前回の北部ローヌに続き、今回は南部ローヌについて。北部の10倍以上にもなる栽培面積、生産量を誇る南部ローヌにおけるワインの産地と特徴を紹介します。 以下文中にて「コート・デュ・ローヌ」を「CdR」と、「シャトーヌフ・デュ・パプ」を「CNdP」と略して記載している部分があります。また AOC、VDQS、Vin de Pay というのは、フランスの原産地呼称法における格付けのこと。詳しくはこちらをご覧下さい。 |
北部における赤ワインはシラー種による単醸ですが、南部では地中海沿岸地方で栽培されているほとんどのブドウ品種が植えられ、グルナッシュ種(注1)を中心に多くの品種をブレンドしてワインが造られます。シラー種は最も小粒で皮が厚いのでタンニンも強く出やすいのに対し、グルナッシュ種はやや大粒、糖分が高く、アルコール分と色は濃いめであるものの、固形物の比率が少ないためタンニンはそんなに強く感じません。 有名なAOCとしては、タヴェル、シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダス等。ブドウ栽培地がローヌ河右岸に集中する北部とは逆に、南部では左岸に産地が広がっているのが特徴的。 以下、ローヌ北部と南部の違い、そして南部における主要なブドウ品種をまとめておきます。これらの違いをみても、北部と南部は個性の違うワインであると言えそうです。 |
ローヌ北部 | ローヌ南部 | |
気候 | 大陸性気候 | 地中海性気候 |
栽培地の起伏 | 険しい傾斜地 | 平坦な土地、ゆるい丘陵 |
土壌 | 花崗岩質、片岩質土壌 | 石灰質砂岩他 |
赤ワイン用ブドウ品種 | シラー | グルナッシュ他様々 |
ブレンド | 単醸(1ないし2品種) | 混醸(多品種) |
栽培地の位置 | 主にローヌ河右岸 | 主にローヌ河左岸 |
グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル、サンソー、カリニャン等 | |
ユニ・ブラン、ピクプール、ブールブーラン、ルーサンヌ、マルサンヌ、クレレット等 |
(注1
: この品種は、スペインではガルナッチャと呼ばれ、世界第二位の栽培面積を持つブドウ
[第一位はスペイン中央部で多く見られるアイレン:Airen] で、その総栽培面積は10万ha以上にのぼります。特筆すべきは、その糖分で、南部ローヌのアルコールの高いふくよかなワインは、この品種の糖度による部分が大きい。) (参考 : 地図上の「Cote du Vivarais : コート・デュ・ヴィヴァレ」はAOCではなく、新たにVDQSとなった総面積850haの地区。ただ、この地区内でもVDQSではなく「Vin de Pay des Coteaux de l'Ardeche」として出されるガメイ、シャルドネなどをよく見かけます。また、コート・デュ・リュベロンの東側には「Coteaux de Pierrevert : コトー・ド・ピエールヴェール」という総面積300haのVDQSがありますが、多くはフランス国内で消費されています。) |
各AOCで気候や土壌は多様に変化するため、赤白ロゼの認可、使用ブドウ品種の割合も違う南部のワイン。それぞれのAOCの特徴をまとめておきます。 |
Cotes du Rhone CdR (地方名ワイン) |
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Cotes du Rhone-Village CdR ヴィラージュ(村名なし) |
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Cotes du Rhone-Village CdR ヴィラージュ(村名つき) |
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Chateauneuf-du-Pape シャトーヌフ・デュ・パプ |
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Gigondas ジゴンダス |
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Vacqueyras ヴァケラス |
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Lirac リラック |
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Tavel タヴェル |
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Coteaux du Tricastin コトー・デュ・トリカスタン |
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Cotes du Ventoux コート・デュ・ヴァントゥー |
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Cotes du Luberon コート・デュ・リュベロン |
参考 : この他のアペラシオンとして、ヴァン・ドゥー・ナチュレル(VDN:天然甘口ワイン)を産する「ラストー : Rasteau」(57ha)と「ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ : Muscat de Beaumes-de-Venise」(433ha)があります。VDNはワインの発酵中にブランデーを添加し、発酵を人為的に抑制する「ミュタージュ」という方法が用いられ、果汁の糖分がワインの中に残り甘口ワインとなるもの。「ミュタージュ」とは「黙らせる」の意。現地では完熟した甘口メロンと共に供されます。 |
■ Coteaux du Tricastin コトー・デュ・トリカスタン |
南部ローヌの中では最も北に位置するコトー・デュ・トリカスタン。従来VDQSだったものが、1974年にACとして昇格。この地区は、フィロキセラ禍当時、いったん畑が壊滅状態となり、ローヌのACを特定する際、その範囲に入れてもらえなかった。グルナッシュとサンソーからなる赤が中心の産地。 |
フランスでの原産地呼称法制定当時、この地域でのアペラシオンというと、アヴィニョン近郊に広がるACコート・デュ・ローヌとシャトーヌフ・デュ・パプ、タヴェルくらいしかありませんでした。上記の各アペラシオンの説明通り、優れた産地(村)のAC昇格により、現在の地図が出来上がっているわけですが、総面積45000haという広大な土地は、更なる可能性を秘めているように思えます。 豊かで大らか、親しみやすい南部ローヌのワイン達。今後、誠意ある生産者により、それぞれの土地の魅力が表現された素晴らしいキュヴェが登場する事が期待されます。 |
ブドウは、ギリシャ人、ローマ人たちによりローヌ河流域へフランス国内で最初にもたらされました。そうした意味でも、ローヌ地方は最も古くからのブドウ栽培の歴史を持ちます。そして、シャトーヌフ・デュ・パプは、フランスAOC法の生誕の場所とされています。次回は、そんなローヌの歴史、シャトーヌフ・デュ・パプを中心にレポートしたいと思います。 |
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