今日、伝統的なフランスやイタリアに負けず劣らずの人気を誇るカリフォルニアワイン。カベルネ・ソーヴィニオン、メルロー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン(フュメ・ブラン)やカリフォルニアならではのジンファンデル、プティ・シラーといった数々の品種が栽培され、注目を集めています。 |
ボルドーのカベルネ・ソーヴィニオンに惹かれた彼は、ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニオンを試飲して行くうちに、スタッグス・リープ・ディストリクトにあるフェイ農園のワイン(自家消費用のカベルネ)に出会い、1970年、隣接するクルミとプルーンの果樹園(現在のSLVの畑)を購入。1972年にスタッグス・リープ・ワイン・セラーズを設立しました。 |
スタッグス・リープ・ワイン・セラーズを語る上で、必ず引き合いに出されるのが、1976年の米仏テイスティング対決。この対決については、99年6月の「お題目」でも書いたと思います。 ワイン鑑定家であり企業家でもあるイギリス人、スティーブン・スパリエ氏。パリに「ル・カーヴ・ド・ラ・マドレーヌ」を持ち、その店の傍らにワイン専門家の学校「アカデミー・ドュ・ヴァン」を設立していた彼が企てたこのコンペティション。当時その実力を認知されていなかったカリフォルニアワイン。結果は当のスパリエも予想せず、審査員もただの余興くらいにしか思ってなかったと言います。
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この後、「カリフォルニアは若いうちは美味しいが熟成しない、長持ちしない」という声があり、10年後の1986年、同じワインを使って再戦。しかしそこでもトップに選ばれたのは、クロ・デュ・ヴァルとリッジ。またもやカリフォルニアに軍配が上がる結果となりました。 以下、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズのワインを紹介いたします。 |
America-California |
Stag's Leap Wine Cellars White Riesling この地区において、あまり重要とは思えない白ワインの存在。しかしこのワイナリーでは創設当初からリースリングも造っていたようです。「ボブ(ロバート・モンダヴィ)からインスピレーションと熱意の魂をもらいました」と語るウィニアスキー氏。そういえば、モンダヴィも創業時から白ワインを手がける生産者。 |
このシャルドネもカリフォルニアらしい一本。トロピカル・フルーツのボリュームのある香り。綺麗なミネラルがバランスをとりながら、やや酸が低い分、芳醇な果実を満喫出来ます。 |
Hawk Crest Merlot 「ホーク・クレスト」はこのワイナリーのセカンド・ラベル。メルローの他にも、カベルネ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン等があるようです。 |
ウイニアスキー氏がフェイ農園のワインに出会い、ワイナリーの設立を考えたという、その畑名入りシングル・ヴィンヤード(1986年にフェイ家より購入)。SLVに比べて、火山性土壌が少なく、沖積土壌がある。「スパイシーで酸味のしっかりした」SLV。「フルーティーで柔らかな」フェイ。新樽比率は50%。 |
このワイナリー最上級のワインがこれ、カスク23。1974年に登場、1989年までは、SLVのブドウだけを使っていましたが、現在ではSLVの最上部とフェイ中部からのブドウを厳選。偉大なヴィンテージのみに現定数を生産。100%新樽、18ヶ月の樽熟。 |
「72年のスタッグス!」聞いただけで興奮しますね。73年は当然あの米仏対決のウィナー。その一年前、つまり72年はこのワイナリーが創設された年です。この時点でのブドウ樹の樹齢はわずか2年。どんなワインなのか興味津々です。 |
「ワイン造りの哲学者」とも呼ばれているウォーレン・ウィニアスキー氏。彼の哲学、ワイン造りにおいて大切な要因は3G「グレープ(ぶどう)、グランド(土壌)、ガイ(人)」といいます。「ベルベットに包まれた鉄」と表現したそのワインは、育まれた土地の個性を反映しつつも香り、味わい、舌触りのすべてにおいて最高の要素を持ち、世界のトップクラスとして認められるもの。 1972を飲んだ後「樹齢2年?なんでなんだ?」と考えても答えは出てきません。ウィニアスキー氏曰く「若い樹齢のブドウの樹は、いっとき実にたくましい個性のワインを生むことがある。」またまたワインの深さに驚きを感じた一本。もしこのワインが、ファースト・ヴィンテージならば、創設時からウイニアスキー氏は将来に確信を持っていたに違いありません。
その対決から20年後の1986年、記念碑的遺物を永久保存するワシントンのスミソニアン博物館のコレクションに、スタッグス・リープ・ワインセラーズ・カベルネ・ソーヴイニヨン1973が選ばれています。 写真は1986年、スミソミアン博物館でのウォーレン・ウィニアスキー氏(左)とスティーブン・スパリエ氏(右)。スタッグス・リープ・ワイン・セラーズのホームページより。 |
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