June 2002 (2)

ヴァーチャル・ブルゴーニュ・ツアー
ドメーヌ・ルロワ&ドメーヌ・ドーブネ特集

【Domaine Leroy】
Chambertin '90
Clos de la Roche '90
Corton-Renardes '90
Richebourg '90
Romanee St. Vivant '90 '94
Vosne-Romanee Les Beaux Monts '90 '97 '98
Corton-Charlemagne '92
Vosne-Romanee Les Genevrieres '95 '97
Nuits-Saint-Georges Les Boudots '99
Chambolle-Musigny Les Fremieres '94
Savigny-les-Beaune Les Narbantons '98
Pommard Les Vignots '97

【Domaine d'Auvenay】
Mazis Chambertin '97
Bonnes-Mares '98
Chevalier Montrachet '97
Puligny-Montrachet Folatieres '95 '98
Meursault Les Narvaux '97
Auxey-Duresses Les Clous '98
Bourgogne Aligote Sous Chatelet '98


Domaine Leroy - Grand Cru

Domaine Leroy 90 Vinatge Horizontal Tasting

Chambertin
シャンベルタン
ジュヴレイ・シャンベルタン 赤 (PN,Pb,PL)

Clos de la Roche
クロ・ド・ラ・ロッシュ
モレ・サン・ドニ 赤 (PN,Pb,PL)

Corton-Renardes
コルトン・ルナルド
コルトン 赤 (PN,Pb,PL)

Richebourg
リシュブール

ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)

Romanee St. Vivant
ロマネ・サン・ヴィヴァン

ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)

Vosne-Romanee Les Beaux Monts
ヴォーヌ・ロマネ・レ・ボーモン
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)

 2002年2月、ドメーヌ・ルロワ90年水平試飲という幸運に恵まれました。ただでさえ数の少ない赤キャップですが、憧れのグラン・クリュ、そして1990という偉大な年。これだけのグラン・クリュを一気に水平でというのも初体験でしたので、本当に勉強になりました。すべてのワインの状態もよく、主催者もほっとした事でしょう。高額な参加費ゆえに、この中の一本でさえ不備があれば参加者は「金返せ」といいかねません(笑)。

 すべてブランドでの試飲だったため、先入観なく頂くことが出来ました。1990年のブルゴーニュは比較的高収量だったようですが、ドメーヌ・ルロワでは22〜23hal/haということ。全体的な印象は「お題目」の方で書かせて頂きましたので、少し詳しく個々の感想を。抜栓は1時間前。


 @Chambertin (0.5ha) 中では熟成の進んだワインで、なめし革の熟成香、鉄のようなミネラルっぽい香りはジュヴレイのイメージ。透明感さえあるボディは熟成による緩さが出始めた時期かなとも思いますが、余韻はかなりタニックで大胆。あと数年で一皮剥けて、よい飲み頃を迎えそう。

 AClos de la Roche (0.67ha) 6本の中でも最もインパクトの強い外交的なワイン。その濃縮感、パーっと立ち上がるラズベリー・ジャムの甘味、黒胡椒、理解しやすいアロマがグラスを満たします。こってりと肉感的なボディはドメーヌ・ルロワのイメージそのもので、依然インキーな要素も。飲み込んだ後の口中に張り付くタンニン。ロッシュのテロワールを実感、その迫力はピカ一。

 BCorton Renardes (0.5ha) 唯一ボーヌのワインだなと分かる個性の差。立体的で華麗なニュイのワインに比べ、肩幅の広いイメージがある。グリルされた肉、黒果実の旨味はバランス良いものの、どこかクローズした印象。味を下支えするミネラル。もし勇気を持ってあと10年置いておくなら、このワインに一票を投じたい。

 CRichebourg (0.78ha) 第一印象はハーブ香のある閉じたクールなワイン。しかしあくまで開けっぴろげにならない充実したプラム系黒果実、どこか暗い場所へ引き込むような妖艶な佇まい。注意深くみると、これが「成金」ではなく「富貴」なのだと分かる。極上を味わうには、それなりの品性が必要と思わせるグラン・ヴァン。

 DRomanee St Vivant (0.99ha) サンヴィヴァンというワインは、精妙なのだという事を理解。アペラシオンを表現するフラワリーで一瞬儚ささえ感じる存在。しかし密度の高い甘苦系のボディを支える酸の強さ、その酸が余韻をグッとひっぱる様が華麗。

 EVosne Romanee Les Beaux Monts (2.61ha) サンヴィヴァンと似た個性。ドライなバラ、オリエンタル・スパイス。リキュール様の果実にタンニンが溶け込み、重さより曇りのない響きの良さ。やはり他のグラン・クリュと比べればライトなのだろうか? ブルゴーニュの線引きはよく出来ていると思うのと同時に、決して価格差ほどの見劣りはないように思う。

 もしこれらに順序をつけるならACがトップだと思います。ただこの両者には完全な個性の差がありますし、他の4本も同様、好みの部分が多いでしょう。それほどまでに品質的には緊迫した試飲でしたし、各アペラシオンの特徴をマダムが重視する事が理解できたように思います。


Romanee St. Vivant
ロマネ・サン・ヴィヴァン
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)
('94 \45,000位)

 94年のサンヴィヴァン。マダム・ルロワ自身はこの頃からビオディナミの効果が畑に現われ、以後自然な農法においても病害等の被害がなくなったとしています。スミレやレッド・ベリーの芳しさ、90ヴィンテージと同じく酸がぐっと主張する辺りは、このワインの良さだと思いますが、94というヴィンテージゆえでしょうか、果実の脆弱さは否めず(ルロワとしては)バランスがぎこちない。オフ・ヴィンテージといえどグラン・クリュというワインの彩を感じさせて欲しかった。
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)グラン・クリュ

Corton-Charlemagne
コルトン・シャルルマーニュ
アロース・コルトン 白 (Ch)
('92 \25,000位)

 「お題目」で触れましたが、ルロワのコルトン・シャルルマーニュにはネゴシアン物とドメーヌ物が存在します。双方白いキャップなので注意が必要。92年のブルゴーニュ白は、個人的にすごく興味を持っているワイン。ドメーヌ物のシャルルマーニュを頂けるということでワクワク気分でした。
 深い黄金色に少しこなれた白を想像します。しかし、樽からのバニラ、ハーブ、石灰という基本的な香りはあるものの、甘味と酸が中核をなすボディ全体が厳しい。余韻は酸が中心で、未だに時間が必要な硬さ。あと何年待てばいいのでしょう。
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)グラン・クリュ


Domaine Leroy - Premier Cru ...


Vosne-Romanee Les Genevrieres
ヴォーヌ・ロマネ・レ・ジュヌヴリエール
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)
('95 \20,000位)('97 \15,000位)

Vosne-Romanee Les Beaux Monts
ヴォーヌ・ロマネ・レ・ボーモン
ヴォーヌ・ロマネ 赤 (PN,Pb,PL)
('97 \25,000位)('98 \30,000位)
 このジュヌヴリエールという畑は、プルミエ・クリュと紹介している所もありますが、実際にはクロ・デ・レア(ミッシェル・グロのモノポール)の斜面下にある村名格だと思います。そして「美しい山」という名を持つボーモンは、オー・ブリュレの続き斜面、エショゾーとリシュブールの間にある秀逸なプルミエ・クリュ。
 ジュヌヴリエール95 : エッジにはレンガ色が見える赤紫。愛らしい野イチゴ、柔らかなバニラ香。すでに飲み頃で十分にこなれた温かい質感、余韻での収斂味がちょっとヤンチャなワイン。
 ジュヌヴリエール97 : 今でも嬉しくなるくらい美味しいワイン。深みのあるルビー色。ルロワ香とも言うべき華やかさ、継ぎ目のない滑らかさ。印象的であり威圧的でない心地よさ。ジュヌヴリエールは、畑の位置的にもやや評価は低い銘柄ですが、その分早くから楽しめる魅力を持っているようです。
 レ・ボーモン97 : 97としてはややレンガの熟成が見える外観。バラの香り、中くらいのボディは心地よささえありますが、その体感温度の高さ、目の開き方はどうもボトルの状態に一抹の不安。これはこれで美味しいけれども、前後のヴィンテージと比較しても個性が違いすぎ。裏ラベルを見ると、正規物ではなかった。
 レ・ボーモン98 : 中程度の鮮やかなルビー。赤果実と紫のスミレ、十分なミネラルを感じるアロマ。体格勝負のワインでないだけに、あまりにも若い時点では判断が難しいワイン。余韻での収斂性、各要素のピントが合うまで少し置いておきたい98。
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)


Nuits-Saint-Georges Les Boudots
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・ブド
ニュイ・サン・ジョルジュ 赤 (PN,Pb,PL)
('99 \30,000位)

 ニュイ・サン・ジョルジュ、ブドの畑はヴォーヌ・ロマネとの村境に接するプルミエ・クリュ。その評価はグラン・クリュに肉薄するものがあり、パーカー氏は93年-99p、95年−94〜97p,96年-96+pという格別のポイントをつける、ルロワ・プルミエ・クリュでも最上級のワイン。
 99年のブド、悪かろうはずがありません。グラスを覗きこむだけで分かる情熱の赤いバラ。若いワインなれど陰鬱な表情など一切感じさせない黒と赤紫のコントラスト。同じプルミエ・クリュとしてはボーモンにはないはっきりとした重量感。このアペラシオンとドメーヌ・ルロワの個性が交わる様に唖然とするほど鮮明な果実味。今が美味しい、でもまだ美味しくなるのか・・そんなことはどうでもいいとまで思わせる一本。
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)プルミエ・クリュ

Chambolle-Musigny Les Fremieres
シャンボール・ミュジニィ・レ・フルミエール
シャンボール・ミュジニィ 赤 (PN,Pb,PL)
('94 \11,000位)

 シャンボールのワイン。フルミエールはボンヌ・マール寄りの一級畑に接しているものの村名格の畑。野イチゴ風味のキュートなワイン。94ヴィンテージとしては味のバランスを保っているものの、余韻を含め上品さがなく、どこがぼやけた印象。(もしかすると日本に入ってきて落ち着いていないか?) 他の造り手なら合格点でも赤キャップ、やはり何かを求めてしまいます。
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)


Savigny-les-Beaune Les Narbantons
サヴィニー・レ・ボーヌ・レ・ナルバントン
サヴィニー・レ・ボーヌ 赤 (PN,Pb,PL)
('98 \10,000位)

 第一印象から「にやり」とする濃縮度の高いアロマ。すり潰したイチゴの甘さ、ブラック・ベリーの深さ。現時点で不快な要素を全く持たず、あくまで旨味を表現することにフォーカスされた、飲むためのワイン。サヴィニー・レ・ボーヌにこの価格、普通だったら馬鹿馬鹿しくさえ思われる。しかし、ドメーヌ・ルロワはこのアペラシオンで最上のワインを造り出している・・・マダムのワインをこの価格で味わえるなら安い?
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)プルミエ・クリュ


Pommard Les Vignots
ポマール・レ・ヴィニョ
ポマール 赤 (PN,Pb,PL)
('97 \15,000位)

 レ・ヴィニョは、ポマール村の北側に位置する村名格の畑。(少し前までプルミエ・クリュだと勘違いしていました。) 97年は、心地よい赤果実、やや熟成の早さからくるお漬物の香り。目の詰まった個性は、密度よりスベスベした透明感。ポマールという土くささより可憐な印象で、ドメーヌ・ルロワとヴィンテージの個性が表現されてるようです。
(ドメーヌ・ルロワ : Domaine Leroy)


Domaine d'Auvenay - Grand Cru


Bonnes-Mares
ボンヌ・マール
シャンボール・ミュジニィ 赤 (PN,Pb,PL)
('98 \70,000位)

Mazis Chambertin
マジ・シャンベルタン
ジュヴレイ・シャンベルタン 赤 (PN,Pb,PL)
('97 \65,000位)
 マダムの個人所有となるドメーヌ・ドーヴネ。赤のグラン・クリュはこの二本だけ。限られた畑のブドウから丹念に仕込まれるワインは、ワインのオートクチュール。それぞれの生産量は、ボンヌ・マール870本、マジ・シャンベルタン582本。
 ボンヌ・マール98 : 今月のお題目:シャンボール・ミュジニー特集」の最後で触れたボンヌ・マール。「ボンヌ・マールとは"良いおかあさん"の意味。豊かなボディ、馥郁とした香り。何よりも飲む人を愛で包む豊かさが、まさに、ボンヌ・マール」 この言葉通り、シャンボールというよりモレ村の個性を示すゆったりとおおらかな熟度のある果実。若いワインなのに何故か落ち着きがある安心感と幸福感。
 マジ・シャンベルタン97 : ご一緒させて頂いた高島屋様のお話では「このワインの状態は本来の70〜80%」ということ・・・どこがいけないのだろう?状態の悪さなど感じられないのに。分かり易いラズベリー、スパイス、粘性の強いパワフルなボディは明瞭で好印象。もっと求める部分があるなら、シャンベルタンの筋肉?余韻の長さ?
(ドメーヌ・ドーヴネ : Domaine d'Auvenay)グラン・クリュ


Chevalier Montrachet
シュヴァリエ・モンラッシェ
ピュリニィ・モンラッシェ 白 (Ch,PB)
('97 \45,000位)

 ブルゴーニュの偉大な白の代表でもあるシュヴァリエ・モンラッシェ。ドーブネの白の中でも当然最高峰の一本。グリーニッシュで透明感あるゴールド。気高さのある清流の小石、スモークといったミネラル分の強さとレモン・ピール、マロン、洋ナシのアロマ。水分を抜いたような密度は硬さと柔らかさの極端なイメージさえ。しかし味わいの後半でちゃんとフルーツを感じる安堵感・・・とにかく旨い、97なら今でも飲める。もう一度飲みたい。
(ドメーヌ・ドーヴネ : Domaine d'Auvenay)グラン・クリュ


Domaine d'Auvenay - Premier Cru ...


Puligny-Montrachet Folatieres
ピュリニィ・モンラッシェ・フォラティエール
ピュリニィ・モンラッシェ 白 (Ch,PB)
('95 \20,000)('98 \20,000)

 1989年にマダムが買取ったフォラティエールの畑は0.51ha。ピュリニィでも名の通ったプルミエ・クリュ。上記のシュバリエ・モンラッシェと同じ要素を持つものの、ヴィンテージのせいか双方とも依然硬い。
 95年 : あくまで若さを主張する状態の良さ。グラスの中で小石がぶつかり合うようなミネラルの緊張感。それゆえリースリングと見間違うかのような冷たい質感とオイリーな表面。時間経過により、パイナップル、密の甘味が・・・その頃にはグラスのワインはなくなっているというジレンマ。
 98年 : 「これ開けたくて持ってきたんです」といわれ「えっ、本当に開けちゃうんですか!」と驚いた98年のフォラティエール。ドーブネの白は、赤キャップより時間が必要な気がします。98の生産量たった872本、このワインはNo.0006。
 やはり薫香を中心とするガッシリと強固な第一印象。硬いながらもグラスの中へは、グレープ・フルーツや洋ナシのコンポートといった熟れたフルーツ、そして高級バニラアイスクリームの香。隙のない舐めるような果実味は、余韻で舌の上に乗っかかってくる迫力。あと3年待っても95のようなんだから、開けてよかったのかも?(笑)
(ドメーヌ・ドーヴネ : Domaine d'Auvenay)プルミエ・クリュ


Meursault Les Narvaux
ムルソー・レ・ナルヴォー
ムルソー 白 (Ch,PB)
('97 \13,000位)

 ナルヴォーはネゴシアン・ルロワでもよく見る銘柄で、マダムが思い入れのある畑じゃないかなぁと思っています。ナルヴォーという畑はあまりムルソーぽくないと思うのは私だけ?
 冷たいハーブ・ティー、花梨、藁、スモークのアロマ、かすかにハニー。どこか繊細な日本酒を連想させるが、樽の風味ががっしり果実と結びつく堅強さ。高いアルコール感が余韻への苦味へと続く様は、もう少し時間を置いてみたい。
(ドメーヌ・ドーヴネ : Domaine d'Auvenay)


Auxey-Duresses Les Clous
オークセイ・デュレス・レ・クルー
オークセイ・デュレス 白 (Ch,PB)
('98 \10,000位)

 ルロワのお膝元、オークセイ・デュレス。草原を思わす爽やかさに、ほんのりトースティな香りが交ざる。若いだけまだ酸が強いけれど、決してそれだけで終わらない練れた果実とくっきりとした輪郭。このアペラシオンでも、随一の品格を持つワインでしょう。
(ドメーヌ・ドーヴネ : Domaine d'Auvenay)


Bourgogne Aligote Sous Chatelet
ブルゴーニュ・アリゴテ・スー・シャテレ
ブルゴーニュ 白 (Al)
('98 \5,500位)

 ドーブネはアリゴテも造っているんですね。95年辺りからあるらしいのですが、私は知りませんでした。スー・シャテレというのはドメーヌの裏手にあるパーセルの名前。
 緑がかった淡い色彩で、オレンジ・ピール、黄色い花、ハーブ系のつめたい香り。アリゴテですので酸はしっかりありますが、それが気にならないほどの果実の立体感さえ。ドーヴネならなんでも感心するというわけではないのですが、こういうアリゴテって初めて。やはり素晴らしいワイン。
(ドメーヌ・ドーヴネ : Domaine d'Auvenay)


今月のお題目2002年6月(2)
ではドメーヌ・ルロワの歴史等について紹介しています。

今月のワイン 目次
今月のワイン 前回 今月のワイン 次回



class30 "The Wine"