シンデレラワイン。ワイン愛好家そしてワイン業界を騒がすワイン達。今回は今をときめくボルドー、ドルドーニュ河の右岸、リブルネの台地に広がるサンテミリオンやポムロール地区のワインの紹介です。 |
ワインの世界には歴史があります。特にボルドーやブルゴーニュといった産地では、確固としたワインの位置付けがなされていることも事実です。シンデレラワインとは、無名だった生産者や歴史の浅いシャトーなどが、そのワインの質を高く評価され、突如として高値で取引され、人気を呼んだワイン達です。 |
ワイン | AOC | 面積 | 生産量 | セパージュ |
ペトリュス | ポムロール | 11ha | 3000C/S | M95,CF5 |
ル・パン | ポムロール | 2ha | 600C/S | M92,CF8 |
ヴァランドロー | サンテミリオン | 3ha | 600C/S | M75,CF20,Ma5 |
ラ・モンドット | サンテミリオン | 4ha | 1600C/S | M75,CF25 |
ロル・ヴァランタン | サンテミリオン | 3ha | 700C/S | M90,CF5,CS5 |
クロ・デ・リタニ | ポムロール | 0.8ha | 400C/S | M100 |
オー・トロショー | ポムロール | 2ha | 1000C/S | M100 |
ボー・ソレイユ | ポムロール | 3ha | 1850C/S | M95,CF5 |
クリネ | ポムロール | 9ha | 3500C/S | M80,CF10,CS10 |
シンデレラワインやその候補と目されているワインの概要をペトリュスを含め記してみました。面白いのは、ご覧のようにすべての栽培面積、そして生産量が限られていること。わずか3ha〜4ha以下の小さな畑から産出されるワインです。この規模だから、古典的な醸造法、手間隙かけた作業が行われ、そこに希少価値が後押しし、高価なワインとなっているようです。 シンデレラという言葉が一番似合うワイン、ル・パン、そしてヴァランドローを頂く機会に恵まれましたので、その2本を中心に紹介します。 |
Bordeaux-Pomerol |
幸運にも、92年のル・パンを頂くことが出来ました。この年のル・パンは、このワインのスタイルを物語るものかどうか分かりませんが、パーカー氏の辛口の批評以上のワインである事は間違い無いように思います。参加者全員一致で「ル・パン!美味しい」という感想。これからが飲み頃なんだと思います。香りにはハーブやスパイスが優雅に漂い、スムースで滑らかな飲み心地、きれいな酸味を感じさせるワインは、ボルドーともブルゴーニュとも、いやローヌともとれエキゾチックで魅力的です。 |
Bordeaux - St-Emilion |
94年のヴァランドロー、まだまだもったいないです。かなりスモーキーで、青い感じもあります。ただ、そのワイン自体はメルローとしては、傑出した深いガーネットをしており果実感は十分、完全なるフルボディ。現時点では、エレガンスという意味で物足りなさを感じるのですが、このワインの持つ要素が溶け合ったら凄いことになるのでしょう。 |
さて世間を騒がすシンデレラ。たかがワイン、されどワイン。一本のワインにどうしてここまでの高値が付けられてしまうのでしょう? |
@小規模の畑、生産量による、手間隙かけた造り |
+ |
Aミッシェル・ロラン氏他、著名な人物によるコンサルタント |
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B現代的な凝縮した高品質のワイン |
↓ |
Cパーカー氏他、評論各誌の高ポイント |
↓ |
D市場の評価、需要拡大 |
↓ |
E希少性を伴う高価格 |
簡単にまとめると、こうなるのでしょうか。 厄介なのは、その先ではないでしょうか。素晴らしいワインの価格が高騰するのは止むを得ないところですが、なんせ数が少ない。入手困難となり「幻」の言葉まで使われるようになる。そうなると人の心情からして、余計に手に入れたくなります。 そこにまた登場するのが、ネゴシアンやブローカーといった存在。投機の意味でのワインも存在することとなります。数々のオークションでも「82年のル・パン」「93年のヴァランドロー」等のワインが引き合いに出され、噂を呼び、ますますの拍車がかかる要因になっているように思います。 |
ここでどうしても言及したくなるのが、コンサルタント、そして評論家と呼ばれる方々の存在です。今のシンデレラワインがここまで高価なワインとして存在するには、かなりのウエイトを占めているのも事実でしょう。「すべてのメルローがミッシェル・ロラン印になっている」などの話もよく出てきます。そういった話を聞くたびに、ロラン氏やパーカー氏は、いけないことをしているのか?って問いたくなります。 「ミッシェル・ロランがコンサルタントしているワインは、パーカー・ポイントが高い」という問いにロラン氏は笑ってこう答えています。 「パーカーとは20年来の友人。何しろ12月24日の誕生日まで一緒なんだよ。パーカーが1981年に初めてボルドーにやって来て、シャトーを回ったがどこもテイスティングさせてくれなかった。(中略)僕の造ったワインならいいよと、4時間もワイン談義をし、意気投合した。翌年からボルドーでのセッティングをしてあげている仲。」(ヴィノテークより) そうロラン氏とパーカー氏、旧知の友人なんですよね。当然人には人情がありますから、恩人のワインをけなしたくはないでしょう。無意識のうちにある程度の「色」がつけられても当然。しかしながら、パーカー氏の評価は確固とした判断に基づくものであると思います。実際にロラン氏は素晴らしいワインをプロデュースしているのですから。 確かにロラン氏やパーカー氏の名前が、やや広告塔の意味で使われている傾向もあると思います。ただ、値を吊り上げているのは、生産者でもコンサルタントでも評論家でもなく、ワイン市場の奇妙な魔法なのでは?こんなシンデレラの魔法が早く解けて、より健全な市場、そして美味しいワインが適正な価格で飲める時代が来ることを期待しています。 今回紹介した「ル・パン」「ヴァランドロー」確かに素晴らしいワイン、その背景も含め「RECOMMEND」マークを付けていますが、共に5万円は下らない価格、一部では10万という価格は、やや残念な思いがします。 |
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