February 2002 (2)

今月の御題目

ヴァーチャル・ブルゴーニュ・ツアー Vol.2
さぁ、ブドウ畑へ! ディジョン近郊

 さて、お勉強をしたところで、そろそろブルゴーニュに向って旅立ちましょう!パリでのお買い物は帰りにするとして、TGVに乗り一路ディジョンヘ。

 TGVで1時間半、車窓いっぱい穏やかな丘陵に広がる葡萄畑が見えてくると、そこはブルゴーニュ地方。ディジョンはかつてブルゴーニュ公国の都として、パリと共にフランスの芸術、料理、そして文化の中心として栄えた歴史を持ちます。市内には歴代大公が住んでいた宮殿を始め、数々の力強さと荘厳さを兼ね備えた教会など見所も多い。(写真はディジョンの街並み)

 そしてディジョンで忘れてはいけないのがグルメ。「フランスの食卓」と呼ばれるだけあって素敵なレストランもいっぱい。ここディジョンで生まれたエスカルゴは、パセリとガーリックバター風味の本場ブルゴーニュ風で。そしてブルゴーニュの赤ワインで煮込むブッフ・ブルギニヨンは有名ですね。またマスタードやカシスリキュールも名産なので、お土産に買っておいてと。

 ディジョンを起点とする旅にはレンタカーを借りるのが便利。フランスの小粋な車を借りて・・・畑の間の道は狭いので小さな車がいいかな。さぁ、畑へ出発!


マルサネ、フィクサン...

 コート・ド・ニュイって、ジュヴレイ・シャンベルタンが最も北だと思われがちですが、その手前に目立たないながらも優良な産地があります。

 「Route des Grandes Crus : グラン・クリュ街道」を走っていくと、最初の畑に出会うのは、シュノーブという村。そしてマルサネ、クーシイ、フィクサン、ブロションという村々となります。アペラシオンとしては「マルサネ」「フィクサン」というワイン生産地、ちょっと立ち寄ってみます。

■マルサネ : Marsannay

 ディジョンから数キロという近さもあって、コート・ディジョネと呼ばれていたこの辺りは、過去、ディジョンに向けてのワイン生産が盛んでした。フィロキセラの後、長く打撃から立ち直れず、その後は20世紀になるまで、主にガメイ種が植えられ、日常ワインを生産してきました。

 1950年代になり、マルサネにピノ・ノワールをもたらしたドメーヌ・クレーユ・ダユ注1のジョセフ・クレールがロゼワイン造りの先鞭をつけ、ロゼワインの産地として知られるようになります。
 1956年には「ブルゴーニュ・マルサネ」または「ブルゴーニュ・ロゼ・ド・マルサネ」を名乗ることが出来るようになり、1987年、ようやく「マルサネ」「マルサネ・ロゼ」の呼称でコート・ドールの仲間入りをすることが出来ました。マルサネACの認定地域は、両隣のシュノーブ、クーシイ村を含み、赤、ロゼだけでなく白ワインの生産も許されています。なお、マルサネには、グラン・クリュ及びプルミエ・クリュはありません。

 ロゼが有名ですが、私はまだこの地のロゼを飲んだことがない。東京の有名なワインショップを数件周った時も「マルサネのロゼがありますか?」という問いに、「ありません」との返事が返ってきた。美味しいロゼがあるらしいんですが、今、ロゼは人気がありませんね。今回の旅でも頂くことができなかった・・・残念。

注1 : ドメーヌ・クレーユ・ダユは1985年にルイ・ジャド社が買い取り、今ではルイ・ジャドのラベルで出荷されています。)

■フィクサン : Fixin

 ナポレオン=シャンベルタンのイメージが強いですが、実はフィクサン村の方がナポレオンに因んだものが沢山ある。丘の頂上付近にあるノワゾ公園には「眠れるナポレオン」なる銅像があるし、クロ・ナポレオンなんていうプルミエ・クリュもある(写真右、ナポレオンが描かれている)

 この村のワインは、よくジュヴレイ・シャンベルタンと比較され、弟格と言ってもよいと思います。実際、ジュヴレイ・シャンベルタンと隣接し(ブロションを挟んでますが)、土壌の系統も似ているという。土の匂いがし、良品は優れたミネラルを持つ。グラン・クリュはないけれども、プルミエ・クリュが6区画(22ha)あり、赤ワインが中心、白の生産も認められています。

代表的なプルミエ・クリュ
クロ・ナポレオン : Clos Napoleon (1.8ha)、クロ・ド・ラ・ペリエール : Clos de la Perriere (6.7ha)



コート・ド・ニュイ・ヴィラージュって??

 さて、ジュヴレイ・シャンベルタンに入る前に、この辺りに関連のある豆知識を。

 「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」ってワイン、知ってますよね? これって、何処で造られたものかご存知ですか? コート・ド・ニュイの村々で造られたものは、すべて「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」を名乗れそうですが、実はそうじゃないのです。

 フランスにおける「ヴィラージュ」という表記は「ボージョレ・ヴィラージュ」「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ」のように並みのお酒よりも一等級上という意味合いがあります。コート・ド・ニュイの場合は、さらに信頼のおける言葉となっていて、限定された5つの村から産出されたもののみが名乗れる。これが、フィクサンブロション、そしてニュイ・サン・ジョルジュの南に位置するプレモー・プリセ、コンブランシアン、コルゴロアンの5つの村。この中で、唯一フィクサンだけが、村名をラベル表示する事も許されています。

 実際にこれらの村は、ジュヴレイ・シャンベルタン村であったり、ニュイ・サン・ジョルジュ村の地続きで、国道74号線の西側の優良な条件の斜面に畑があります。つまりラベルに村名が表示できる村名ワイン達(ジュヴレイ・シャンベルタン、ニュイ・サン・ジョルジュ等)と同格といってもいいほどで、総じてワインの水準が高い。

 個人的に初めてブルゴーニュのワインを飲んで感銘を受けたのが、ジャイエ・ジルの造ったコート・ド・ニュイ・ヴィラージュ(写真)でした。今でもこのワインは、そこらの村名ワインの品質に勝るとも劣らないと思っていますし、信頼できる一本。コート・ド・ニュイ・ヴィラージュというワイン、目立たないですが、廉価で美味しいブルゴーニュをお探しの方は、目を向けるべきアペラシオンのように思います。

参考 : マルサネでロゼが有名になったあと、この地の生産者達は「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」の認定が欲しかったようですが、5つの村に反対されて、仲間に入れてもらえなかった。1987年にINAO(原産地呼称委員会)が「マルサネ」という単独のアペラシオンを与えたことは、まさに棚からぼた餅状態。
地図 : 「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」の指定栽培地域は、フィクサン103ha、ブロション42ha、プレモー・プリセ17ha、コンブランシアン59ha、コルゴロアン84ha。 ブロション Brochon は、村の南側半分(ジュヴレイ・シャンベルタン側、地図上で淡いピンクの部分)からのワインは、ACジュヴレイ・シャンベルタンを名乗れる。北半分(フィクサン側、黄色の部分)は、コート・ド・ニュイ・ヴィラージュとなります。


今月の味わいのあるワイン2002年2月
ではマルサネ、フィクサン他のワインを紹介しています。

ヴァーチャル・ブルゴーニュ・ツアーにおける参考文献や使用写真についてはこちらをご覧下さい。

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