December 2001 (2)

スペイン特集 Vol.3
テルモ・ロドリゲス特集

Valderiz '99
Molino Real '99
Basa '00
Gago '99
Dehesa Gago '00
Lanzaga '98


Telmo Rodriguez

 前回、前々回でもご紹介したテルモ・ロドリゲス氏。ボルドー大学で醸造学を学び、ボルドー格付け2級のシャトー・コス・デストゥルネル等で修業。「スペインのアンファン・テリブル」「リオハの異端児」と呼ばれる彼は「ワインの味を決めるのは法律ではなく、私とワイン自身だ」というポリシーを持ち、現代ニュー・ウェーブ・スパニッシュの牽引役ともいえる存在。

 父親が所有していたレメリュリの評価を高めた事はよく知られていますが、親子での意見が合わず、残念がなら1999年にレメリュリを去ってしまったようです。そんな彼は、近年、スペイン各地でエノロゴとして活躍。普通、醸造コンサルタントは依頼のあった各地のワイナリーを飛び回るものですが、彼の場合は自分が造りたい地域に畑を所有したり、あるいは良質な畑を持つワイナリーにジョイント・ヴェンチャーの話を持ち込み、醸造所を借りてワインを仕込みます。

 そのプロジェクトは急ピッチで進められており、本拠地リオハ(ランザガ)を始め、リベラ・デル・ドゥエロ(ヴァルデリス)、トロ(ガーゴ)、ルエダ(バーサ)、ナバーラ(ヴィーニャ・デ・アマ)、マラガ(モリノ・レアル)、そしてお隣のポルトガルでも着手。1990年代末より彼独自のブランドのラベルを貼ったワインが続々と誕生しています。以下、日本に到着しはじめたテルモ・ロドリゲスの手掛けるワイン達です。

父親のワイナリー、レメリュリはこちら
Remelluri Gran Reserva '90

アルバロ・パラシオス氏とのジョイント、ブルジョワはこちら
Bourgeois '98


Spain-Ribera del Duero


Valderiz
ヴァルデリス

リベラ・デル・ドゥエロ 赤 (テンプラニーリョ100%)
('99 \2,500位)

 1998年が初ヴィンテージ。リベラ・デル・ドゥエロ、ロア村のエステバン氏と組んだJV。樹齢17〜28年のテンプラニーリョ100%、90%フレンチオーク+10%アメリカンオーク(新樽、二年樽が半々)のバリックにて18ヶ月間熟成。
 最新ヴィンテージの1999は、やや難しい年となった作柄を考えると非常によくまとまったワイン。柔らかなフルーツ香が心地よく、クリアーな果実のミディアム・ボディ。従来のスペインを感じさせないのは多分フレンチオークが多いからでしょう。深いガーネット色に生産者の努力が見えるよう。他のテルモのワインもそうですが、エチケットがとてもセンス良く、思わず手にとりそうな外観です。
(Bodegas y Vinedos Valderiz)


Spain-Malaga


Molino Real
モリノ・レアル
マラガ 白 (モスカテル)
('99 \4,300位 500ml)

 南スペインのアンダルシア地方。シェリーの産地として有名なヘレスの東方にマラガというDOがあります。19世紀のイギリスでは、マラガは「マウンテン・ワイン」の産地として知られ、その甘口ワインは圧倒的な人気を誇っていました。
 このモリノ・レアルのラベル下部には「Mountain Wine」と記されており、上記のテルモ・ロドリゲスがマラガでの伝統である甘口ワインを復興させようとリリースしたワイン。モスカテル種を100%使用、96、97年は収穫後、醸造まで行なわれましたが、テルモは満足できずに98年が事実上の初ヴィンテージに。この99年の生産量はたったの4100本。

 モスカテルという品種は基本的にはマスカットと同種だと思います。そういう意味でも北イタリアのモスカート・ダスティの味わいに似ています。(カッシーナ・カストレット社のアヴィエというワインを思い出した。)マスカット風味の爽やかなアロマ。貴腐による甘口ではないようで、ブドウのピュアな甘さが重さを感じさせません。多くの人に好まれそうな甘口ですが、数が少ないだけに価格はちょっと高い。
(Telmo Rodriguez - Bodegas Almijara)


Spain-Rueda


Basa
バサ

ルエダ 白 (ベルデホ80%、ビウラ15%、ソーヴィニヨン・ブラン5%)
('00 \1,200位)

 前回ご紹介したように注目の白ワイン産地、ルエダのワイン。ルエダで栽培が盛んになっているヴェルデホ種に、ビウラ、ソーヴィニヨン・ブランをブレンド。アメリカでは、スペインの白ワインで2番目の販売量を誇っているらしい。ソーヴィニヨン・ブランのような印象、ほのかな甘味を感じるフレッシュで軽やかな白ワイン。
(Telmo Rodriguez)


Spain-Toro


Dehesa Gago
デヘサ・ガーゴ

トロ 赤 (テンプラニーリョ100%)
('00 \1,400位)

Gago
ガーゴ

トロ 赤 (テンプラニーリョ100%)
('99 \2,200位)

 1994年以来、トロ地区のボデガス・トレサナスの醸造所を借り、開放型発酵樽やバリックを持ち込みワインを造り始めたもの。ステンレスタンクのみで醸造するデヘサ・ガーゴ、バリックで10ヶ月の熟成を施すガーゴ。そしてこの2本の上のクラスとして樹齢60年以上のブドウを用いバリック熟成17ヶ月というパゴ・ラ・ハラ(Pago la Jara)があるようです。
 デヘサ・ガーゴ : このワインを飲んだ時には、ステンレスタンクのみとは知らなかったのですが、それでも「ボージョレ・ヌーボーみたい」という第一印象。鮮やかなガーネットのワインで、フレッシュで愛らしい赤いベリー系の香り。イースト系のニュアンスがあるナチュラルなミディアム・ライトで、綺麗な酸味が上手く溶け込んでいます。素直に飲んで美味しい好感の持てるワイン。
 ガーゴ : 平均樹齢50年、熟成は100%フレンチオークの新樽で10ヶ月。かぐわしいアロマは、乾燥フルーツやいちぢく、ほんのり焦し砂糖のような甘さのある香り。タンニンも柔らかで、充実した果実のバランスがとてもいい。これはお値打ち。センスの良い大きな「g」のボトルデザインと共に、今回のワインの中で一番のお気に入り。
(Telmo Rodriguez - Bodegas Toresanas)


Spain-Rioja


Lanzaga
ランザガ

リオハ 赤 (テンプラニーリョ主体、ガルナッチャ、カリニャン)
('98 \2,000位)

 これはテルモのお膝元リオハのワイン。樹齢40年というブドウ、ヴァルデリスと同じく18ヶ月のバリック(アメリカンとフレンチが50%ずつ)熟成。この1998年が初ヴィンテージ。
 明るめガーネット色。ドライフラワー、赤いチェリー。比較的高めの酸を感じるミディアムボディで、少しの収斂性と乾いたタンニンの余韻。テルモが手掛ける他のワインに比べると古典的なスペインの雰囲気を残すワインは、彼がリオハという土地に愛着を持っているからかも?なんて考えてしまいました。
(Telmo Rodriguez - Bodegas Murua)


 今回のワインを頂いてみると、「スペインのアンファン・テリブル」「リオハの異端児」と呼ばれるテルモは、そんなに改革を急いでいるのではないような気がします。価格帯も1000円から2000円代が中心で、それらはナチュラルでもあり決して奇をてらうワインではありません。世界を視野に入れながら、今のスペインをよく見つめた一人の青年が造るワイン。機会があれば試してみて下さい。ガーゴ、ヴァルデリス辺りがいいと思いました。


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