June 2001 (2)

ローヌ特集 Vol.3
Super Rhone (AC Cotes-du-Rhone etc.)

Cotes-du-Rhone Village Rasteau '99
Cotes du Rhone Villages Rasteau "Cuvee Confiance" '97
Cotes du Rhone Villages Cairanne "Cuvee l'Ebrescade" '98
Cotes du Rhone Villages Cairanne "Haut-Coustias" '98
Cotes-du-Rhone Blanc de Blanc '82
Cotes-du-Rhone Reserve '98
Cotes du Rhone "Clos de l'Hermitage" '98
Cotes du Rhone Les Cranilles '98
Cotes du Rhone Grande Reserve '99
Cotes-du-Rhone "A.Pascal" '95 '99
Cotes-du-Rhone "Le Gramenon" '98
Muscat de Beaumes-de-Venise
Marc Vieux Eau de Vie des Cote du Rhone

(特にお気に入りのワインには マークを付けています)


France-Cotes du Rhone


Cotes du Rhone Village Rasteau
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・ラストー
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ70%、シラー&ムールヴェードル15%、カリニャン)
('99 \4,200位)

 まだ20代という若きブドウ栽培家、熱心な醸造家、ジェローム・ブレッシーのドメーヌがグール・ド・モータン。父親が協同組合長を務めていた関係で樹齢の高い(平均60年、100年以上の区画も) 好立地の畑を所有していながらワインは共同組合に売られていました。 ブレッシーの代になり96年より一部元詰め、残りをネゴシアンに売るように。彼は父親の仕事を手伝う傍ら、シャーヴなどの若く意欲的な醸造家とラヤスやボーカステルといったトップの造り手を周り醸造技術を習得。まさにこれからの注目株。

 初めて元詰めした96年を頂いた時にも感激したのですが、今回はさらにビックリ。作柄の良いこの年から新樽を15%ほど使ったというワインは、向こうが見えない紫の濃い色調。グラスに入れると泡まで紫。ねっとりとした脚がグラスから落ちないほどのグリセリンの高さは、外観だけで強烈な印象。ピュアなバイオレット、甘苦い漢方薬。濃縮した甘さのあるアタックからよくまとまったボディ。ギッシリとした余韻を残し、ワインの秀逸さを物語っています。このワインが良い悪いは別としても「Jerome Bressy」と名を入れた新しいエチケットも写真のように現代的なデザインに変更、ボトルもDRC風の迫力あるものに詰めた若きジェロームの意気込みが十分に感じられます。アルコール度数14%。
(ドメーヌ・グール・ド・モータン : Domaine Gourt de Mautens)

Cotes du Rhone Villages Rasteau "Cuvee Confiance"
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・ラストー "キュヴェ・コンフィアンス"
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ80%、シラー10%、ムールヴェードル10%)
('97 \3,000位)

 上記のグール・ド・モータンと共に、ラストーの良さを教えてくれたのが、ドメーヌ・ラ・スマード。当主アンドレ・ロメロ氏も70年代までは、協同組合で働いていましたが、今ではラストーを代表するドメーヌの一つとなっています。コンフィアンスとは「自信作」の意味で、アンドレ・ロメロ氏のプレミアムワイン。グルナッシュはなんと100年という樹齢、その他のブドウの樹も40から50年で、収穫量は12hl/haに抑えられています。
 健全な赤紫色。酵母の香りとチェリー。コンフィアンスとするにはヴィンテージが影響していると思いますが、ジューシーで飲み口のよいバランス。
(ドメーヌ・ラ・スマード / アンドレ・ロメロ : Domaine la Soumade / Andre Romero)


Cotes du Rhone Villages Cairanne "Cuvee l'Ebrescade"
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・ケランヌ "キュヴェ・レブレスカード"
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ)
('98 \3,700位)

 村名をラベルに付することの出来るコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ16の村の中で、最上と目されるのがケランヌの村。マルセル・リショーは、ドメーヌ・オラトワール・サンマルタン、ドメーヌ・ラヴァッセ・シャラヴァンと共に、この地でのリーダー的な存在であり、その品質は際立っていると言われます。1980年代後半、父から特に樹齢の高いグルナッシュを有する畑を引き継いだ彼は、その父がケランヌの協同組合のお偉方だったにも関わらず、ワインの元詰めを開始します。このレブレスカードは、リショー氏が特別な優良収穫年にのみ仕込むプレスティージュ。

 パーカー氏はこのワインに点数をつけず「?」とした上で「疑問符がついているのは、国際的なスタイルをしており、高いレベルのタンニンや過度と言える量のオークの新樽を感じられるためである」としていますが、個人的には絶賛したいもの。
 黒豆、甘納豆のような甘さ。石灰やハーブの複雑な香りもありながら、まるでポートのような目の詰まった滑らかな質感、凝縮というより黒果実を煮詰めた風。低めの酸とまったりした飲み口が好きな人にはたまらないワイン。少し熟成させて試してみたいです。
(ドメーヌ・リショー / マルセル・リショー : Domaine Richaud / Marcel Richaud)


Cotes du Rhone Villages Cairanne "Haut-Coustias"
コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ・ケランヌ "オー・クスティア"
コート・デュ・ローヌ 赤 (ムールヴェードル50%、シラー50%)
('98 \3,200位)

 こちらもコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ、ケランヌの産。この地で5ツ星の生産者と評価されるロラトワール・サンマルタンのベルナール・アラリィ氏は指導的な立場にある人物。オー・クスティアはサンマルタンの最上級キュヴェで、良年にのみ造られます。畑は2ha、平均樹齢60年、生産量は僅か500ケース。12日間の発酵後、ブルゴーニュのドメーヌ・ラルローなどが一年使ったオーク樽で18ヶ月熟成、ノンフィルターでのボトリング。
 スミレ、八角、ブラックベリー、ミルクキャンディの甘さを持つアロマ。締りのある果実は、滑らかで優しくさえ感じるアタック。樽から木の香りと渋味が余韻へ続くワインは、やや高めの温度の方が個性が感じられると思いました。
(ドメーヌ・ド・ロラトワール・サンマルタン / アラリー家 : Domaine de l'Oratoire Saint-Martin / F & F Alary)

Cotes-du-Rhone Blanc de Blanc
コート・デュ・ローヌ・ブラン・ド・ブラン
コート・デュ・ローヌ 白 (ブールブーラン?)
('82 \3,500位)

 こちらはシャプティエのACコート・デュ・ローヌ、1982年という珍しいワイン。「Blanc de Blanc」と記されていましたが、今この名のワインは見当たらない。エチケットのデザインから現行の「キュヴェ・ド・ベルルーシュ : Cuvee de Belleruche」にあたるものでしょうか?
 丸みを帯びた酒質は日本酒的なアルコール感。熟成による栗っぽさとシェリー香。さすがにボディは抜けているようですが、古いローヌの白を体験するという意味では面白いワインでした。
(M. シャプティエ : M. Chapoutier)


Cotes-du-Rhone Reserve
コート・デュ・ローヌ・レゼルヴ
コート・デュ・ローヌ 白 (グルナッシュブラン)
('98 \1,800位)

 前回の今月のワインで紹介したシャトー・ラヤス。当主ジャック・レイノー氏が亡くなった後、ラヤスを任されているのは、妹のフランソワーズさんと甥のエマニュエル氏。このワインのシャトー・デ・トゥールのオーナーは、そのエマニュエル・レイノー氏。
 青草、石灰、白い花のニュアンス。きっちりとした酸が全体をここちよくまとめる白で、濃厚とまでは言えないものの、余韻での苦味に加え、ふっと甘さを感じさせるあたりはさすがです。
(シャトー・デ・トゥール / E. レイノー : Chateau des Tours / E. Reynaud)


Cotes du Rhone "Clos de l'Hermitage"
コート・デュ・ローヌ "クロ・ド・レルミタージュ"
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル)
('98 \4,800位)

 ワイン好きはF1も好きな人が多いかな? F1ドライバー、ジャン・アレジ。日本では、国民的美女、後藤久美子さんのお相手として注目されました。1989年のデビュー戦での4位入賞、1990年アメリカGPでは、非力なティレルのマシンでかつての王者アイルトン・セナと熾烈なデッドヒートを演じた名場面が思い起こされます。フォラーリに移り1995年カナダGPにて悲願の初勝利。今では現役ドライバーの中では長老(1964年生まれ)となりましたが、彼のアグレッシヴなドライヴィングは多くのF1ファンを惹きつけています。

 前置きが長くなりましたが、そんな彼のワインがこの"クロ・ド・レルミタージュ"。イタリア系フランス人であるアレジが生まれ育った町がアヴィニョンで、ここに家を買った時にブドウ畑があったようです。それまでワインに興味が無かったアレジですが、畑の管理を任されていたアンリ・ド・ランザック氏の話を聞くうちに情熱を燃やしたと言います。地元のワイン・コンクールでは金賞を受賞し、人気も高まっているという事ですが、あえてワイン名にアレジの名を入れていない所に彼の誠実さが伺われます。
 ほんと予想以上に美味しいアレジのワイン。濃い赤紫、木苺のアロマに木樽の香り。高いアルコール感、乾いた表情の余韻。果実味も十分でこれからの季節、ハーブを効かしたサラダや冷たいトマト料理なんかがいいと思います。ACコート・デュ・ローヌとしては高いけど、F1ファンは是非!
(アンリ・ド・ランザック : Henri de Lanzac)


Cotes du Rhone Les Cranilles
コート・デュ・ローヌ・レ・クラニーユ
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ他)
('98 \3,200)

 新進気鋭の醸造家の活躍が話題のローヌ。イヴ・キュイユロン、ピエール・ガイヤール、フランソワ・ヴィラールという優秀な若手醸造家3人によるジョイント、1995年から始めたネゴシアンがヴァン・ド・ヴィエンヌ。コート・ロティ、エルミタージュから、このACコート・デュ・ローヌやヴァン・ド・ペイまで手掛けています。
 鮮やかな赤紫、しっかりと粘度のあるワイン。チェリー、イチゴジャム、スミレのアロマ。赤い果実のしなやかなミディアム・ボディに適度な酸がからむ心地よさ。厚みのあるボトル、センスの良いエチケット。ローヌ新時代の到来を感じます。
(レ・ヴァン・ド・ヴィエンヌ : Les Vins de Vienne / Cuilleron・Gaillard・Villard)


Cotes du Rhone Grande Reserve
コート・デュ・ローヌ・グランド・レゼルヴ
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ60%、シラー30%、カリニャン10%)
('99 \2,400位)

 日本では「タイユヴァン」しか扱っていなかったらしい?まあそれはいいとしても、この手書きのエチケット、黒いワックスキャップに一目惚れ。その肩書きを紹介すると「平均樹齢50年以上。手摘み収穫し、選別、適度な傷を付け、樹脂で覆った発酵タンクで 10日間発酵。その後乾燥による水分除去、垂直圧搾機による搾りかすの圧搾、上澄みと圧搾後の果汁を混ぜて、マロラティック発酵が完了します。1〜2ミクロンの珪藻土とカートリッジでろ過し、瓶詰め後は地下カーヴで熟成させます。」ということ。
 実にチャーミングでキャラメルのような甘さに親しみがわきます。ボージョレにも似たフレッシュなワインは、熟したブドウを頬張っているような質感で、思わずニコリとしてしまいます。こんなワインがデイリーで飲めたらいいですね。
(シャトー・デュック : Chateau d'Yuques)


Cotes-du-Rhone "A. Pascal"
コート・デュ・ローヌ "A. パスカル"
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ)
('95 \7,000位)('99 \6,000位)
Cotes-du-Rhone "Le Gramenon"
コート・デュ・ローヌ "ル・グラメノン"
コート・デュ・ローヌ 赤 (グルナッシュ、シラー、ムルヴェードル)
('98 \2,300位)

 R.パーカー氏曰く「控えめな価格で偉大なワインを探しているなら、ドメーヌ・グラメノン以外のところを見る必要は無い」。元ギガル社の醸造責任者をつとめていたフィリップ・ローラン氏と妻のミッシェル・ローランのドメーヌは、ローヌ南部で最も偉大なブドウ園のひとつ。ローヌ南部では最も北よりの、ヴァンソーブルという地区にあります。ワインは一切農薬を使わず、天然酵母のみで発酵、瓶詰めはノンフィルターと有機的。
 パスカル : フィリップ・ローラン氏が自殺をした若い友人のパスカル氏(レストランのシェフ)の為に、最高のヴィンテージにのみ造りあげたグラメノン最上のキュヴェで、生産量は約500ケースほど。1999年12月にフィリップ・ローラン氏自身も事故で急逝したニュースには何か切ないものを感じます。
 95年:このドメーヌの建物には、一枚の錆びた看板に"Vin de Raisin"(レーズンのワイン)と記してあるそうですが、このボトルにも記されていました。その表記の通り、完熟したブドウはレーズンのワインというにふさわしく、レチョートのような干しブドウの風味。完璧な滑らかさを持つワインで、残糖の甘味、濃縮された酒躯は圧巻。決して安いワインではありませんが、価値は十二分。素晴らしい!
 99年:最新リリースの99年はやっぱり開けるのが早かったのでしょう。深々とした赤紫で薬草とラズベリーのフレッシュなアロマ。糖度の高さはありますが、タンニンも溶けておらず、まだ焦点が合っていない状態だと思います。酸もあるので、熟成した姿を期待したいです。
 ル・グラメノン : グラメノンのスタンダード。熟成したかのようなエッジを持つくすんだ赤紫色。酸を中心としたチェリー様の果実。微発泡してるかな?ボトルの状態に?
(ドメーヌ・グラメノン : Domain Gramenon)


Muscat de Beaumes-de-Venise
ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ
ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ 白甘 (ミュスカ)
(NV \2,800位)

 ローヌは赤ワインが中心で、ほとんどが辛口のワインですが、例外的なワインとして、このミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズとラストーがあります。これらはヴァン・ドゥー・ナチュレル(天然甘口ワイン)を産する地区で、ワインの発酵中にブランデーを添加し、発酵を人為的に抑制するため、果汁の糖分がワインの中に残り甘口となります。
 ヴァントゥー山麓に醸造所を持つボーム・ド・ヴニーズ協同組合は、日本ではお馴染みの銘柄。特徴的なボトルが楽しいですね。マスカットの風味と優しい甘味。現地では完熟メロンと合わせるのが定番のようですが、個人的にはこれをクラッシュ・アイスで割って飲んだりします。邪道かもしれませんが、これからの熱い夏、疲れた夜には結構いいですし、食前でもOKです。
(ボーム・ド・ヴニーズ協同組合: Cave des Vignerons de Beaumes-de-Venise)


Marc Vieux Eau de Vie des Cote du Rhone
マール・ヴィユー・オー・ド・ヴィー・デ・コート・デュ・ローヌ
コート・デュ・ローヌ マール
(\4,000位)

 ワインの搾り滓を蒸留した「滓とりブランデー」がマール。ワインを生産している地域では、大体どこでもつくられていますが、ローヌにもあります。シャプティエは主にエルミタージュの搾り残しを主体に蒸留しているという事。アルコール度数は46%です。
 さすがにシャプティエ、マールでも良いものを造りますね。茶褐色のマールは、柔らかな樽香の中に、黒ブドウを思わすまったりした感じも。甘味がマールというより酒精強化っぽく面白い。ローヌワインを飲んだ後は是非こちらのマールをどうぞ。
M. シャプティエ : M. Chapoutier




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