平和な時代への深い思い

「平成が戦争のない時代として終ろうとしていることに、心から安堵しています」。天皇陛下は平成最後の誕生日にあたり、記者会見で平和への深い思いを述べられた。

 象徴天皇制を定めた現憲法下で初めて即位した陛下の30年間は、国民の象徴とはどうあるべきものかを模索した道のりだった。 その原点は戦争の記憶にある。3歳の年に日中戦争が始まり、戦火は広がって11歳の時に敗戦を迎える。

 戦後、日本は国際社会へ復帰し、経済復興を遂げる。陛下は今回、その平和と繁栄が「多くの犠牲と国民のたゆみない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切であると思ってきました」と語った。

 平和への強い願いを持ち続け、それを長く国民と共有することを象徴としての大きな役割と認識していたのだろう。国内外で慰霊の旅を繰り返してきた行動にも表れている。

 中でも、日本で唯一の地上戦を経験した沖縄に寄せる思いは深い。

皇太子時代を含め、訪問は11回に及ぶ。「沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくことの私どもの思いは、これからもかわることはありません」と述べ、退位後も沖縄に寄り添うお気持ちを示した。相次いで大災害にも触れた。多くの人命が失われたことに「言葉に尽くせぬ悲しみを覚えます」と述べる一方、ボランティアによる助け合いの気持ちが育まれ、防災意識もたかまったことに「勇気付けられます」と語った。

困難な時代であったが被災地で膝をついて被災者を慰め、励ます姿は国民に感銘を与え、象徴天皇像として受け入れられた。

 陛下は今回の記者会見で「象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民」に対し、「衷心より感謝」という表現で率直荷感謝の気持ちを表した。

 そのうえで皇后さまに対し「心から労いたいと思います」と述べた。陛下は今「天皇としての旅を終えようとしている」とし、深い信頼に基づき「この伴侶と共に、これまでの旅を続けてきました」と語った。象徴天皇像を二人三脚で築いてきた絆を感じずにはいられない。

                               (毎日新聞より)