葡萄酒の匠


Domaine Leroy
ドメーヌ・ルロワ
(France / Bourgogne)



 1988年、マダム・ルロワはヴォーヌ・ロマネの特級畑を所有するドメーヌ・シャルル・ノエラを買収、ドメーヌ・ルロワが誕生します。続いて翌年には、ジュヴレ・シャンベルタン村のドメーヌ・レミーを手中に収め、22haを超える自社畑を所有する大ドメーヌとなっています。マダムの拘りは知られるところで、現在ではDRCを凌ぐとも言われる品質と市場価格を実現しています。
  ドメーヌ・ルロワはほとんどが赤であり、赤ワインには赤いキャップシールが採用されているため、愛好家の間では通称「赤キャップ」と言われています。詳しくは「お題目」を、参照して下さい。

「今月のお題目」2002年6月:偉大なる生産者:ルロワ(前編)
「今月のお題目」2002年6月(2):偉大なる生産者:ルロワ(後編)

確認できる主要な畑を記載しておきます。*** 特級畑 ** 一級畑 * 村名畑 、 で表示。
( )内は各畑の所有面積。Anthony Hanson "Burgundy" より参照。
Chambertin *** (0.5)
Latricieres Chambertin *** (0.57)
Gevrey-Chambertin Les Combottes ** (0.46)
Gevrey-Chambertin * (0.11)
Clos de la Roche *** (0.67)
Musigny *** (0.27)
Chambolle Musigny Les Charmes ** (0.22)
Chambolle Musigny Les Fremieres * (0.35)
Clos de Vougeot *** (1.91)
Richebourg *** (0.78)
Romanee-Saint-Vivant *** (0.99)
Vosne-Romanee Les Beaux Monts ** (2.61)
Vosne-Romanee Aux Brulees ** (0.27)
Vosne-Romanee Les Genevrieres * (1.23)
Nuits-Saint-Georges Aux Allots * (0.51)
Nuits-Saint-Georges Au Bas de Combe * (0.15)
Nuits-Saint-Georges Les Boudots ** (1.19)
Nuits-Saint-Georges Aux Lavieres * (0.68)
Nuits-Saint-Georges Les Vignerondes ** (0.38)
Corton-Renardes *** (0.5)
Corton-Charlemagne *** (0.43)
Savigny-les-Beaune Les Narbantons ** (0.81)
Pommard Les Vignots * (1.26)
Pommard Les Trois Follots * (0.07)
Volnay Santenots ** (0.35)


■ WINELIST ■

Domaine Leroy - Grand Cru


Clos de Vougeot
クロ・ド・ヴージョ

ヴージョ 赤 (PN,Pb,PL)
('93 \40,000位)

 ヴージョ村のグラン・クリュ、クロ・ド・ヴージョ。クロ(石垣)に囲まれたその約50haの区画は、80名もの栽培者や生産者に分割所有されている事でも有名。ルロワは、斜面下部の南端しか持っていませんでしたが、ドメーヌ・シャルル・ノエラを買収し、中央から下にかけての長い畝と、シャトー横にある斜面上部の素晴らしい畑を手に入れた。現在、畑面積は1.91ha。
 このワインを頂いたのは1999年の年初。ちょうどその直前に星谷様が書かれた「マダム・ルロワの愛からワイン」を読んでいた。1992年に、DRCと決別した悲しみ。そしてミデュー(シャンピニオン)が発生し、ぶどうにとって大変困難な年だったという93年のルロワ。そんな年をパーフェクトに近い評価が続出する偉大なヴィンテージに仕立てた苦労。それはマダム・ルロワ本人「働いて働いてまた働いた」という情熱の賜物。
 93年の総生産量2249本、通しナンバー0122。通常の年であれば、7000本前後の生産量が普通ですが、2249本というのは通常の約3分の1。それだけ収穫が大変だった上に、厳しい選別を行ったことが伺えます。
 ただただグラスに引き込まれる魔力。その味わいはどうだったのか?今考えても覚えていないし、そんな事はどうでもいい。ルロワの虜になるきっかけとなったワイン。その味わいと共に、未だに人生で最上の一本であり、これを越える感動はもうないだろうとも思っている。【D1999】

Romanee St. Vivant
ロマネ・サン・ヴィヴァン
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)
('94 \45,000位)

 94年のサンヴィヴァン。マダム・ルロワ自身はこの頃からビオディナミの効果が畑に現われ、以後自然な農法においても病害等の被害がなくなったとしています。スミレやレッド・ベリーの芳しさ、90ヴィンテージと同じく酸がぐっと主張する辺りは、このワインの良さだと思いますが、94というヴィンテージゆえでしょうか、果実の脆弱さは否めず(ルロワとしては)バランスがぎこちない。オフ・ヴィンテージといえどグラン・クリュというワインの彩を感じさせて欲しかった。【D2002】

Corton-Charlemagne
コルトン・シャルルマーニュ
アロース・コルトン 白 (Ch)
('92 \25,000位)

 ルロワのコルトン・シャルルマーニュにはネゴシアン物とドメーヌ物が存在します。双方白いキャップなので注意が必要。92年のブルゴーニュ白は、個人的にすごく興味を持っているワイン。ドメーヌ物のシャルルマーニュを頂けるということでワクワク気分でした。
 深い黄金色に少しこなれた白を想像します。しかし、樽からのバニラ、ハーブ、石灰という基本的な香りはあるものの、甘味と酸が中核をなすボディ全体が厳しい。余韻は酸が中心で、未だに時間が必要な硬さ。あと何年待てばいいのでしょう。【D2001】


Domaine Leroy 90 Vinatge Horizontal Tasting

Chambertin
シャンベルタン
ジュヴレイ・シャンベルタン 赤 (PN,Pb,PL)

Clos de la Roche
クロ・ド・ラ・ロッシュ
モレ・サン・ドニ 赤 (PN,Pb,PL)

Corton-Renardes
コルトン・ルナルド
コルトン 赤 (PN,Pb,PL)

Richebourg
リシュブール

ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)

Romanee St. Vivant
ロマネ・サン・ヴィヴァン

ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)

Vosne-Romanee Les Beaux Monts
ヴォーヌ・ロマネ・レ・ボーモン
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)

 2002年2月、ドメーヌ・ルロワ90年水平試飲という幸運に恵まれました。ただでさえ数の少ない赤キャップですが、憧れのグラン・クリュ、そして1990という偉大な年。これだけのグラン・クリュを一気に水平でというのも初体験でしたので、本当に勉強になりました。

 すべてブランドでの試飲だったため、先入観なく頂くことが出来ました。1990年のブルゴーニュは比較的高収量だったようですが、ドメーヌ・ルロワでは22〜23hal/haということ。全体的な印象は「お題目」の方で書かせて頂きましたので、少し詳しく個々の感想を。抜栓は1時間前。


 @Chambertin (0.5ha) 中では熟成の進んだワインで、なめし革の熟成香、鉄のようなミネラルっぽい香りはジュヴレイのイメージ。透明感さえあるボディは熟成による緩さが出始めた時期かなとも思いますが、余韻はかなりタニックで大胆。あと数年で一皮剥けて、よい飲み頃を迎えそう。

 AClos de la Roche (0.67ha) 6本の中でも最もインパクトの強い外交的なワイン。その濃縮感、パーっと立ち上がるラズベリー・ジャムの甘味、黒胡椒、理解しやすいアロマがグラスを満たします。こってりと肉感的なボディはドメーヌ・ルロワのイメージそのもので、依然インキーな要素も。飲み込んだ後の口中に張り付くタンニン。ロッシュのテロワールを実感、その迫力はピカ一。

 BCorton Renardes (0.5ha) 唯一ボーヌのワインだなと分かる個性の差。立体的で華麗なニュイのワインに比べ、肩幅の広いイメージがある。グリルされた肉、黒果実の旨味はバランス良いものの、どこかクローズした印象。味を下支えするミネラル。もし勇気を持ってあと10年置いておくなら、このワインに一票を投じたい。

 CRichebourg (0.78ha) 第一印象はハーブ香のある閉じたクールなワイン。しかしあくまで開けっぴろげにならない充実したプラム系黒果実、どこか暗い場所へ引き込むような妖艶な佇まい。注意深くみると、これが「成金」ではなく「富貴」なのだと分かる。極上を味わうには、それなりの品性が必要と思わせるグラン・ヴァン。

 DRomanee St Vivant (0.99ha) サンヴィヴァンというワインは、精妙なのだという事を理解。アペラシオンを表現するフラワリーで一瞬儚ささえ感じる存在。しかし密度の高い甘苦系のボディを支える酸の強さ、その酸が余韻をグッとひっぱる様が華麗。

 EVosne Romanee Les Beaux Monts (2.61ha) サンヴィヴァンと似た個性。ドライなバラ、オリエンタル・スパイス。リキュール様の果実にタンニンが溶け込み、重さより曇りのない響きの良さ。やはり他のグラン・クリュと比べればライトなのだろうか? ブルゴーニュの線引きはよく出来ていると思うのと同時に、決して価格差ほどの見劣りはないように思う。

 もしこれらに順序をつけるならACがトップだと思います。ただこの両者には完全な個性の差がありますし、他の4本も同様、好みの部分が多いでしょう。それほどまでに品質的には緊迫した試飲でしたし、各アペラシオンの特徴をマダムが重視する事が理解できたように思います。


Domaine Leroy - Premier Cru ...


Vosne-Romanee Les Beaux Monts
ヴォーヌ・ロマネ・レ・ボーモン
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)
('96 \30,000)('97 \25,000位)('98 \30,000位)

 「美しい山」という名を持つボーモンは、オー・ブリュレの続き斜面、エショゾーとリシュブールの間にある秀逸なプルミエ・クリュ。
 96年 : ご一緒した方は「タイトさ、シルキーさ、ストラクチャーが果実のボリューム感から来るのではなく、ミネラル的要素の凝縮感からくる印象」というコメントをされていましたが、このワインを飲んで、この意味を感じられる偉大さ。フルーティーな中に強靭な骨格を持つワインは、この年で舌に張り付くようなタンニン、むせ返るようなフィニッシュ、これは時間が経つとどうなるんでしょう?是非また出逢ってみたいワイン。【D2000】
 97年 : 97としてはややレンガの熟成が見える外観。バラの香り、中くらいのボディは心地よささえありますが、その体感温度の高さ、目の開き方はどうもボトルの状態に一抹の不安。これはこれで美味しいけれども、前後のヴィンテージと比較しても個性が違いすぎ。裏ラベルを見ると、正規物ではなかった。【D2001】
 98年 : 中程度の鮮やかなルビー。赤果実と紫のスミレ、十分なミネラルを感じるアロマ。体格勝負のワインでないだけに、あまりにも若い時点では判断が難しいワイン。余韻での収斂性、各要素のピントが合うまで少し置いておきたい98。【D2002】
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)プルミエ・クリュ


Vosne-Romanee Les Genevrieres
ヴォーヌ・ロマネ・レ・ジュヌヴリエール
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)
('95 \20,000位)('97 \15,000位)

 このジュヌヴリエールという畑は、プルミエ・クリュと紹介している所もありますが、実際にはクロ・デ・レア(ミッシェル・グロのモノポール)の斜面下にある村名格だと思います。
 95年 : エッジにはレンガ色が見える赤紫。愛らしい野イチゴ、柔らかなバニラ香。すでに飲み頃で十分にこなれた温かい質感、余韻での収斂味がちょっとヤンチャなワイン。【D2001】
 97年 : 今でも嬉しくなるくらい美味しいワイン。深みのあるルビー色。ルロワ香とも言うべき華やかさ、継ぎ目のない滑らかさ。印象的であり威圧的でない心地よさ。ジュヌヴリエールは、畑の位置的にもやや評価は低い銘柄ですが、その分早くから楽しめる魅力を持っているようです。【D2001】


Nuits-Saint-Georges Les Boudots
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ブド
ニュイ・サン・ジョルジュ 赤 (PN,Pb,PL)
('99 \30,000位)

 ニュイ・サン・ジョルジュ、ブドの畑はヴォーヌ・ロマネとの村境に接するプルミエ・クリュ。その評価はグラン・クリュに肉薄するものがあり、パーカー氏は93年-99p、95年−94〜97p,96年-96+pという格別のポイントをつける、ルロワ・プルミエ・クリュでも最上級のワイン。
 99年のブド、悪かろうはずがありません。グラスを覗きこむだけで分かる情熱の赤いバラ。若いワインなれど陰鬱な表情など一切感じさせない黒と赤紫のコントラスト。同じプルミエ・クリュとしてはボーモンにはないはっきりとした重量感。このアペラシオンとドメーヌ・ルロワの個性が交わる様に唖然とするほど鮮明な果実味。今が美味しい、でもまだ美味しくなるのか・・そんなことはどうでもいいとまで思わせる一本。【D2002】

Chambolle-Musigny Les Fremieres
シャンボール・ミュジニィ・レ・フルミエール
シャンボール・ミュジニィ 赤 (PN,Pb,PL)
('94 \11,000位)

 シャンボールのワイン。フルミエールはボンヌ・マール寄りの一級畑に接しているものの村名格の畑。野イチゴ風味のキュートなワイン。94ヴィンテージとしては味のバランスを保っているものの、余韻を含め上品さがなく、どこがぼやけた印象。(もしかすると日本に入ってきて落ち着いていないか?) 他の造り手なら合格点でも赤キャップ、やはり何かを求めてしまいます。【D2000】


Savigny-les-Beaune Les Narbantons
サヴィニー・レ・ボーヌ・レ・ナルバントン
サヴィニー・レ・ボーヌ 赤 (PN,Pb,PL)
('98 \10,000位)

 第一印象から「にやり」とする濃縮度の高いアロマ。すり潰したイチゴの甘さ、ブラック・ベリーの深さ。現時点で不快な要素を全く持たず、あくまで旨味を表現することにフォーカスされた、飲むためのワイン。サヴィニー・レ・ボーヌにこの価格、普通だったら馬鹿馬鹿しくさえ思われる。しかし、ドメーヌ・ルロワはこのアペラシオンで最上のワインを造り出している・・・マダムのワインをこの価格で味わえるなら安い?【D2002】


Pommard Les Vignots
ポマール・レ・ヴィニョ
ポマール 赤 (PN,Pb,PL)
('97 \15,000位)

 レ・ヴィニョは、ポマール村の北側に位置する村名格の畑。(少し前までプルミエ・クリュだと勘違いしていました。) 97年は、心地よい赤果実、やや熟成の早さからくるお漬物の香り。目の詰まった個性は、密度よりスベスベした透明感。ポマールという土くささより可憐な印象で、ドメーヌ・ルロワとヴィンテージの個性が表現されてるようです。【D2001】



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