March,2001

オーストラリア特集 Vol.1
Red Wines

Penfolds Grange Hermitage '69 '79 '89 '92
Penfolds Kalimna Bin 28 '96
Lindemans Cabernet Sauvignon St. George Vineyard '81 '94
Lindemans Shiraz/Cabernet Limestone Ridge Vineyard '81
Torbreck Juveniles '00
Clarendon Hills Shiraz '94
Clarendon Hills Kangarilla Vinyard Old Vines Grenache '98
Coldstream Hills Reserve Pinot Noir '97
Brown Brothers Shiraz '98
Cape Mentelle Cabernet Merlot '98
Leeuwin Estate Pinot Noir '97

(特にお気に入りのワインには マークを付けています)


Australia-South Australia


Penfolds Grange (Hermitage)
ペンフォールド・グランジ (ハーミテイジ)

アデレード近郊 赤 (シラーズ主体)
('69,'79,'89,'92 \20,000〜\50,000位)

 オーストラリアのワインの中でも、最も偉大とされるワインがこのグランジ。1989年までは「グランジ・ハーミテイジ」と呼ばれていましたが、90年以降はシンプルに「グランジ」と変更されました。(ハーミテイジとは豪州でシラーズの別名、フランスのAOCであるエルミタージュと混同されるため。)
 1951年にリリースされたワインの評価は「蟻をつぶした香り」という酷評だったと言います。しかしボルドーのグラン・ヴァンにも対抗しうる極めて長熟なこのワインは、当時理解されなかったのかもしれません。
 実際に1992年のワインを飲んで「蟻をつぶした香り」って分からなくもない?土、ヨードといったニュアンスが伝わってきます。樽と熟成によるミルキーでマイルドな香りが心地よい。威圧感のないスムースな飲み口から、コクと深みのある果実と酸の調和。余韻でのタンニンも綺麗にまとまっています。ペンフォールドの各畑から集められた良質のブドウをさらに選別したのでしょうか?グランジ、まさに人の情熱が造り出すワインかもしれません。
ペンフォールド社 : Penfolds Wines

ペンフォールド及びグランジについては
「今月のお題目」で詳しく特集しています。

Penfolds Kalimna Bin 28
ペンフォールド・カリムナ ビン 28

アデレード近郊 赤 (シラーズ)
('96 \2,800位)

 こちらもペンフォールドのワイン。コクのある赤ワインの産地として知られるカリムナ地区からのシラーズをメインに他の地域のシラーズをブレンドしたBin 28。
 黒みがかった赤紫のワインはキャラメルの甘さ、スミレのアロマ。クリアーなアタック、ミディアムボディで洗練されたオージーワイン。余韻はきっちりと渋みがあり、ドライですので、いろんなお食事に合いそうです。
ペンフォールド社 : Penfolds Wines


Lindemans Cabernet Sauvignon St. George Vineyard
リンデマンズ・カベルネ・ソーヴィニオン・セント・ジョージ・ヴィンヤード

クナワラ 赤 (カベルネ・ソーヴィニオン100%)
('81 \?)('94 \4,000位)

Lindemans Shiraz/Cabernet Limestone Ridge Vineyard
リンデマンズ・シラーズ/カベルネ・ライムストーン・リッジ・ヴィンヤード

クナワラ 赤 (シラーズ主体、カベルネ・ソーヴィニオン)
('81 \?)
 1870年創業のオーストラリアで歴史あるワイナリーのリンデマンズ。クナワラ、ハンター・ヴァレー、クレア・ヴァレーなど各地にワイナリーを持ち様々なタイプのワインを生産しています。近年あのジャッキー・チェンが共同出資者となったとか?このセント・ジョージ、ライムストーン・リッジは同社の上級キュヴェ。
 昨年1981を昨年頂き、まだまだしっかりした酒質に驚きました。二次会で供されたのが残念ですが、まったりとした中にミント系の香りがあったライムストーン・リッジが印象的。
 1994年のセント・ジョージは、カシス、サワークリーム、ブラック・ペパーとタイムのような香草の風味がいい。セカンドノーズでアメリカンオークの香ばしさ。グリップは強くないものの、心地よいみずみずしい果実と余韻の酸味が意外にもエレガントなワイン。
リンデマンズ社 : Lindemans Wines


Torbreck Juveniles
トルブレック・ジュヴナイルズ

バロッサ・ヴァレー 白 (グルナッシュ60%,、シラーズ20%、マタロ20%)
('00 \4,000位)

 現在、オーストラリアにて俄然注目を集めているトルブレック。オーナー兼ワインメーカーであるデイヴィット・パウエル氏は全て独学でワインを学び、1994年からワイン造りを開始。ポール・ジャブレとジャン・ルイ・シャーヴのエルミタージュに触発されたという彼は、コート・デュ・ローヌの高級ワインに匹敵する、オーストラリア赤ワインの傑作を生み出す天才として人気を集めています。プレミアムシリーズの「ラン・リグ」は、コート・ロティの如くヴィオニエ種をブレンド、「ディシェンデント」やシラー100%の「ザ・ファクター」、そしてスタンダードクラスとなるこの「ジュヴナイルズ」や「ウッドカッター」等を生産。ちなみに、トルブレックというワイナリーの名前は、オーナーであるデヴィット・パウエル氏がスコットランドできこりをしていた時にパウエル夫人と初めて会った森の名前に由来しているとか。

 パーカー氏もほとんどのワインに90点以上を与え、この「ジュヴナイルズ」の1999ヴィンテージも94点という高評価。赤にしてはめずらしくステンレスタンクで6ヶ月熟成、ノンフィルターで瓶詰め。実際開けたワインは2000年という新しいヴィンテージでも多量の澱(瓶口に付いていました)。赤いベリーの甘さ、薬草のやや不思議な香り。ジューシーでタンニン分は少なく、親しみやすい果実味。マタロというのは、ムールヴェードルの別名ですが、個人的には南部ローヌのラストー辺りのイメージに近いように感じました。シャトー・ヌフ・デュ・パプも意識しているのかな?いずれにせよ、このワイナリーにますます興味を覚えるワインでした。
(トルブレック : Torbreck)


Clarendon Hills Shiraz
クラレンドン・ヒルズ・シラーズ

サウス・オーストラリア 赤 (シラーズ)
('94 \4,000位)
Clarendon Hills Kangarilla Vinyard Old Vines Grenache

クラレンドン・ヒルズ・カンガリラ・ヴィンヤード・オールド・ヴァインズ・グルナッシュ

サウス・オーストラリア 赤 (グルナッシュ)
('98 \4,600位)
 クラレンドン・ヒルズ。1989年に創立されたこのワイナリーは、まだ日本ではあまり知られていませんが、徐々に需要、価格共に上昇しつつあるようです。かのR.パーカー氏はここのシラーズをしてグランジ、そしてヒル・オブ・グレイスに匹敵すると絶賛。
 クラレンドン・ヒルズの最高峰はアストラリス(Astralis)。1994年のデビュー以降、全てのヴィンテージに95点以上のパーカーポイントが付けられ、他の単一畑(Brookman Vineyard、Hickinbotham Vineyardなど)、そしてここに挙げるシラーズさえ、90点以上の高得点を得ています。
 94年シラーズ : 今では入手困難と思われる94年。その噂は本当なのか、まずはレギュラー・キュヴェで確かめたかった一本。現時点では熟成感のある赤みの入った紫色。熟したラズベリーにスパイス。ミディアムボディにトマトの風味が独特な個性を生み、酸とともに余韻へと続くワイン。凝縮感よりもバランスの良さを持つシラー。
 98年グルナッシュ : 思ったよりは明るいルビー色。清涼感があり乾いたような初体験の香り(言葉で言えないのが悲しい)。木苺の風味、スモーキィなニュアンスがあり余韻のタンニンは良いワインだと思うのですが、何か理解しにくいワイン。このワイン、96年ヴィンテージはパーカーポイント95点なのですが・・・
(クラレンドン・ヒルズ・ヴィンヤード : Clarendon Hills Vineyard)

Australia-Victoria


Coldstream Hills Reserve Pinot Noir
コールドストリーム・ヒルズ・リザーヴ・ピノ・ノワール

ヤラ・ヴァレー 赤 (ピノ・ノワール)
('97 \4,950)

 オーストラリアで最も高名なワイン研究家であるジェームス・ハリディが、1985年に設立したブティック・ワイナリー。もともとは弁護士で、1970年にブドウ畑を買い、週末だけワイン造りをしていたのが始り。現在では同国を代表するといわれるピノ・ノワールとシャルドネ。
 これは予想以上の美味しさにビックリ。フレンチオークだと思われるバニラ香とカラメル。目の詰まった質感のワインは、甘さがありつつもクールな表情。ミネラルの風味があり、ようやく固さがほぐれてきた時期なのでしょう。同席された方も絶賛していました。
 1999年夏、ヤラ・ヴァレーのピノ・ノワールに興味を持った時、ジェームス・ハリディの名に惹かれ、ふと手にとったこのワイン。後、堀賢一氏のコラムにも登場し、ずっと開けられなかったワインをようやく抜栓。待った甲斐がありました・・・もう残ってないかなあ?
コールドストリーム・ヒルズ : Coldstream Hills

Brown Brothers Shiraz
ブラウン・ブラザーズ・シラーズ

ミラワ 赤 (シラーズ)
('98 \2,000)

 1889年ヴィクトリア州ミラワに設立されたワイナリー。オーストラリアの中で最も多くのブドウ品種を栽培し(ネッビオーロ、ドルチェット、ヴェルデリョなんてのも)、キンダーガーデンと呼ばれる最大の私設試醸ワイナリーを設立するなど、意欲的な活動をしています。現地ではとてもポピュラーな銘柄という事。
 当然シラーズはブルーベリージャム、ブラックペパー、ポート風の心地よさのある甘味を含む香り。酸中心のアタックからみずみずしいミディアムボディの辛口。食事と共に、香りを楽しみたいワインです。
ブラウン・ブラザーズ : Brown Brothers

Australia-Western Australia


Cape Mentelle Cabernet Merlot
ケープ・マンテル・カベルネ・メルロー

マーガレット・リヴァー 赤 (カベルネ・ソーヴィニオン65%、メルロー35%)
('98 \3,500)

 ニュージーランドのクラウディー・ベイとともに、1970年デヴィット・ホーネンが西オーストラリア、マーガレット・リヴァーに創立したケープ・マンテル。現在はこのワイナリーを高く評価したフランスのヴーヴ・クリコが親会社となっています。
 98年にして柔らかく丸いアタック。バニラ、小豆の風味と焼けた石。樽の風味がよく溶け合い、ふくらみのある果実と微細なタンニンによる余韻。素直に美味しいといえるカベルネとメルローのヴァラエタル・ブレンドワインです。
(ケープ・マンテル : Cape Mentelle)

Leeuwin Estate Pinot Noir
ルーウィン・エステート・ピノ・ノワール

マーガレット・リヴァー 赤 (ピノ・ノワール)
('97 \3,500)

 オーストラリアのワインの中でも、大きな成功と国際的評価を得ているルーウィン・エステート。特にアートシリーズ・シャルドネは素晴らしく、毎年変わるアートラベルも洒落ています。このワイナリーは、もともとロバート・モンダヴィとのジョイント・ベンチャーを目指していたらしいのですが、結局1974年に独自で創立、ホーガン家が経営を続けています。よって、モンダヴィ氏の助言がワイン造りの根本に活かされています。非常に印象の良いルーウィンですが、さてピノ・ノワールは?
 タール、アスファルトのイメージが先行し、甘酸っぱさのあるアプリコット、古い樽を思わせる木のニュアンス。味わい中盤からの渋みが余韻に長く続くものの収斂味を残す部分は残念。少し厳しいですが、ルーウィンとしては不満が残る味わい。
ルーウィン・エステート : Leeuwin Estate




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