りのサンプル」を嗅がせると、「スグリ、ラベンダー」と鋭敏な感性を見せるケイト。いつかはこの地で素晴らしいワインを作るという男の誠実さ。映画の中で、意外にも思える二人の個性と感情の変化を見事に描写した小粋な場面。 二人が旅をする列車の車窓には、太陽を感じるプロヴァンスの古い町並みと、どこまでも広がるブドウ畑。実際、この映画の撮影には、コート・デュ・リュベロンの「シャトー・ヴァル・ジョアニ」というワイナリーのブドウ畑を借りて、撮影が行われたということ。ワインについては、本文中で詳説されています。 |
青木冨美子さんは、NHK、洋酒メーカーでのご経験を経て、現在、ワインライター。(社)日本ソムリエ協会の理事も務められ、その機関紙「Sommelier」にも楽しい記事をご提供頂いております。また赤坂のワインスクール「ワインスカラ」にて講師としてもご活躍されています。 ある会にて青木さんとご同席させて頂く幸運に恵まれました。本当に素敵なお人柄。その豊富な知識もさることながら「ワインを飲む時は自然体で」という、この本に書かれているスタンスが伝わってきます。
そして青木さん曰く「この本の中で一つだけ誉めて欲しい個所があるの」という事。皆さん、モンラッシェというワインをご存知ですか?アレキサンドル・デュマが「脱帽し、跪いて味わうべし」と言った話はあまりに有名ですね。この本には、ヒッチコック監督の名画「裏窓」がモンラッシェと一緒に紹介されています。「なるほど、ヒッチコック監督はそこまで考えてモンラッシェをチョイスしていたのか!」と唸らせる一節。 嬉しいことに、この本が早速「日本図書館協会の選定図書」に選ばれたということ。またまた新しい楽しみ方を教えてくれるワイン本。是非、読んでみて下さい。 |
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