現在、世界の愛好家から注目を集めているドメーヌ・ルロワのワイン。DRCと決別したマダムは自分のドメーヌにて、究極のワイン造りを行っているようにさえ思えます。前編では、ルロワ社の歴史を中心に現在に至るまでの経緯を説明しました。今回はブルゴーニュの頂点と評されるドメーヌ・ルロワについて・・・All About。 |
1988年、日本企業の「フランス高島屋」がルロワ社に資本参加(株式の1/3)。マダム・ルロワはこの資本を元にヴォーヌ・ロマネの特級畑を所有するドメーヌ・シャルル・ノエラを買収、ドメーヌ・ルロワが誕生します。 続いて翌年には、ジュヴレ・シャンベルタン村のドメーヌ・レミーを手中に収め、22haを超える自社畑を所有する大ドメーヌとなります。
(注4 : 「招いた」というより高額の報酬で「引き抜いた」。オスピスはルロワに対しクレームをつけ、ポルシュレ氏に相応の報酬を提示したが戻らなかった。しかし結局マダムとの意見の対立から1994年にオスピスへ復帰。現在ポルシュレ氏はオスピスも去り、カリフォルニアのベリンジャーにいるらしい。) |
Domaine Leroy | Domaine d'Auvenay |
Chambertin * Latricieres Chambertin * Gevrey-Chambertin Les Combottes Gevrey-Chambertin Clos de la Roche * Musigny * Chambolle Musigny Les Charmes Chambolle Musigny Les Fremieres Clos de Vougeot * Richebourg * Romanee-Saint-Vivant * Vosne-Romanee Les Beaux Monts Vosne-Romanee Aux Brulees Vosne-Romanee Les Genevrieres Nuits-Saint-Georges Aux Allots Nuits-Saint-Georges Au Bas de Combe Nuits-Saint-Georges Les Boudots Nuits-Saint-Georges Aux Lavieres Nuits-Saint-Georges Les Vignerondes Corton-Renardes * Corton-Charlemagne * Savigny-les-Beaune Les Narbantons Pommard Les Vignots Pommard Les Trois Follots Volnay Santenots |
Mazis Chambertin * Bonnes Mares * Meursault Chaumes de Perrieres Meursault Les Gouttes d'Or Meursault Les Narvaux Meursault Pre de Manche Meursault Chevalier Montrachet * Criots Batard Montrachet * Puligny Montrachet La Richarde Puligny Montrachet Les Folatieres Auxey Duress Les Boutonnier Auxey Duress Les Clous Auxey Duress Bourgogne Aligote Sous Chatelet Bourgogne Aligote |
* はグラン・クリュ 、赤 白 で表示しています。 ルロワは畑を買い足していますし、まだ種類はある と思いますが、確認できる主要な畑を記載しました。 |
現在ではDRCを凌ぐとさえ言われる品質を実現し、格別の評価を受けるこれらのワインは、当然その価格も別世界。正規価格では比較的廉価なドーブネのオークセイ・デュレスでさえ1万円ということですし、グラン・クリュとなると10万という値がつく事も。また、各畑の所有面積はさほど広くないため、市場に出た後もプレミアムがつき高騰することもしばしば。例えば、ミュジニーの畑は0.27haであり、その年産は600本前後。ドーヴネで生産しているボンヌ・マールは0.26ha、クリオ・バタール・モンラッシェに至っては0.06haしかなく年産なんと72本のみでした(注8)。 1933年生まれのマダムの年齢を考えると「実際にワイン造りに携わるのは、あと数年?」と噂される昨今。現在でも伝説のように語られるワインが、本当に幻となる日が来ない事を願うばかり。 (注7 : ドメーヌ・ルロワ、ドメーヌ・ドーブネ共に、基本的には赤ワインに赤いキャップ、白ワインに白いキャップが用いられています。ドメーヌ物が「赤キャップ」と呼ばれるのは、ドメーヌ・ルロワが殆ど赤ワインだから。コルトン・シャルルマーニュには、ネゴシアン物、ドメーヌ物の両方が存在しますが、どちらも白いキャップで紛らわしい。ラベルで判断するしかない。) |
ルロワについて知る限りの事象をまとめてきましたが、最後に実際のワインの味わいについて。これについては、多くのプロの方の文献にも記されていますが、巷でよく耳にするルロワ・ファンとしては気になる疑問点を、高島屋ルロワ担当者K様のお話を中心に、個人的な感想も含めてご紹介したいと思います。 |
■メゾン・ルロワとドメーヌ・ルロワの違い |
その違いは当然買い付けブドウと、自社畑のブドウという事になるわけですが、味わいとしての差を大まかに言うと「長熟型のネゴシアン物」と「比較的早くから楽しめるドメーヌ物」ということ。両者の同ヴィンテージを比べた感覚からいうと、ミネラルの多い硬い味わいのネゴシアン物に対し、フルーツの塊のような非常に密度の高い果実、しかしその中に柔らかさが感じられるドメーヌ物という気がします。 |
■ドメーヌ・ルロワとドメーヌ・ドーブネの違い |
生産本数が少なく幻のように語られるドーブネと、ドメーヌ・ルロワの相違点は、私自身非常に興味あった事で、造り方その他、マダムの個人所有であるドーブネに何か特別な施しがあるのかK様にお聞きしました。両者の味わいについては、赤中心のドメーヌ物と白が多いドーブネですので一概に比較は難しいと思いますが。 そのお答えとしては、まず「栽培・醸造において両者の差はほとんど無いでしょう」という事。「ただその差があるとしたら、リリースされるまでの2、3年の間、保管されるセラーの場所が違う」というお答えでした。これはヴォーヌ・ロマネ村に醸造所・セラーを構えるドメーヌ・ルロワと、サン・ロマンにあるドーブネでは、その標高がかなり違う。ヴォーヌ・ロマネ村の村落が標高250mだとすると、サン・ロマンは約350mの辺りにあり高台に位置するため風も強い。「ドーヴネには、そんな場所をイメージさせる少し"ひんやり"としたテイストがありませんか?」というお言葉に納得。 |
■ドメーヌ・ルロワの熟成能力 |
年頭に掲示板でも紹介しましたが、ドメーヌ・ルロワ90年ヴィンテージの水平という会に参加させて頂きました。(当日のラインナップはこちらで紹介しています。)グラン・クリュ5種、プルミエ・クリュ1種という大変貴重なワイン。そして12年前のワインということで、その熟成能力はいかに?という面でも興味深い試飲でした。 その時の感想としては、全体的に未だ若さも残すワインで、同年他社のブルゴーニュワインと比較しても一段上の構成を保っています。テロワールを重んじる各畑の個性も体感できたと思っていますし、やはり90年というヴィンテージの中でも最上級のワインであることは間違いないでしょう。 ただしビオディナミに取り組む生産者にとって、土地が本来の力を取り戻すことが最大の課題であり、この時点で十分な効果を表しているとは思えません。12年前に遡り、これらのワインが味わえたとして今のドメーヌ・ルロワと比較すると「現在のポテンシャルの方が優れているのではないか?」というのが正直な感想で、それほどまでに昨今のワインは素晴らしいと思っています。 先に書いたように、赤キャップには若いうちから親しみやすささえ感じることがあるので、その熟成能力を問う声もあると思いますが、100%新樽にも関わらず樽香が必要以上に感じられない点や、過剰なタンニンといった要素がないのは、ワインが持つ「果実の力」がすべてを覆い隠しているように思えます。 個人的にはこれらのワインが年月を経ても素晴らしいものであると確信していますが、そんな事より問題なのは、果実感たっぷりの若いワインの美味しさで、入手した途端にナイフを持ち、抜栓したくなる気持ちを抑制できない事ではないでしょうか? 私はいつまで経っても熟成した赤キャップは飲めそうにありません。 |
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