TGVで1時間半、車窓いっぱい穏やかな丘陵に広がる葡萄畑が見えてくると、そこはブルゴーニュ地方。ディジョンはかつてブルゴーニュ公国の都として、パリと共にフランスの芸術、料理、そして文化の中心として栄えた歴史を持ちます。市内には歴代大公が住んでいた宮殿を始め、数々の力強さと荘厳さを兼ね備えた教会など見所も多い。(写真はディジョンの街並み) そしてディジョンで忘れてはいけないのがグルメ。「フランスの食卓」と呼ばれるだけあって素敵なレストランもいっぱい。ここディジョンで生まれたエスカルゴは、パセリとガーリックバター風味の本場ブルゴーニュ風で。そしてブルゴーニュの赤ワインで煮込むブッフ・ブルギニヨンは有名ですね。またマスタードやカシスリキュールも名産なので、お土産に買っておいてと。 ディジョンを起点とする旅にはレンタカーを借りるのが便利。フランスの小粋な車を借りて・・・畑の間の道は狭いので小さな車がいいかな。さぁ、畑へ出発! |
「Route des Grandes Crus : グラン・クリュ街道」を走っていくと、最初の畑に出会うのは、シュノーブという村。そしてマルサネ、クーシイ、フィクサン、ブロションという村々となります。アペラシオンとしては「マルサネ」「フィクサン」というワイン生産地、ちょっと立ち寄ってみます。 ■マルサネ : Marsannay ディジョンから数キロという近さもあって、コート・ディジョネと呼ばれていたこの辺りは、過去、ディジョンに向けてのワイン生産が盛んでした。フィロキセラの後、長く打撃から立ち直れず、その後は20世紀になるまで、主にガメイ種が植えられ、日常ワインを生産してきました。 1950年代になり、マルサネにピノ・ノワールをもたらしたドメーヌ・クレーユ・ダユ(注1)のジョセフ・クレールがロゼワイン造りの先鞭をつけ、ロゼワインの産地として知られるようになります。 ロゼが有名ですが、私はまだこの地のロゼを飲んだことがない。東京の有名なワインショップを数件周った時も「マルサネのロゼがありますか?」という問いに、「ありません」との返事が返ってきた。美味しいロゼがあるらしいんですが、今、ロゼは人気がありませんね。今回の旅でも頂くことができなかった・・・残念。 (注1 : ドメーヌ・クレーユ・ダユは1985年にルイ・ジャド社が買い取り、今ではルイ・ジャドのラベルで出荷されています。) ■フィクサン : Fixin
この村のワインは、よくジュヴレイ・シャンベルタンと比較され、弟格と言ってもよいと思います。実際、ジュヴレイ・シャンベルタンと隣接し(ブロションを挟んでますが)、土壌の系統も似ているという。土の匂いがし、良品は優れたミネラルを持つ。グラン・クリュはないけれども、プルミエ・クリュが6区画(22ha)あり、赤ワインが中心、白の生産も認められています。 代表的なプルミエ・クリュ |
さて、ジュヴレイ・シャンベルタンに入る前に、この辺りに関連のある豆知識を。 「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」ってワイン、知ってますよね? これって、何処で造られたものかご存知ですか? コート・ド・ニュイの村々で造られたものは、すべて「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」を名乗れそうですが、実はそうじゃないのです。
実際にこれらの村は、ジュヴレイ・シャンベルタン村であったり、ニュイ・サン・ジョルジュ村の地続きで、国道74号線の西側の優良な条件の斜面に畑があります。つまりラベルに村名が表示できる村名ワイン達(ジュヴレイ・シャンベルタン、ニュイ・サン・ジョルジュ等)と同格といってもいいほどで、総じてワインの水準が高い。 個人的に初めてブルゴーニュのワインを飲んで感銘を受けたのが、ジャイエ・ジルの造ったコート・ド・ニュイ・ヴィラージュ(写真)でした。今でもこのワインは、そこらの村名ワインの品質に勝るとも劣らないと思っていますし、信頼できる一本。コート・ド・ニュイ・ヴィラージュというワイン、目立たないですが、廉価で美味しいブルゴーニュをお探しの方は、目を向けるべきアペラシオンのように思います。 参考 : マルサネでロゼが有名になったあと、この地の生産者達は「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」の認定が欲しかったようですが、5つの村に反対されて、仲間に入れてもらえなかった。1987年にINAO(原産地呼称委員会)が「マルサネ」という単独のアペラシオンを与えたことは、まさに棚からぼた餅状態。 |
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